第23話・制服と写真とキスと
「へー。それがお兄ちゃんの制服なんだ?」
俺の姿を上から下まで見るミウ。
茶色っぽいカーキ色のブレザーに、ズボンが紺色であることをのぞけば、普通の学生服だと思う。
ネクタイが赤色であるものの、これは俺たち新入生に割り当てられた色で卒業まで変わらないそうだ。
ちなみに、今の2年生が青で、3年生が緑らしい。
「何かおかしかったところある?」
「特にないよ? でも、お兄ちゃんが制服着ているのって新鮮で……」
対するミウはスカートを含めて紺色を基調としたセーラー服姿。
なのでもう見慣れたものだ。
ただ、それでもかわいいと思うので、偶に「今日もかわいいよ」とは口走っているけど。
前世だったら確実に通報されるだろう。
「じゃあ、記念に一緒に写真でも撮る? スマホ買った時に自撮り棒とかも買ってみたんだけど……」
「お兄ちゃん。なんか無駄遣いしていませんか?」
「自撮り棒ぐらいは大丈夫だろ? ささ、一緒に撮ろう?」
自分の部屋から自撮り棒を持ってきて、リビングの白い壁を背にミウと並んで普通に写真を数枚撮る。
「こんな感じ?」
「うん。そうだね」
確認してもらうが特に問題ないような感じだった。
制服姿の俺とミウが並んでいるだけの写真。
ただ、1枚目は俺もミウも目を閉じていたため削除。
2枚目以降は問題なかったのでそのままにする。
「じゃあ、2回目行くよ?」
「え? ちょっ――」
ささっと体をミウに寄せつつ腰に左手を回してミウを軽く抱き寄せるようにしてから数枚撮影。
「お、お兄ちゃんっ‼ きゅ、急に何して――」
文句を言うミウをよそに写真を確認。
目を大きく見開いて俺の顔を見上げているミウの姿が撮れた。
カメラ目線だが俺も自然に笑っているように見えるし、目も閉じていない。
「お、いい感じじゃん? ほら、ミウもいい感じで撮れてるよ?」
自分でも納得できるようないい感じに撮れたと思う。
ミウにも見せてみる。
「も、もう。変な写真撮らないでよ……」
「これくらいならいいじゃん? それとも恋人のように抱き合っているところでも撮る? あ、そうだ。ミウをお姫様抱っこするからそれ撮ろ?」
「……う、うん」
リビングにあったダイニングチェアを持ってくる。
ミウをお姫様抱っこしてから椅子に座って写真を撮ると、まるで恋人同士のような写真が撮れた。
ちょっと顔を赤くしてカメラ目線になっているミウがなんともいい感じ。
これはいいね。
先ほど撮った写真と一緒にミウの携帯に送信しておく。
「じゃあ、次はキスしている写真でも撮ろうか?」
「お兄ちゃん。それはさすがに駄目だよ……」
「えー……」
「もしも誰かに見られたらどうするの?」
「いいじゃん。見せつけておけば。“恋人でーす”って」
「駄目。それは駄目。真面目な優等生というミウのイメージが崩れるから駄目」
「そんなー……」
本当に駄目そうだったのでそれは諦めた。
ちょっと残念。
「じゃあさ。写真に撮らなければいいってこと?」
「ま、まあ、それなら……」
ミウのほっぺたにチュッと軽くキスしておく。
思ったよりももちもちしてた。
好き。
「ちょっ、お兄ちゃん‼」
「いいって言ったじゃん?」
「ま、まあ。それはそうだけど。ミウにもね? 心の準備ってのがあるんだよ?」
火照った顔をぱたぱたと手であおぐミウ。
俺もちょっと顔が熱い。
「じゃあ反対側にも……」
「だ、駄目だよ……」
「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せって言うじゃん? だからセットでね?」
「こ、今回だけだよ?」
反対側にもキスしておく。
ついでにおでこにも。
「も、もうっ。お兄ちゃんそれ以上やったら怒るよ?」
「ははは、ごめんごめん」
本気で怒りそうな気配があったのでキスはここまで。
『時間です、時間です――』
携帯のアラームが鳴った。
「あ、もうこんな時間に。じゃあ、行こうか?」
「う、うん。あ、お兄ちゃん――」
「ん?」
ミウを下ろそうとしたら、ミウの顔が目の前にあった。
そのまま唇にやわらかいものが当たる。
「お、お返しだよ?」
「ふふ。ありがと。好き」
下ろしてからミウをぎゅっと抱きしめておく。
「お、お兄ちゃん駄目だよぉ。これから学校っ。遅刻、遅刻しちゃうから――」
「わかってるって。ここまでね?」
それから戸締りを確認して家を出る。
ちょっとぐらいはいいかな?と思って、家を出た後に指を絡ませるようにミウと手をつなぐと、彼女もしっかりと握り返してきた。
ミウの顔をちらっと盗み見るも、顔を少し赤くしながらもまんざらでもない様子。
問題ないだろう。
いつもの大通りに出るところまでミウを送った後は、高校に行かないといけないので家には戻らず、近くのバス停に向かった。
学生割引が使えるので定期券を買ってみたけど、市バスの定期券は前世を含めて使ったことがない。
ちょっと不安だ。




