第32話・目下の問題はハーレムです
どうして妹ものが好きなのかは今でもよくわからない。
単に好みの問題というか、俺が好きになる子が妹キャラであることが多かった。
たぶん、庇護欲をかきたてるキャラとかが好きなのだろう。
メインヒロインよりもサブヒロインの方が気に入ることが多いし。
その結果が妹ものを中心にやるようになったのだ。
これには前世でリアルの妹がいないという環境も大きいと思う。
弟が2人いたけど、興味がなかったのでどうでもいい。
そのうちの次男は交通事故で死んだけど。
そもそも俺が好きなのはあくまでもラノベやエロゲに出てくるようなブラコンの架空の妹で、ラノベやエロゲに同人誌で十分だったのだ。
それが異世界転生してリアルの妹ができて。
ラノベやエロゲに出てくるようなブラコンな妹になったら、そりゃあ攻略するしかないよね?と思う。
俺をこの世界にスカウトしたイザナミ様は前世の世界でも兄妹で結婚してたし、この世界では遺伝疾患の問題が起きないから、近親婚や重婚とかも合法だし。
それでも実際に近親婚するのは少数派。
重婚する人もそこまで多いわけではない。
また、イザナミ様たち以外にも神様がいて、その加護もあるのだ。
お守りなんかは目に見える形で効果がある。
おまけに魔法もあるしね。
前世に近い世界ではあるが、根本的には違う世界。
だからこその異世界なのだろうし、そんな世界に合っているからこそ、俺が転生することになったのだろう。
(あとは当事者同士の問題というわけか……)
前世での反省を踏まえて、自分の気持ちを大切にしようと思う。
頭のネジは前世の世界にでも置いてきたということにして。
0と1のように思考を単純化する。
(ラノベの主人公なんて柄じゃないからな。前世と同じように俺がやりたいように生きて行こう)
ボッチ飯も普通にできるし、生粋の日本人なのに「いただきます」とか宗教的に感じるから価値観が合わないし。
そもそも祖父母と同居した家庭で育ったのだ。
核家族で育っていない、言わば普通ではない人間が普通を売りにするようなラノベの主人公になれるわけがない。
それに家事だってそうだ。
前世や今世の父親のように家事をしない男性が多いというのは知っているし、同じ兄弟でも弟たちもできなかった。
父親も祖父も同じだったが、父親に関しては母親に言われて渋々するようになったけど。
そんな中で、俺だけは家事ができた。
長男だからというプレッシャーもあったし、ほとんど強制に近い形でやらされたという事情もある。
まあ、一番の理由は運動も勉強もできなくて、いわゆる普通の人にはなれなかった。
厳密に言えば、オタクであること自体が普通の定義から外れると思うけど。
少なくとも俺は周囲よりも劣っているからこそ、手に職を付ける道を選び、自分自身の体にその技術を叩き込んだのだ。
中学時代のクラスメイトには、介護福祉士を目指して福祉科に行ったり、工業高校に進んで在学中に測量士補を取ったやつもいたし。
陸上自衛隊の高等工科学校に進んだやつもいたっけ?
まあいいや。
俺にとっては必要だったから、それができるようになっただけのことに過ぎない。
仮にもう少し勉強ができていたら、普通の人たちと同じような道を進んでいたと思う。
しかし、こんな俺も前世で見れば没個性のモブ。
俺よりも個性豊かな連中なんてのは大勢いたのだ。
(そんなことよりもハーレムの問題だ。マジでどうすっかなぁ……)
目下の問題はそれだ。
まさかこうなるとは思わなかったので安易に同意してしまった。
こればかりはやってみないとわからなかったというか、たぶん俺の妹がミウでなければ、俺もここまで迷わなかった。
普通のギャルっぽい性格とかだったら好きにはならなかったと思うし、仮に好きになったとしてもその妹に好きな人がいれば、トイレにお風呂の世話まですることはない。
(イザナミ様はデリケートな子とは言ってたが、人柄に問題ないと言うだけはあると思う)
とてもいい子だ。
そんなミウが自殺してしまうなんて考えたくもない。
たぶんそっちのルートからは外れた気がするが、だからと言って油断はできないと思うし、今まで通り自分なりに愛情を注いでればいいだろう。
せっかくかわいい妹ができて、そんなかわいい妹と結婚できる世界に転生したのだ。
深く考える必要はないだろう。
お酒に酔うように今の環境と関係を楽しめばそれでいいはずだ。
――
「おはようミウ。今日もかわいいね」
翌朝。
俺が部屋を出ると、ちょうど自分の部屋から起きてきたミウへと声をかける。
髪がぼさぼさになっているがそれでもかわいいと思う。
「ミウ、寝癖で頭ぼさぼさなんだけど……」
頭をぼさぼさにしたままのミウが目を細めてくるも、これはこれでジト目みたいでかわいい。
ささっと距離を詰めて腰に手を回す。
「そんな姿もかわいいって言ってるの。結婚しよ?」
「も、もうっ。朝から変なことばかり言って。いつか女の人から背中を刺されるよ、お兄ちゃん――」
呆れるように言葉を返すミウだったがまんざらでもなさそうだった。
頬がどことなく赤い。
「そう? それよりもブラッシングする?」
「うん。でも、トイレに行ってからでいい?」
「わかった。俺は1階のを使うからミウは2階のでいいよ?」
「あ、うん」
そして、トイレに行った後に、ドレッサーの前でミウの髪をブラッシングして寝癖を直す。
「うん。今日もかわいくなったね?」
「おにーちゃん。今日なんかおかしくない? 変なものでも食べた? 朝からかわいいかわいい言ってるけど、いつにも増しておかしいよ?」
「そうか? まあいいじゃないか。そういう気分なんだよ。それよりも朝食にするぞ?」
「あ、うん。わかった。それでお兄ちゃん。もしもミウが食べさせてって言ったら食べさせてくれる?」
「OK」
それから朝食を済ませて家を出る。
手をつなぐ際に指を絡ませてみると、ミウも絡ませてきた。
何があってもその手を放すまいとしっかりと握る。
(さてと。今日も頑張りますか……)
家事から勉強までやることは多い。
でも、それらをやらなければ、未成年である俺とミウだけでは暮らせないのだ。
今世の両親が生前に未成年後見人の弁護士を手配していれば、俺もミウも児童相談所の施設で生活することになっていただろうし。
どう転んでも未成年として扱われる以上、ミウとそういう関係になっても問題ないだろう。
もしも仮に。
未成年ではなく成人として扱われるのなら、また違った未来があったのかもしれないけど。
(これはこれで楽しいからいっか……)
そんなことを思いながら、ミウと一緒に通学路を歩くのだった。




