第33話・放課後デートに誘おう
「あ、ミウ。ちょっといい?」
普段通りにミウと手をつないで学校に向かっていると、ふと思い出したことがあった。
「ん、なにお兄ちゃん?」
「ちょっと遠回りになるんだけど、近くにファミレスあるらしいんだよね。だから、この前言ってた放課後デートでもしてみない?」
「ほ、放課後デートですかっ⁉」
急に立ち止まったミウと目が合うも、彼女は目をぱちくりさせていた。
かわいい。
「ああ。俺も高校に進学したわけだし、お互いに制服のままでね?」
それは数日前。
とあるラブコメ漫画を読んでたらファミレスでデートするシーンがあった。
それで、ミウとやってみたいと思いつき、ファミレスの場所を調べたら、自宅からそんなに離れていないところにあったのだ。
ファミレス自体は前世にもあった有名なファミリーレストランのチェーン店。
前世と変わっているところがなければの話であるが、俺も何度か入ったことがあるから、味や価格帯にお店の雰囲気もなんとなくわかる。
「制服のままってことはまっすぐファミレスに行くの?」
「うん。急で悪いけど、今日帰ってきたらそのままね。何か用事でもあった?」
「ううん。無いよ。仮に何かあったとしてもキャンセルするから大丈夫」
「そう?」
なんか悪いことをしたかもしれない。
急な約束となってしまったが、元から誘う気だったので今日は現金をちょっと多めに持ってきている。
本当は今朝誘おうと思ったんだけど、色々とやってたら忘れちゃって、今になっちゃったけど。
「じゃあ、今日は楽しませないとね?」
パチッとウインクしてミウとつないでいる手に少し力を入れる。
「お、お兄ちゃん――うん、わかった」
ミウも返事をするように強く握り返してきたと思ったら、正面へと視線を戻して大股で歩き出した。
ちょっと動きがぎこちないし、耳も赤いように見える。
恥ずかしいのかな?
まあいいや。
前世ではできなかった制服同士での放課後デートだ。
ああ、いいね。
思わず口元が緩む。
――
ミウと別れて探索者高校に到着した後は授業に精を出す。
ダンジョンへの出入りは来月にならないと解禁されないため、今は訓練期間中と言っていい。
だから、まだお金は稼げていない。
これでお金が稼げるようになれば、ファミレス程度なら気軽に行けるようになるだろう。
俺も人間だからね。
どうしても料理したくないと言う時はあるし、気分転換がしたい時もある。
そんな時に気軽に外食できるというのはありがたいのだ。
実は両親の遺産だけではなく、遺族年金もそれなりにもらえているので生活に困窮するというほどではない。
ただ、ミウが経済的な事情で自分の行きたい高校や大学を諦めるなんてことにはなってほしくないのだ。
前世の俺がそうだった。
まあ、趣味の問題もあったけど。
本当だったらアニメやゲーム関連の方に進みたかった。
イザナミ様の紹介であるが、進学の決め手になったのは「高校に通いながら探索者として働いて収入を得ることができる」という点。
仮に入学試験に落ちていたら、高校にはいかずアルバイトで生活費を稼ぐ予定だった。
これに加え、俺の場合は前世から引継ぎになった資産、いわゆるポケットマネーがあるのだ。
自分が払えるものは自分で払うようにしている。
探索者としての装備代などもここから出す予定だったし、ミウとのデート代などもここから出しているので、ちょっと余裕はないけど。
これに関しては完全に俺のわがままだから仕方ない。
異世界転生者とはいえ、実の妹に恋愛感情を抱いてしまっただけではない。
オカズにもよく使ってるという後ろめたさもある。
この前はパジャマのズボンにも手を出しちゃったし。
鏡に映ってた虚ろな目の自分を見て、さすがにやべぇとは思ったが、そうでもしないと冗談抜きでミウを襲いかねない。
性犯罪者になってしまう。
現実はエロ同人とは違うのだ。
だから、これくらいは仕方ない。
前世では考えられないことだったが、たとえミウに振られて、彼女に費やしたお金と労力が無駄になったとしても後悔はない。
(そんなことよりもデートで何を食べるか決めないと……)
休み時間に携帯電話を使って、メニューだけではなくドリンクバーの使い方や会計の仕方なども調べておく。
今の時代はいいねぇ。
昔だったら、実際にお店に行ってからじゃないとわからなかったものが、今では事前に動画で確認できるのだ。
どのドリンクを混ぜるとおいしいかとか、実は無料で炭酸水が飲めるなどの豆知識もあるし。
(早く放課後にならないかなぁ……)




