第24話・新生活も妹が優先
(なんかフツー)
最初の感想はそれだった。
市バスに乗って日本探索者育成高等学校こと、日本探索者高校に到着したけど。
日本では珍しく入学式がなく、登校初日から始まるところらしい。
俺と同じように、真新しい制服に身を包んだ生徒たちと共に校舎へと入っていく。
敷地がちょっと広くて校舎も少し大きく見えるというところをのぞけば、普通の高校と大して変わらない気がする。
鉄筋コンクリート建ての校舎があって、校庭があって、体育館があるぐらい。
あとは探索者協会の支部というか、日本探索者高校支部が1つあるのが特徴かな?
遠目からしか見てないが、広めのコンビニサイズの建物がそれらしい。
それとなく生徒たちも見てみる。
容姿の整ったいわゆる美男美女が多い気がするものの、この世界ではそれが普通なので気にしない。
ショッピングセンターとかでも似たような感じだったし。
また、前世に比べると、髪の色は千差万別だ。
転生した当初はまるでアニメやゲームの世界にでも入ったような不思議な感覚だったが、3日もたてば普通に慣れて気にならなくなった。
適応力ってすごい。
ちなみに、髪の色は様々であるものの、調べてみたら日本人としては黒髪が多いそうで、俺以外にも黒髪の生徒というのは男女問わずにいる。
(雰囲気的には学年最下位ってわけかな?)
自分のクラスと番号が書かれた紙を見て、指定されたクラスの座席に座る。
E組40番。
だからクラスで一番後ろの窓際の席である。
人生で二度目の高校生活だが、はたしてどうなることか。
――
(あかん。何も起きひん……)
普通に授業が終わった。
今日は初日ということもあり、探索者としての心構えや施設案内が中心だった。
ボディビルダーのようなマッチョな先生が担任となったが、自己紹介らしいものは教師だけで、生徒同士のものはない。
担任が「自己紹介は自分たちで済ませておけよー」と言ってまさかの終了。
気さくな人はここで周囲の人に普通に声をかけたりしていたけど。
俺、そこまでコミュ力高くないねん。
普通に本を読むふりをして、周囲の様子を観察してた。
本は「初心者でもよくわかる魔法」という魔法に関するもの。
学校での暇つぶしを兼ねて不足した魔法知識を補うために購入したやつ。
前世だった暇そうに窓の外でも眺めたり、携帯電話でもいじっていたんだけど。
(うーん。美人な子やかわいい子がいないというわけではないけど……)
前世のクラスメイトにもそういう人たちはいた。
でも、当時は恋愛よりも学業というか、高校の卒業が最優先だったので、恋愛を切り捨てていたし。
アニメやゲームで満足できたので特に気にならなかったのだ。
そもそもの問題として、女性とは何を話せばいいのかわからなかったというのもある。
おかげで、興味があっても声をかけられなかったんだよね。
そしたらあっという間に高校生活が終わった。
(それに何よりも今はミウがいるからね)
かわいい妹の顔が自然と浮かぶ。
それに、よくよく考えてみたら、俺ってリアルでも陰キャモブのコミュ障だったじゃん。
そんなやつが異世界転生した程度でハーレム作れると思ってんの?
無理無理。
ミウの送り迎えもあるし、部活に入る気もないので、その勧誘をそれとなくかわしながら、学校を脱出する。
――
「それでお兄ちゃん。学校はどうだった?」
帰り道にミウと合流するも、彼女がそれとなく腕を組んできたのでそのまま自宅へと向けて歩き出す。
「それが特に何も起きなかったんだよねー。初日だから探索者としての心構えとか、学校施設の案内とかが中心だったし……」
「そうなんだ。探索者育成高校っていうから、ラノベのようにもっと派手なのやっていると思ったんだけど……」
「まあ、現実ってそんなもんじゃない? さすがに初日から魔法を撃ったり、武器を振り回すなんてのはないでしょ……」
「そっかぁ。あ、お兄ちゃん。ちょっといい? シャープペンの替芯が無くなっちゃって、それが欲しいからコンビニにでも寄りたいんだけど……」
「ああ。別にいいぞ?」
ちょっと遠回りになるが、家から少し離れたところにあるコンビニに向かった。
もちろん、コンビニの中でも腕は組んだまま。
正直、コンビニよりもスーパーとかの方が安いんだけど、だからと言ってスーパーに行くにはちょっと遠いし、通販は明日以降で間に合わない。
ミウが会計する直前。
レジの上にあった電飾看板に映るソフトクリームの誘惑に負けてしまい、会計別でそれを1つ購入。
その際、「スプーンは2つください」と言ったら、店員のおばちゃんが色々と察した感じで用意してくれた。
それからはコンビニ内のイートインスペースに行き、その隅でミウとつつき合うようにして食べる。
絹のようにきめ細やかな口どけと牛乳本来の自然な甘みのさっぱりとした味が特徴のソフトクリームだった。
「ふふ。コンビニで買い食いって恋人同士みたいだね、お兄ちゃん?」
ミウが話しかけてくるも、店内にいるという事情もあり、声のボリュームは控えめであった。
「うん。一度やってみたかったからね?」
ミウとの距離を詰めて耳打ちするように言葉を返す。
前世からの夢でもある。
妹相手ならノーカンと言う人もいるかもしれないけど、たとえ妹でも意識している異性ならセーフだと思う。
何よりもかわいいからヨシ。
「そ、そうなんだ」
「それと“恋人同士みたい”じゃなくて“恋人”でいいんじゃないか? それとも“フィアンセ”にでもする?」
「ちょっとお兄ちゃん。それ言い過ぎぃー」
「そう? 俺としては本気なんだけど?」
「ちょっとぉ、時と場所を考えなよぉ。ここコンビニの中だよぉ?」
ミウに肘でつつかれながらも、ひそひそと話す。
なんか普通にデレているように感じるけど、気のせいかな?
それからアイスクリームコーンを含めて食べ終え、まっすぐ家に帰った。
「なんか放課後デートみたいだったね?」
お互いにラフな服装に着替えた後にミウを膝の上に乗せると、彼女がそんなことを言い出した。
「みたいじゃなくて放課後デートでは駄目なの?」
「うーん。今回はミウが買い物したいって言ったからノーカンかな。というか途中まで普通の買い物だったじゃん?」
「そっか。じゃあ、今度改めてだな」
「うん。でも、学校の先生とかクラスメイトに見つかるとあれだからちょっと場所は選ばないとかな?」
「そう? わかった。それなら配慮しておく」
それからミウと2人で放課後デートのプランを考えるのだった。




