第42話・告白
「もー、お兄ちゃん。緊張して味がわかんなかったよ?」
「そう?」
ミウの部屋で彼女を抱っこしながら思う存分甘やかす。
家に戻ってからも料理の話が続いているが、タクシーの中とは違って話題を選ぶ必要がないので清々しい。
「でも。最後のチーズケーキも甘さ控えめでおいしかったよ?」
「なら良かった。今日はミウの誕生日だからケーキまで出るコースにしたけどどうだった?」
「うん、良かったよ。お兄ちゃんが頼んだ子牛のフィレ?も柔らかくておいしかったし」
本来なら駄目だと思うのだが、一口ずつだけどこっそり白身魚のムニエルと子牛のフィレを交換して食べた。
ミウが食べた白身魚のムニエルはバターとハーブが利いてておいしかったし、衣がサクサクしてた。
対する俺の子牛のフィレは豚の角煮のように柔らかく、塩コショウが利いてておいしかった。
もちろん、「高級なお店とかではマナー違反だから気を付けないといけないんだけどね?」と注意したけど、皿に残ったソースをちぎったパンで拭って食べたりもした。
「結局、違ってたのはメインディッシュの肉か魚かと食後の紅茶かコーヒーぐらいか?」
「うん。そうだったね」
それ以外はまったく同じだった。
「でも、お兄ちゃん。よかったの? 今日で結構お金使っちゃったんじゃない?」
「かわいいミウのためだからこれくらいへーきへーき。さすがに毎日は無理だけど、偶にする贅沢ならいいじゃん?」
「そ、それはそうだけど。ミウ、お兄ちゃんにここまでしてもらっても返せるものないよ?」
ミウがそう言いながら体重を預けてくる。
「そうかな? これだけでも十分に返してもらっていると思うんだけど……」
ラノベやゲームに出てくるようなブラコンな妹のように甘えられるだけでも十分――いや十二分に元が取れていると思う。
「けど?」
「“どうしても”というのならミウが欲しいかな?」
一歩踏み込んでみる。
良くも悪くも異世界転生でちょっと吹っ切れた。
今世では俺を抑圧するものもない。
両親は死んだ。
口うるさい祖父母も親戚もいない。
きょうだいはかわいいミウがいるだけ。
そして、この世界は妹と結婚できる世界。
妹と結婚すれば、イザナミ様への信仰心も確保できる。
「お兄ちゃん? それはどういう意味、かな?」
振り返ったミウと目が合った。
ちょっと顔が赤い。
それがどういう意味なのか分かって言葉を返してきたのだろう。
「そのね。エッチと言う意味で……」
「お、お兄ちゃん。それはさすがに駄目だよぉ。だってミウとお兄ちゃんは実の兄妹なんだよ?」
「それでも。もう一歩踏み込んでもいいかな?と思って。それにイザナミ様もハーレムハーレムうるさいし」
「イザナミ様?」
「おっと何でもない」
口が滑った。
この状況を見て、結婚相手をミウだけにしてくれるなんてことはないよね?
普通のラノベとかエロゲだったら妹を選んでお終いというところなのに。
ここから先にハーレムが待っているのだ。
むしろ、この状況でどうやってそれをやれというのか聞きたい。
「……お兄ちゃんはミウのこと好きなの?」
「うん。実の妹なんだけどね。ほかの男に取られるぐらいなら取られないように先に手を出しちゃおうと思って。ごめんね、独占欲の強いお兄ちゃんで」
ミウの頭を髪をとかすように優しくゆっくり撫でる。
今までは理性で押さえているものの、正直、このままだと精神的に病みそうで怖い。
もしもこれでミウに好きな人とかがいるんだったら身を引けると思うけど。
「お、お兄ちゃん? それは独占欲と呼ばない気がするよ?」
「そう?」
「でも、そっか。お兄ちゃんはミウのことが好きなんだね? じゃあ、お兄ちゃんはミウのことが好きだから今日のようなことをしてるの?」
「もちろん。興味が無かったら放置が基本だよ?」
前世の両親や弟たちに関してはまさにそれだった。
仮に弟が妹だったとしても興味は持てないだろう。
それがもしもミウだったらどうなるかわからないけど、前世の環境では、こうなることはなかったはずだ。
両親も祖父母もいたし。
正直、今の俺の姿を前世の弟たちが見たらきっと腰を抜かすというか、ドン引きされそうなことをしている自覚はある。
「そうなんだ」
「前にも聞いたけど、もしかしてミウに好きな人とかいる? もしもいるのならミウのことは諦めて出ていくけど?」
「お兄ちゃん、それはずるくない? ミウ、お兄ちゃんがいないと生活できないのに……」
「でも、それは彼氏の役目だからな。俺の役目ではない。それと少し体の位置を変えたいんだけどいい? ちょっと大切な話」
「わ、わかった」
そして、向き合ってミウと視線を合わせた。
どことなく彼女の頬が赤い。
たぶん悟ってる。
「じゃあ、改めて言うけど。俺はミウのことが好きだ。もしも、ミウに好きな人ができて、この関係が終わってしまったとしても、今この瞬間はミウのことを愛していることに嘘偽りはない。もちろん、妹としてではなく1人の女の子として――」
ミウに視線を合わせたまま、ストレートに自分の気持ちを吐き出した。
「お兄ちゃん。うん、わかった。わかったよ。ミウもお兄ちゃんことが好きだからね? だから、ミウも決めました。お兄ちゃんにあげますっ――」
ミウがそう言いながら抱きついてきたので、そのまま彼女をそっと押し倒した。




