第46話・ダンジョンデビューの結果
「その結果が微妙なの? お兄ちゃん?」
「ああ。ダンジョンデビューしたのはいいんだけどね……」
ミウをお姫様抱っこするように膝に乗せながら彼女と話す。
お風呂上りというのもあり、シャンプーのいい匂いがする。
好き。
「現実はラノベのように甘くなかったんだね?」
「まあ、それが現実だからね」
前世で取得していた資格類は引継ぎにしてもらったけど、チート能力の類はないので無双なんて夢のまた夢だし。
今はミウのことが最優先なので、魔法もダンジョンもやれる範囲でやるという扱いになっているんだよね。
「それに俺はミウと一緒に過ごす時間の方が好きだからね。ダンジョンのことばかり考えるというのはちょっとね?」
「そっか。ミウもこの時間は嫌いじゃないよ? でも、ミウとしてはお兄ちゃんが乱暴にならないか心配だよ?」
「乱暴? ああ、PTSDか……」
探索者の中でも発症してしまう人が多いらしい。
軍人の場合は公務員であることから公的な支援を受けられるものの、民間人扱いの探索者が十分な支援を受けられるはずがない。
前世のアメリカほどではないが、日本でもそれが社会問題と化しているようで、前世の日本と比べると少し治安が悪い。
しかし、それでも前世と同じように「世界でもトップクラスの治安を持つ」と言われているため、海外の場合はもっと治安が悪いと言えるだろう。
「うん。ネットでよく見るから。友達の友達のお兄ちゃんがそれで引きこもりになっちゃったってのも聞いたし」
「わかった。気を付けるとしよう。というか、それって回復魔法で治らないのか?」
「ミウが調べた限りだけど、治療はできるみたいだよ? でも、体感だからわかりにくいのと、専門のお医者さんも足りてないんだって」
「へー。そうなのか……」
治るのなら俺も回復魔法の取得は必須になるだろうな。
勉強は続けているけど、正直に言って手ごたえがない。
「それで話は変わるけど、今日は一緒に寝るか?」
「うーん。今日はここまででいいかな?」
「そっか」
俺の膝の上に乗るだけで気が済んでしまったようだ。
残念。
「それよりももう少しお話したいけど駄目? お兄ちゃん?」
上目遣いで聞いてくるミウ。
かわいい。
「俺は構わないけど、話す内容が尽きちゃったから、今度はミウのお話を聞きたいかな?」
「そう?」
「うん。ミウのお話が聞きたいなー」
そう言ってミウの頭を軽く撫でる。
「えへへ。じゃあね――」
それから眠くなるまでミウの話をうんうんと聞いていると。
ミウがうとうとし始めたのでお姫様抱っこでミウの部屋のベッドまで運ぶ。
このまま一緒に寝ても許されそうだけど、今日はそういう気分ではないそうなのだ。
頭におやすみのキスをして素直に自分の部屋に戻った。
(さてと……)
魔法の勉強を再開する。
途中でミウが膝に乗ってきたので中断していた。
今は自宅ということもあり、おいそれと魔法を使うことはできないので座学の勉強のみだけど。
ある程度の修行をしていれば、自宅で使っても問題ないそうだ。
ただ、俺の場合は実技経験が特に不足している。
だから、予期せぬ魔法事故を起こしてしまいそうでちょっと怖いんだよね。
火の魔法を使ったら、思いのほか火力が強くて天井やカーテンに燃え移って、そのまま家が全焼したなんていう魔法事故もよく聞くし。
ここは慎重に勉強しているだけでいいだろう。
家庭教師を雇うとなるとそれなりにかかるし、魔法を教える魔法教室に通うというのも同じだ。
魔法の練習を行う民間の施設にも行ったことがあるが、残念ながらそこは魔法が使えることが前提だったため、魔法が使えない俺にはあんまり意味がなかった。
(うーん。やっぱり専門家から教育を受けた方がいいかなぁ……)
基礎的なものはミウが習っているので彼女に聞くこともある。
でも、「魔法事故が怖いから自宅ではちょっと使えないかな?」と普段は魔法を使わないのだ。
ほかにも、インフラが整っているので、魔法を使わなくても生活ができるというのもある。
これが人里離れた山の中にあったり、発展途上国だったりすると、火を起こしたり、飲料水を確保するのに魔法を使うことがあるそうだけど。
(どこかに魔法を教えてくれる人いないかなー)




