第48話・マジックバッグが欲しい
「それでは査定しますのでぇ、魔物の死骸やドロップアイテムはすべて私たちのところに持ってきてくださいねぇ。動かせないやつはそのままでいいですからぁ」
「「「はーい」」」
清掃や引っ越しのアルバイトのように、何人かで手分けして魔物やドロップアイテムなどをポーターたちのところに持って行く。
何人かはこっそりドロップアイテムを自分のポケットにしまっているのが見えたけど。
すぐに見つかって「くすねるのは駄目ですぅ‼」と大きな声で注意されてた。
連携が取れててすごいなとは思ったが、ドロップアイテムをこっそりくすねるという人はいるようだ。
これが探索者ということだろう。
俺も気を付けねば。
「あ、あのっ。お怪我はありませんか? 血まみれなんですけど……」
「え? あ、はい大丈夫です。返り血です」
ウィッチハットをかぶった先輩に声をかけられた。
戦闘中に氷魔法を使った子とは別のツインテールの子。
普通にかわいい。
「じゃ、じゃあ。【クリーン】をかけますね。クリーン――」
先輩が魔法をかけると、魔力が体にまとわりついて、すぐに魔力が足元へと流れていく。
「クリーン」というのは「汚れなどの取り除いて清潔な状態にする」という魔法だ。
足元に水たまりができたので、お漏らしでもしてしまったように見えるが、それが俺の体や装備についた汚れ。
より上位の【浄化魔法】なら、汚れやゴミなどを消滅させるので、取り除いた汚れなどが足元にたまるということはないと聞くが。
ベタベタだった頭や体がさっぱりする。
「ありがとうございます」
「いえ。では――」
軽く頭を下げると、ツインテールの先輩が別な先輩たちのところに歩いて行き、クリーンをかけていた。
なるほど、そういう役目の人もいるんだね。
いわゆる支援職ってやつ。
でも、お風呂に入った時よりもさっぱりした感じがする。
これはいいね。
ぜひとも覚えたい。
――
ポーターによる査定が終わった。
ただ、リュックの容量の問題ですべてのものを持ち帰ることはできず、価値の高い魔物の死骸やドロップアイテムだけを持ち帰ることになった。
少しもったいない気もするが、価値の低いものはその場に放置。
あとはダンジョンが吸収したり、廃品回収を専門とする人たちが勝手に回収していくそうなので問題ないそうだ。
魔物の残骸やドロップアイテムがリュックに吸い込まれるように消えていく。
「なにか?」
それを眺めていたら、その所有者であるポーターさんから声をかけられた。
ピンク色のショートヘアの子。
うちのミウとはちょっと違うけど、あどけない顔つきで声がかわいい子。
ちなみに、戦闘終了の合図をしたり、アイテムをくすねようとした人に注意をした人でもある。
「いや。いつも思うんですがどういう仕組みで回収しているのか不思議だなぁと……」
「まあ、【マジックアイテム】ですからねぇ……」
彼女の言う「マジックアイテム」というのは「魔法が付与されたもしくは魔力が含まれた道具の総称」だ。
これを直訳すると「魔法道具」または「魔法具」となる。
その性質上、「マジックアイテム」は必ず魔力を帯びることから、目視で通常の道具との区別ができるそうだ。
魔法に縁のない世界の出身である俺でも簡単に区別できたし。
また、魔力が微弱で目視ではわかりにくいというものであっても、触れれば「魔力を帯びている」とわかるらしい。
問題があるとすれば、通常のカメラには魔法で起こした現象は写るが魔力は写らないということ。
その事情から、動画や写真になるとその判断が出来ず、マジックアイテムを通販などで買う際は注意が必要なのだそうだ。
偽物をつかまされることがあるらしい。
(いいなぁ、俺も欲しいなぁ……)
どうやら、2年生のポーターは所有しているリュックのすべてが魔法鞄であるそうで、見た目以上にものが入るみたい。
学校の授業で錬金術科の先生から、マジックバッグの使い方や手入れの仕方などは学んでいる。
だから、手に入ったらすぐにでも使えると思う。
ファンタジー世界の定番と言ってもいいもの。
一口にマジックバッグと言ってもピンからキリまであるが。
このポーターさんと一緒に欲しいなぁ。
声がかわいいからベッドの上で盛り上がりそう。
今の俺にはミウがいるから妄想だけにとどめておくけど。
「そ、そんな目で見ても駄目ですからね。これはあげませんよ。それにこのマジックバッグには特殊な魔法がかかっているので私以外は使えません。ですので盗もうとしても無駄ですからね?」
「へー。そうなんですか?」
そんな魔法があるんだ。
初めて聞いた。
あとで調べてみよう。
「はい。それと報酬やドロップアイテムはあとでちゃんと平等に分配するので、倒した敵の数とかを委員長に報告するんですよ。じゃないと報酬を受け取れなくなりますからね。あ、ちゃんと鑑定魔法で見ているので嘘をついたら駄目ですからね?」
「え? 鑑定の魔法でも嘘がわかるのですか? 看破という魔法なら聞いたことがありますが……」
「はい。ちょっとしたコツが要りますが鑑定魔法でも嘘が見抜けるのですよ? さすがに看破に比べると劣りますけど。もちろん、私もそれは使えるのでちゃんとわかりますからね?」
「あ、はい。わかりました。それで委員長というのはどこに……」
「あそこにいますよ」
ポーターさんが指を指した先には金髪で小柄な先輩がいた。
旗を肩に預け、集まった仲間から話を聞いては手に持ったクリップボードに何か書き込んでいる。
彼がこのクラスの委員長だったのか。
小柄で声を含めて中性的であるが、肩幅の広さからたぶん男。
隣には、先ほど俺にクリーンの魔法をかけてくれたツインテールの先輩もいた。
目のあたりに魔力を感じるから、たぶん彼女が鑑定魔法を使っているのだろう。
報告のため、俺も彼らのところへと歩き出す。




