第30話・お弁当
今日はミウのお弁当の日だった。
いつもよりも1時間早く起きて、調理作業を開始する。
どうせならキャラ弁にでもしてやろうと思ってたので、その作り方も学んでおいた。
ごはんは醤油で色付けした三毛猫と海苔を巻いた黒猫。
おかずはタコに見えるように細工した赤ウインナーに、ハート型に整えたお手製のだし巻き卵とお弁当用の冷凍エビグラタン。
水気をよく切ったフリルレタスをサラダとしてその隙間に埋める。
レタスは傷みやすいけど、この時期なら大丈夫だろう。
最後に、予熱したスープジャーに鍋で温めたコーンスープを注いで、しっかりと蓋を閉めて、お弁当は完成。
パチパチ。
コーンスープは市販の粒なしのストレートタイプにした。
粒だと底にたまるというのもあるが、何よりも歯に皮が挟まるのが嫌。
あとは、箸とスプーンが入ったケースに、使い捨てのおしぼりを輪ゴムでまとめ、ペットボトルのお茶と一緒にお弁当袋に入れた。
これで良し。
「お兄ちゃんおはよ。今日は早くない?」
目をこすりながらミウがリビングに入ってきた。
ちらっと時計を見るも、普段俺が起きる時間帯だ。
余裕を持って作っていたが、これならもっと手の込んだものを作っても問題なさそう。
「ああ。ミウのお弁当もあったからね」
「も? あれ、お弁当入れが2つあるよ」
「片方は俺のお昼ご飯」
検食とはちょっと違うけど、お昼に食べて味などを確かめてみるため、自分用にも作った。
「あ、そうなんだ。じゃあ、ピンクのやつがミウので黒のやつがお兄ちゃんのだね?」
「ああ。お弁当袋にはスープジャーも入っているから振り回すようには扱わないでくれよ」
「もー、お兄ちゃん? ミウは子供じゃないんだから大丈夫だよー」
「そうか?」
この前は「子供」って言ってた気がするけど、まあいいか。
――
お昼になったのでダンジョンから自分の教室に戻ってお弁当を食べてみる。
俺に割り当てられた学校のロッカーに入れてたから、キャラが崩れていることもなく、傷んでいる食材もなかった。
味は想像通りというか普通だったけど。
世の中には、ボッチ飯が嫌で1人でどこかに隠れて食べるなんて言う人もいるらしい。
けど、俺はそれがまったく気にならないタイプなんだよね。
前世から普通に教室でボッチ飯をしたり、学食で1人で食べてたし。
そもそも衛生的に考えてトイレで食べるなんていうのは論外。
ラノベで定番だけど、現実的には屋上とか空き教室などは昼に解放されていないので使えない。
部室に関しては部によると思うが、お昼なら解放されていないところの方が多いと思う。
中庭とかがないわけではないが、そういうところはカップルだったり、1人で食事したい人やボッチだけど周囲に気づかれたくないと言う人たちが使っているので意外と人気があるのだ。
あと、屋外だとどうしても天候に左右されやすいし、飛んでくる虫とかも嫌。
――
「お兄ちゃん、今日のお弁当だったんだけどっ――」
小走りで近寄ってきたミウといつもの場所で合流する。
「ん、なにかあったか?」
今日はお弁当入れを持っているので、手はつながなかった。
けど、恋人のように距離を詰めたまま並んで歩くことには変わりない。
「なんでキャラ弁にしたの? おかげでクラスメイトたちに笑われちゃったじゃん」
「あー、ごめん。そっちがいいかなと思って……」
女の子だからキャラ弁の方がいいかな?と思って作ったんだけど。
ミウの様子からは、本気で怒っているというわけではないので大丈夫だろう。
「だからつい“お兄ちゃん”と漏らしちゃって大変だったんだよ? おかげでミウはお兄ちゃんにキャラ弁作らせてる妹になっちゃったんだよ。それまでは自分でお弁当も作るしっかり者の優等生というイメージだったのに、どー責任取るのさぁ?」
こつんと頭を腕にぶつけてくるミウ。
「そうだな。それなら責任を取ってお嫁さんとしてもらおうかな?」
「だからお兄ちゃん。それは行き過ぎだってぇ。どうしてそんなこと言うのぉ?」
「それはミウのことが好きだからに決まってるでしょ?」
「もー。お兄ちゃんってば――」
そんなくだらない会話をしながらも家へと帰った。
――
今日の夕食はミウの手料理となった。
料理することは予め決めていたようで、家に帰ってきてお弁当箱を洗っていると食品配達業者が食品を届けに来た。
それから夜ご飯の支度となるも、今日はミウが全部やるそうだった。
おかげで自分の部屋に追いやられ、ご飯が出来た後にリビングに呼び出されて今現在。
「それでどうかな?」
「ああ。おいしいよ」
ミウお手製のハンバーグにナイフを入れて食べた。
ちょっと焦げ目があるけど、これぐらいは許容範囲。
あとはご飯に、電子レンジでチンしたブロッコリーとかニンジンと、今朝使って残ってたコーンスープでちょっと立派なメニューとなっている。
「ふふーん。お兄ちゃんほどではないけどミウもできるんだからね?」
どこか満足げな顔で胸を張るミウ。
ああ、もうかわいいな。
抱きしめたい。
「さすが俺の妹だな。俺のお嫁さんに欲しい」
「ちょっ、お兄ちゃん? またそんな変なことを言って……」
「そう? このまま結婚したいぐらいだよ?」
「だーかーらー。変なこと言うの禁止ー」
ミウの手料理を食べ終えた後は彼女と一緒に後片付けを手伝う。
「やっぱりお兄ちゃんがいると楽だね」
「そう?」
「だってお父さん全然手伝ってくれなかったんだもん。一家に一台じゃないけど、ミウのお兄ちゃんが家に1人はいるといいね」
「なんだそれ」
某お掃除ロボットじゃないんだから。
「でも、家に1人ということは、ミウは俺をお婿さんとしてもらってくれるということでいいかな?」
「ま、また変なこと言って。駄目だよお兄ちゃんー」
「うおっ――」
肘で脇腹をぐりぐりされた。
あぶねぇ、危うく洗ってた皿を落とすところだったじゃないか。




