第29話・母の味と妹の手料理
「ふふ。どう? ミウだって頑張ればお母さんのように作れるんだからね?」
今日の夕食はミウが作ってくれるとのことだった。
だから、任せてみた。
そしたらごはんと味噌汁に焼き鮭というメニューが出てきた。
じっとしているのも手持ち無沙汰だったので、お皿を並べたり洗い物とかは手伝ったけど。
「おいしいよミウ」
最初に味噌汁に口を付けてみたが優しい味付けだった。
俺が普段作るものよりもちょっと味が薄いような気がする。
各家庭によって入れる具が違うけど、豆腐とワカメとネギというのは普通の味噌汁と言っていいだろう。
「この味付けは自分で考えたの?」
「ううん。お母さんから教わったの。どうかな?」
「優しい味付けでいいんじゃない? 母親の味ってやつで……」
「そう?」
はにかんだ笑みを浮かべるミウ。
こういう時に「味が薄い」と指摘するのは野暮だろう。
俺の場合は料理人として「味付けはしっかりするように」という指導を受けている都合もある。
これは利益率が高い飲み物を売るためでもあるが、味を均一化させることで、食材の品質や料理人の腕にかかわらず、お店の味が再現できるというオペレーション的な問題もあるのだ。
「あ、もしかして俺が作るやつって味濃かった?」
味が濃い方が好きというのもあるけど、この味を参考にすると、俺の作る料理は濃い方に分類されてしまいそうだ。
だとしたら、ミウは我慢して俺の料理を食べていたことになる。
それはまずい。
「ううん、大丈夫だよ。だってお兄ちゃんの料理ってお店屋さんのやつとかお弁当のやつよりは少し味が薄いじゃん? だから問題ないと思うよ?」
「そう? 一応、健康のことを考えて塩分が控えめになるように心がけているけど、味が濃かったら言ってね? 調整するから」
「うんっ。やっぱりお兄ちゃんはミウのことを考えてくれてたんだね?」
「そりゃそうだろ。俺だけだったら自己責任でなんとかなるけど、提供された側のミウはそういうわけにもいかないだろ?」
「ふふ。やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだね?」
「ん?」
一瞬何を言っているのかちょっとよくわからなかったが、なんか笑みを浮かべていたので気にしないでおこう。
――
「それとお兄ちゃん。明後日なんだけどお弁当って作れる?」
「ん? それはミウのお弁当ということか?」
自分の部屋で魔法の教科書をノートに写していると、プリントを持ったミウが訪ねてきた。
「うん。これなんだけど……」
ミウからもらったプリントを読む。
故障した調理機器の交換で、その日は給食の提供ができないのでお弁当を持参して欲しいと書かれていた。
最初は「休みの日にでもやれよ」と思ったものの、最短で明後日。
次の休みとなると、もっと遅くなってしまうことに気づいた。
最善を尽くした結果がこれなのだろう。
学校とかに苦情を入れる気はないけど、これで苦情を入れる保護者はいるんだろうな。
まあ、この手の苦情を入れる人はSNSがなかった時代からいるんだけどね。
「わかった。それでお弁当箱ってあったりするのか?」
「うん。偶にお弁当の日があるからね」
それからミウと一緒にキッチンでお弁当箱を探して見つけたものの、思ったよりも小さいものだった。
俺ならこのお弁当箱が2つないと満足できない量であるものの、ミウとしてはこれ1つで十分らしい。
女性は小食だと聞く。
ただ、学校で出される給食よりも量が少ないんじゃないか?と思って心配になるほどだ。
「本当にこれで大丈夫なのか? 量足りる?」
「う、うん。十分だよ?」
「わかった。それとお昼に食べるのなら冷凍食品とか使っても大丈夫か?」
「あー。そうだね それはお兄ちゃんに任せるよ?」
「OK。わかった」
それからミウのお弁当の献立を考えることになった。
ついでに、動画でお弁当の作り方も再確認しておく。
(キャラ弁か……)
動画にその作り方を解説しているものがあった。
興味があったのでそれも見る。
(あれ? 意外といけるかもしれない)
キャラ弁自体は知っていたが、前世を含めて作ったことはなかった。
タコさんウインナーとか、カニさんウインナーとかはよく作ってたけど。
この際だから作ってみようか?
ふふふ、それでちょっとミウをびっくりさせてあげよう。




