第60話・美人できれいな妹
ケチャップで猫の顔を描いた半熟オムライスは好評だった。
でも、コンソメ味の野菜スープは普通という感じ。
オムライスは味が濃いから、スープは気持ち薄めに味付けしたからかもしれない。
出来た料理を運んで行ったら永遠に二度見されたけど。
そんなに意外だったかな?
昼食を終えた後は永遠が「帰ります」と言い出したので、ミウにお留守番を頼んで、彼女を家まで送った。
途中で永遠とも話したが、送るついでにマンションまで行き、永遠の父親である大介さんと軽く話すことになった。
第一印象としては年相応な普通の男性。
ただ、娘である永遠をちょっと持て余しているというか、腫物を触るような感じで、どう接すればいいのかわからないと言う様子だった。
前世にいた、初めて女性の部下を持った男性上司にも見える。
それから前向きに考えていた認知と遺産の話をしたら、大介さんの態度も少し柔らかくなった気がしたけど。
養育費に関しては、収入には余裕があるそうなので「要らない」と言われたが、どちらかと言えば、未成年の俺からはお金を取るのは気が引けると言う雰囲気だった。
男としてのプライドもあるだろう。
だから黙って引き下がった。
その代わりに、定期的に永遠をうちにお泊りさせるという形で話はまとまり、あとは「弁護士さんとの調整が必要」ということで話し合いが終わったのだ。
自宅に戻ってからそのことをミウに伝える。
「ふーん。おにーちゃんは美人できれーないもーとの方がいいんだ」
抱っこしていたミウが不貞腐れたようにそんなことを言ってきた。
言葉にもちょっと棘があるように感じる。
「別にそういうわけじゃないけど、俺にとってはミウと同じ妹だからね。さすがにミウとのような関係までは望まないけど」
「でも、永遠お姉ちゃんのおっぱいや太ももを見て鼻の下を伸ばしてたじゃん?」
「それは、まあ、その。俺も男だし、無意識にそういうところに目が行ってしまうのは仕方ないじゃん?」
スタイルがいいというのはミウも認めてたというか、普通に「モデルさんみたい」って言ってたんだけどね。
ここら辺は男と女で感覚がちょっと違うのかもしれない。
気を付けないと。
「ふーん。じゃあ、ミウと永遠お姉ちゃんだったらどっちがいいの?」
「それならミウがいいかな? だって俺が一番最初に好きになったのがミウだからね? スタイルがいいというのはわかるけど、さすがに永遠の人柄まではまだちょっとわからないからね」
「一番……そっか。そっかぁ……」
素直に自分の気持ちを伝えると、ミウがまんざらでもない笑みを浮かべていた。
「今日はする? それともしない? するんだったらいっぱい甘やかすよ? 今日はミウにご奉仕したい気分だからね?」
「するっ。だったらするっ――」
ミウが元気よく返してきたのでそのままゆっくりと押し倒した。
避妊魔法があるし、明日は日曜日だからへーきへーき。
――
「昨日の今日で申し訳ありません。兄さん。ミウ」
「いやいいって……」
「う、うん。事情が事情だから仕方ないよ永遠お姉ちゃん」
日曜日の朝。
大きなボストンバッグを肩から下げて永遠が訪ねてきた。
携帯の画面をタップして、彼女の父親に「永遠を無事に預かりました」というメールを送信する。
俺が帰った直後なのだが、どうも父親との話し合いでギクシャクしてしまったらしい。
父親としては気を利かせて俺たちとの生活を勧めたらしいのだが、彼女としては家から出ていけと感じてしまったそうである。
帰宅中に永遠から「お泊りのことで相談したいことがあります」とメールが入ったので、彼女から事情を聞いて。
急きょ、永遠の父親との間に入り、丸く収めた結果が今。
とりあえず「頭を冷やす」と言うことで、俺が数日永遠を預かることになった。
俺もかわいいというか、美人できれいな妹の面倒を見れて嫌ではない。
念のため、俺たちの未成年後見人を務める女性弁護士の田中咲さんにも事情を説明して確認したけど、相手の親からの許可が出ているのなら特に問題ないらしい。
「それで本当にうちから学校に通えるの?」
リビングで改めて話す。
「はい。魔女学園行きの学園バスが近くを通るらしいのでそれに乗せてもらいます。学校には連絡済みですので問題ありません」
「そうか。なら送り迎えとかは……」
「はい。それも要りません」
淡々とした口調で話す永遠。
まあ、学園バスがあるのなら問題はないかな?
「そっか。わかった。でも必要な時は言ってくれよ。ミウと時間が被らなければちゃんと送り迎えするから」
「……ミウは送り迎えしてもらっているのですか?」
「ああ。俺のかわいい妹に何かあってからでは遅いからな。安全のためにも送り迎えはしている。だから永遠もどうかなって?」
「かわいい妹……いえ、私は不要です。これでも魔女見習いなので《《ある程度の》》自衛はできますし」
「そ、そっか。わかった。でも油断はするなよ? いくら魔女見習いとは言え、女の子だし。永遠の兄としてはそこが心配だ……」
「わかってますよ。兄さんに言われなくても……」
それから改めて自己紹介となった。
ミウと同じように中二病と疑われそうだったので、実は異世界転生者であるということは伏せたけど。
永遠は「魔女学園」という「日本魔女育成学園」の「中等部」に通っているそうなのだ。
携帯で軽く調べてみたら、日本でもエリートしか通えないところらしい。
しかも、そこの首席。
これはあとで魔法を教えてもらうしかないよね?
また、懸念していたミウとの関係なのだが、女同士で通じることがあったのか、いつの間にかミウと仲良くなっている気がした。
これなら永遠を泊めても大丈夫だろう。
うん、ちょっと神経使ってたのは内緒。
「じゃあ、今日からよろしくね永遠お姉ちゃん?」
「はい。よろしくお願いします。ミウ、兄さん」
こうして俺とミウだけの生活に、永遠を加えた新しい共同生活が幕を開けたのだった。




