第26話・罰ゲーム
「あっ――」
ミウがお菓子が入ったパッケージに目をやって声を出す。
先ほどのが最後の1本だった。
「勝敗はつかなかったかな?」
「そ、そうだね」
ミウと合法的にキスできるという誘惑に負け、結局は全部やった。
まさかの1箱分。
なので34回ぐらいはやったかな。
この間は、ミウは途中までは食べ進めるけど、あとはずっと受け身だった。
だから、俺からずっとキスしてたようなものだし。
途中でお菓子が折れるなんてこともなかった。
まあ、俺もミウとキスするのは嫌いじゃないからいいんだけどね。
キスするときはずっと好きって思ってやってたし。
「でも、お兄ちゃんは最初に落としたよね? だからお兄ちゃんの負けだよ?」
「え? あれはスタートしてないって言ったじゃん?」
「だって、それ以外は全部引き分けなので仕方ないじゃん?」
「それはそうだけど。まあいいか。それで罰ゲームはなんだ?」
「ふふ。それはねぇ――」
それから罰ゲームとしてミウと一緒に寝ることになった。
もちろん、彼女が寝るまで頭を撫で続けないといけないらしいけど。
ミウとしては罰ゲームだからいいらしい。
――
ふと目が覚めた。
そして、体に違和感というかミウが抱き着いて寝ていた。
ゆっくりと周囲を見るも、机の場所が違うし、セーラー服が壁にかけられている。
ミウの部屋か。
昨日の罰ゲームは終わったと思うが、髪をとかすように頭を撫で始める。
「お兄、ちゃん?」
ミウの頭を軽く撫でながらぼーっと過ごしているとミウの声が聞こえた。
「んぁ? ごめん。起こしたか?」
「うん。それでもしかして昨日からずっと頭を撫でてたの?」
「さすがにそこまでじゃないかな? 今日はちょっと早く起きちゃったからそこからだね」
「何分ぐらい?」
「5分?」
目覚まし時計に目をやるものの、起きた時の時間帯を見ていなかったため、あくまでも体感。
「そっか。わかった。それで時間ってまだあるの?」
「目覚ましが鳴るまであと5分くらいかな?」
「じゃあ。そこまでお願いね?」
「わかった」
そして、目覚ましが鳴ったところで手を止めて起きる。
「お兄ちゃん。毎回思うけど、いつも元気だよねそこ……」
俺の下半身を見ながらミウがそんなことを聞いてくる。
体の一部だが、そこはお兄ちゃんじゃないぞ?
本体という意味ではそうかもしれないけど。
「そこはスルーしてよ……」
「だって。寝るときから当たってたし」
「まあ、仕方ないね。これでも夢精しないだけマシなんだけど……」
「お兄ちゃん。それは駄目だよ。セクハラだよ……」
「えー……」
なんかセクハラ認定されてしまったが本当にこれでもマシなのだ。
ミウは気づいていないと思うけど、実は一緒に寝てた時に何度かやってしまい、トイレに行くフリをして交換したりしてた。
それもこれも人を抱き枕に使うミウが悪いとしているけど。
これを罰ゲームと言えば罰ゲームになると思う。
俺としては役得だけどね。
「と、とりあえず。朝食の準備をしないといけないからな――」
露骨に話題をそらしつつ、そそくさと逃げるようにミウの部屋を後にする。
しかし、ミウも普通についてきてしまったので逃げ場はなかった。
――
「じゃあ、今日も頑張りますか……」
「そうだね」
身支度を整えて戸締りを終えた後、ミウと手をつないで家を後にする。
昨日は指を絡ませていたので今日は手をしっかりと握るようにしてまずは中学校に向かう。
「ミウ。少しいいか?」
「何? お兄ちゃん」
「いや、最近はいつも手をつないでいるけど、クラスメイトとかに見られたりしても大丈夫? 馬鹿にされてない?」
ふと気になったので質問してみる。
「え? 今さら言っているの、お兄ちゃん?」
「え、今さら?」
「だって水族館でデートしたときも普通に見られてたし、この前コンビニでアイス食べてたときも見られてたからもういいかなって……」
「えっ、そうだったの?」
どこか遠い目をするミウ。
あの場にミウのクラスメイトがいるなんて全然気づかなかった。
「うん。水族館デートの時は水族館の中に家族といたみたいだけど、コンビニは車の中からね。だからお兄ちゃんはミウの恋人になっているんだよ?」
「そ、そうなんだ……」
考えてみればそれなりに人目のつくところだったので、目撃されても仕方ない。
「あれ、なんか反応薄くない? ミウと恋人だよ? もっと嬉しくないの?」
「いや、恋人ならまあいいかなって思って……」
「そこで納得するぅ?」
「するする。じゃあ、今度お友達に聞かれたら“恋人”って返すね? それとも“フィアンセ”?」
「ちょ、ちょっと。それはまだ早いよぉ……」
早いとは言いつつも、つないでいた手にギュッと力が入った気がする。
「そう? でも、恋人扱いされているなら恋人で良くない?」
「で、でもぉ。ミウとお兄ちゃんは実の兄妹なんだしぃ」
「この世界では結婚できるからへーきへーき。あっ、あんなところにミウと同じ学校の子が――」
そう言って適当なところを指差す。
「ちょ、ちょっとぉ。駄目だよぉ――って、いないじゃんお兄ちゃん。もうっ――」
耳まで真っ赤になったミウにげしげしと足を蹴られた。
本気ではないと思うけど、地味に痛い。
「はは、ごめんごめん。ミウがかわいかったからつい――」
「もー。お兄ちゃんっ。いつか後ろから刺されるよ?」
そうこうしているうちに目的地に着いた。
名残惜しいがミウと別れ、俺も高校へと向かった。




