第39話・誕生日プレゼント
今日はミウの誕生日だった。
朝起きた後に「お誕生日おめでとう」とは声をかけたけど。
お互いの学校が終わり、ミウと一緒に帰ってきてから、レストランに行くための身支度を整える。
「ミウ、ちょっといいか?」
鏡の前で自分の姿を確認しているミウに声をかける。
「ちょっといいレストラン」と言ってしまったため、黒のスラックスなどがベッドの上に無造作に放り出されたままになっていた。
というか、そんな服持ってたんだね。
「なに?」
「ミウの誕生日プレゼントなんだけど、ちょっと先に渡しておくね?」
当初の予定ではレストランで食事している際に渡す予定だった。
でも、ちょっと荷物になりそうだったので早めに渡しておく。
「あ、うん。ありがと。ヘアブラシ? あと、こっちは?」
「ふふ。そっちは開けてからのお楽しみかな?」
ヘアブラシとアクセサリーの入った小箱を渡す。
ヘアブラシに関してはネットで注文した事情もあり、ラッピングされていないままで渡したのだが、本命であるアクセサリーはちゃんと包装してもらったもの。
ミウが白いリボンを解いて、明るい青緑色の箱を開ける。
「ネックレスだ。あれ、これブランド品だよね? 高かったんじゃない?」
箱に書かれたブランド名を見るミウ。
ファッションに興味のない俺でもわかるような有名なブランド品でそれなりの価格がしたもの。
予算の関係で小さめのものしか用意できなかったが、小柄なミウにとってはそれでこれで良かったのかもしれない。
「まあな。ミウはかわいいからかわいい系がいいかな?と思って、オープンハートのネックレスを選んでみたんだがどうかな? チェーンの方は直してもらえるそうだから、サイズが合わなかったら言ってね?」
ネックレスを手に取って眺めるミウだった。
でも、なんかヘアブラシを見た時よりも反応が鈍い気がした。
たぶんミウとしてはヘアブラシの方が嬉しかったということだろう。
「う、うん。ありがと。でも、どうしてアクセサリーとヘアブラシなの?」
「どっちを買うかで迷って両方買っちゃった」
思わず口元が緩む。
お金に余裕もあったということもあり、つい買ってしまったのだ。
もちろん、これは両親の遺産から出したものではなく、前世からためてた俺の貯蓄なのでポケットマネーである。
「お兄ちゃん……」
遠い目をするミウ。
なんか呆れられてしまったようだ。
「ま、まあいいじゃないか? ヘアブラシの方は毎日お手入れするから使うと思ったんだけど、ミウはアクセサリー系持ってなかっただろ? だから記念に残るものとして買ってみたんだ。記念するべきと言っていいかはわからないけど、俺が意識を取り戻してからミウと初めて過ごす誕生日だからね? ちょっとくらい奮発してもいいかな?と思って……」
「お、お兄ちゃん――」
なんか感激したようにミウが目を潤ませていた。
「ふふ。つけてあげるから後ろ向いてもらっていい?」
「う、うん」
ミウを後ろに向けてアクセサリーをつけてみる。
事前にお店の方でつけ方を習っていたので簡単につけられたのだが、鏡越しにミウからじとーっとした視線を送られた。
先ほどまで目を潤ませていたと思っていたはずなのに、なんでだ?
「お兄ちゃん。妙に慣れてない?」
「そりゃあ、お店の人につけ方習ったからね。“買ったのはいいけど、つけ方がわからなくて彼女につけられませんでした”ではちょっと恥ずかしいだろ?」
「か、彼女ってお兄ちゃん。ミウはお兄ちゃんの妹だよ?」
まんざらでもない感じで言葉を返してくるミウ。
念のためにお店の人につけ方を習ったのは事実だけど。
練習したらすぐにつけられるような簡単なものだったので問題なかったし。
「俺としては彼女でもいいけどな。それよりも似合っているよ。白のワンピースもね? かわいいよ」
「そ、そう?」
ちょっと恥ずかしそうに髪を耳にかけるミウ。
「うん。個人的に気に入ったやつもあったんだけど、それはちょっと予算オーバーだったし、あんまり高いものだと普段使いできないかな?と思ってこれにしたんだ」
本当なら16ミリのものが欲しかったが、予算の関係で11ミリのものにしたのだ。
出そうと思えば出せたけど、何かあった時のことを考えると、少しは手元に残しておきたかったし。
小ぶりのものであるが、小柄なミウにはちょうどいい感じだった。
これなら日常使いもできそう。
「へー、そうなんだ。ちなみにこれいくらしたの?」
「6万ぐらい。ちなみに、ヘアブラシは2万ぐらいだね」
「えっ、そんなに? だ、大丈夫なの? もしかして遺産に手を付けたとかじゃ……」
「それは大丈夫。“両親が”俺のお小遣いとしてためてたやつだから? 衣服代とかも含んでいたみたいだからそこそこあるんだよ?」
本当は前世で俺がためてたお金なのだが、説明が面倒臭いので両親がこっそりためてたお小遣いとした。
「あ、そうなんだ。でも、8万円は。それにヘアブラシもよく見ると有名なブランドのものじゃ――」
ミウが眉間にしわをよせて難しい顔をする。
「それよりもそろそろ時間だから行くぞ?」
「あ、うん――」
玄関を出るとタクシーがすでに着いていた。
タクシーに近づくと運転手が気づいたのかドアが開いた。
軽くドアを押さえ、先にミウを乗せてレストランへと向かう。




