第49話・ポニテ先輩
「おい、そこのお前。見慣れない顔だが、どこの所属だ?」
クラス委員長に近づこうと思ったら、青い髪をポニーテールにした先輩から声をかけられた。
黒のブーツに青い袴姿であるが上は白の道着という姿の人。
柄にまでは手を伸ばしていないものの、左手は鞘を握っており、いつでも刀を抜けるぞと言わんばかりだ。
「所属ですか?」
「そうだ」
「それは探索者高校ということでいいのですか?」
彼女の言う「所属」の意味がわからないので聞き返す。
「それはその服を見ればわかる。お前、本当に探索者高校の生徒か?」
「は、はい。そうですけど?」
正直に答えたが、ポニテの先輩の目つきは鋭いままである。
「そうか。では、何組だ?」
「は、はい。E組です」
素直に答える。
「ん? E組だと? ということはお前1年か?」
「は、はい。そうですけど何か?」
「いや。なんでE組の1年がこんなところに?」
「えっと、ダンジョンを進んでいたらいつの間にかクラスメイトたちの姿が見えなくなったので、みんな先に進んだのかな?と思って進んでいたら、先輩たちを見つけたといいますか、最初はクラスメイトの集団だと思って合流したんですけど、実はそれが先輩たちだったというわけで……」
「そうか。本当に?」
「は、はい」
鋭い目つきのまま先輩が聞き返してきたのでしっかりと言葉を返す。
嘘ではない。
クラスメイトたちからちょっと離れた場所でゴブリンやスライムと戦っていたら、いつの間にかその姿が見えなくなってたんだよね。
だから、「みんな先に進んだのかな?」と思って前へと進んだ。
そしたら、通路で休憩している集団を見つけたので、それとなく混ざった。
当時は合流できてホッとしてたということもあるけど、合流した際には特に何も言われなかったし、見知った顔がいなくても特に気にならなかった。
そして、彼らと一緒にダンジョンを進んでいたとき。
ふと制服姿の先輩がしているネクタイやリボンの色が青色だということに気づいたのだ。
それで2年生と気づいたものの、抜け出せるタイミングがなく、今現在。
俺が今着ている戦闘服は学年で色分けとかされてないし、古着として出回っていることもあるから、ぱっと見だと、探索者高校の生徒なのかわからないんだよね。
「誰か、【看破】が使えるポーターを呼んできてくれ。こいつは私が見張っておく」
「あ、はい」
俺から目をそらさずにポニテの先輩が近くにいた女子生徒へと声をかけた。
何かそこまで警戒させるようなことをしたかな?
――
「はい。この人が言っているのは事実ですよ?」
それからポーターさんが検証のために呼ばれて話を聞いてもらったが事実と確認された。
ちなみに、このポーターさんは先ほどまで俺と話していたピンクの髪の子。
「そうか。疑って悪かったな。あまりにも落ち着いているから本当に生徒なのかわからなかったんだ」
「いえ……」
事実確認が取れたところでポニテ先輩がようやく鞘から左手を離し、彼女からの圧もスッと消えた。
おかげでちょっと目立ってしまい、居心地が悪い。
「しかし、【初期装備】でよくレッドキャップを3体も殺せたな。何か武術でも学んでいたのか?」
ポニテ先輩がどこか感心するように剣へと視線を移す。
ポニテ先輩が言う「初期装備」というのは学校側が無料で貸し出してくれる装備のことだ。
入学してまだ間もなく、装備に割けるお金がないという人たちがこの装備をすることから、「初期装備」と呼ばれている。
「いえ、特には。まあ、今回はバフとデバフもかかっていましたし、先輩のクラス委員長を最優先で狙っていたみたいなので。自分のことなんかは眼中にないと言う感じでしたし……」
ちなみに、「先輩のクラス委員長」というのは旗を持った先輩のことだ。
「なるほど。それでか……」
「全員注目っ‼」
クラス委員長がパンパンと手を叩きながら声をかけてきた。
「休憩予定の部屋が罠部屋で、俺たちのクラスに1年が混ざっていたという予想外の出来事はあったが、予定通りこのまま5階層のフロアボスを倒して帰還する。話は以上だ。出発するぞ」
「「「了解」」」
クラス委員長の判断で俺もボス討伐に同行することになった。
下手に単独で1階に戻らせるよりはこのままみんなで進んだ方が安全らしい。
また、フロアボスがいる場所には【ポータル】と呼ばれる転移門が設置されており、それをくぐればダンジョンの1階にある出口に転移するように帰還できるという理由もある。
確かにそっちの方が安全だし、何よりも早い。
「よし。お前はこっちだ。私が直々に指導してやる」
「あ、はい」
ポニテ先輩の一声で前衛部隊に加わることになった。
一瞬、周囲の人たちと目が合うが「またか……」と言わんばかりに呆れた表情を浮かべていた。
ポニテ先輩、前にも何かやったの?
「大丈夫だ。危なくなったら勝手に下がっていいぞ。ボスは私が対処するからお前は雑魚を相手しろ」
「は、はい」
ポニテ先輩から右肩をポンポンと叩かれるものの、なんかものすごく嫌な予感がする。




