第40話・ちょっと高めのレストラン
レストランに到着した。
タクシーから先に降りて、ドアに手を添えておく。
これが高級レストランの場合は出入り口にドアマンとかがいるのでやらなくてもいいそうだ。
ミウが下りた後、それとなく腕を出すとその意味に気づいたのかミウが腕を組んできた。
デートと言ったらやっぱりこれだよね?
「さて、行こうか?」
「うんっ――」
ミウと腕を組んだままレストランに入り、「18時に2名で予約していた篠と申しますが――」とスーツ姿の従業員に声をかけた。
それからお店の人に案内される。
予算が1人1万円のちょっといいお店。
どちらかと言えば、カジュアルよりであるため、チェックのシャツの人やジーパンという人もいたけど。
その数は少なかった。
まあ、今日はミウの誕生日でデートという事情もあるので、服装には気を遣った。
ドレスコードに関しては調理師免許を取る際に学んだものの、ファッションには興味がなかったのであまり覚えてなかった。
さすがにスニーカーでは入れないというのはわかってたのでローファーにしたけど。
餅は餅屋と、アパレルショップの店員に聞いた。
スマートカジュアルというものらしい。
予算の関係で値下げされた商品の中からサイズの合っているものを選んだけど。
正直、店員さんにおすすめされるがまま買ってしまったので、売れ残りの商品をつかまされたという感じが強かった。
「お、お兄ちゃん。やっぱりここちょっと高いところじゃない?」
従業員に案内されて席に着くと、ちょっと緊張した面持ちのミウから声をかけられた。
「うん。ミウと来たかったからちょっと無理しちゃった」
「ちょっとお兄ちゃん? 本当に大丈夫なんだよね?」
「ああ。大丈夫だ。ポケットマネーだからね」
「う、うーん。でも、お兄ちゃん。そんなジャケットとスラックスなんて持ってたの? 前にデートしたときの服と違うよね?」
「うん。この日のために買っちゃった」
紺色のテーラードジャケットに茶色のスラックスだけど、細かい色合いを含めて店員さんが選んだものだから問題ないはず。
「お兄ちゃん? あんまり無駄遣いしちゃ駄目だよ?」
「デート代だと思えばいいからへーきへーき。ミウだって襟付きワンピースにリボンついてるじゃん? とっても似合っててかわいいよ?」
「あ、ありがと……」
ミウが頬を赤くしながら視線を逸らす。
紺色のリボンというのもあるが、どことなくセーラー服っぽい。
ちょっと生地が厚めなので白色ではあるが下着は透けて見えないというもの。
たぶん、雨にでも濡れない限りは大丈夫だろう。
いざとなったら俺のジャケットを羽織らせればいいし。
そして、メニュー表が運ばれてきた。
それからミウは白身魚のムニエルを頼み、俺は子牛のフィレを注文。
俺もミウも未成年のため、飲み物はジンジャーエールにしたけど。
「じゃあ、ミウ。グラスを持って。グラスはぶつけなくていいからね? 乾杯の時に軽く目の高さに持ち上げるだけでいいから」
ジンジャエールが注がれた氷入りのグラスが運ばれてきてからミウに声をかける。
正直、シャンパングラスの方が様になるのだけど、こればかりはしかたない。
「う、うん」
俺がグラスを持つとミウもグラスを手に取った。
「14歳の誕生日おめでとう、ミウ。乾杯――」
しっかりとミウと視線を合わせながら、グラスを軽く目の高さに持ち上げて乾杯する。
もちろん、自然な笑みを作ることも忘れない。
グラスをぶつけて乾杯するという人が多いが、本来はグラスをぶつけないのがマナーなのだ。
「か、乾杯」
恥ずかしかったのかな?
なんか顔を赤くしていた。
先にジンジャエールに口をつけると、ミウもそれを真似するように口をつけていた。
(ん?)
あんまり甘くなかった。
舌がピリピリする。
普段飲んでいるジンジャエールよりも生姜の風味と炭酸が強め。
ドライと言えばいいのか。
料理に合わせるためにこの味にしているのかな?
ただ、どこかで飲んだことのある味だから市販品だろう。
ちらっとミウを見るも、口に合わなかったのか「甘くない」と言わんばかりにグラスに入ったジンジャーエールを見ていた。
そんな姿もかわいらしく見えるのは、俺が本当にミウに惚れているからなのだろう。
(ああ。やっぱりかわいくてブラコンな妹はいいなぁ……)
実の妹だけど、血縁関係に関係なく普通の女の子と同じようにかわいく感じる。
元からミウのような女の子が好みというのもあるけど。
見ていて飽きないし、なによりもかわいいから、モチベが上がる。
チート能力の類はなかったが、異世界転生してかわいい妹が出来て満足だ。
(嗚呼、感謝します。イザナミ様。自分を異世界転生者に選んでくれて。おかげで妹との日常が楽しいです――)
心の中でイザナミ様に祈りを捧げておく。




