第25話・お菓子とゲーム
高校に入学してから数日過ぎた。
この間、特に何か変わったことが起きたということはない。
ただ、今日から戦闘訓練が始まることになった。
そして、来月になれば、ついにダンジョンに入っての攻略が解禁されるらしい。
学校から支給された竹刀を持ってクラスメイトの男子と打ち合う。
最初はお遊びに近い感覚だった。
しかし、先生の指示で次第にペースアップして試合のような実戦形式になっていた。
試合が終われば、あとは自分に合った得物を探しての鍛錬。
鍛錬が終われば、武器や防具などの手入れに、マジックアイテムの使い方を学ぶ。
マジックアイテムに関しては魔力を流すだけでいいらしい。
だが、俺の場合は義務教育で習得するはずの魔力の扱い方を習っていなかったため、そのコツをつかむのに苦労した。
おかげでマジックアイテム1つ発動させるのに苦労する劣等生となってしまったのだ。
この事情は担任も把握しているはずだが、だからと言って手助けをしてくれるということもなく、自力で何とかするしかなかった。
授業が終わり、ミウの帰りを待ちながらペットボトルのコーヒーを口にする。
「ふぅ……」
ああ、甘さが体に染みわたる。
前世で疲れたときはよく飲んでいた練乳入りの甘いコーヒー飲料。
こちらでも売られていたのでつい買ってしまったものだ。
「あ、お兄ちゃん。そんなに黄昏てどうしたの?」
学校から帰ってきたミウに声をかけられた。
「ん? ちょっとな」
ペットボトルのキャップを閉めて鞄に戻した後、その隣に並び、それとなく腕を組む。
いつもなら彼女に腕を引かれる側。
でも、今日は気分を変えて反対にミウの腕を取るように組んでみた。
「どうしたのお兄ちゃん? 今日はいつもと違うね? 何かあった?」
「いや。今日はそういう気分なんだ。嫌だったか?」
「ううん、大丈夫だよ」
それとなくミウの顔色をうかがってみるとどこか恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
――
「それでゲームって?」
「う、うん。これなんだけど……」
夕食後、ミウが「ゲームをしたい」と声をかけてきたのでミウの部屋に来たのだが。
机の上にはボードゲームではなくお菓子が1箱あった。
持ち手以外がチョコレートでコーティングされたスティック状のクッキーである。
某メーカーのやつ。
「それでこれでどんなゲームをするんだ?」
なんとなく想像できるけど、聞いてみる。
「う、うん。あのね。これの両端をくわえて同時に食べ進むの。そして、途中で落とした方が負けなの……」
「そうか。わかった」
それからお菓子を取り出してお互いにくわえてみるが、なんかすごく恥ずかしい。
ミウと目が合う。
顔が近い。
息がかかる。
「「あっ――」」
俺が思わず目をそらすと机の上にお菓子が落ちてしまった。
「ごめん。負けっぽい」
「お兄ちゃん。まだスタートしてないから大丈夫だよ?」
「そう?」
素直に負けを認めるもノーカンと言わんばかりにミウが拾って持ち手の方をくわえた。
「ふぁやく、ふぉにぃふぁん」
ミウに急かされたので俺も腹をくくって食べ始める。
だんだんと彼女の顔が近づいてくるも、顔が赤い。
でも、途中で食べるのを止めた。
目を閉じて、どことなくキスを待ち構えているように見える。
このまま進んだらそうなるだろう。
某アニメのシーンであったように1センチ未満でかみ切るというのもあるが、それとはちょっと違う気がするし。
(前世から思ってたけど、一度でいいからやってみたかったんだよねこれ……)
お互いに無言で食べ進める。
息がかかる。
ちょっと恥ずかしい。
でも、それに負けてここでかみ切ったら男が廃る。
何よりもミウとキスがしたい。
「「ん」」
そして、キスするようにくわえてたお菓子をミウの口に押し込む。
唇を合わせるだけの軽いもの。
それでも食べきった。
「またしちゃったね。お兄ちゃん」
「そ、そうだな」
ちょっと顔が熱い。
下半身も反応しまったが今はそういう気分ではないのでここは耐えておく。
さすがに中学生を押し倒したら洒落にならない。
押し倒しても良さそうな雰囲気はあるけど。
それよりも口の周りがチョコレートでベタベタになってしまった。
ティッシュで軽く拭く。
喉も乾いた。
青いマグカップの紅茶に口を付ける。
「じゃあ、次だね?」
「えっ?」
1本だけじゃないの?
「だって今の引き分けじゃん? これはどちらかの勝敗が着くまでやるんだよ? もちろん、わざと負けたらペナルティね?」
耳まで赤くしたミウが言葉を返してくるが、そこまでしてやらないといけないゲームなのだろうか?
でも、本人がやりたいと言っているし、俺も嫌じゃないからやるけどさぁ。




