第22話・これからのこと
ベッドの中で今までのことを考える。
異世界転生してから、ミウとは良い関係を築けてきたと思ったが、探索者のことを相談したらこうなってしまった。
これが、この世界にある【探索者】と言う職業に対する評価なのだ。
インターネット上での評価はもちろん、AIですら「極めてリスクの高い仕事です」と注意喚起する職業。
現在は探索者に関する法整備や探索者向けの保険の販売なども行われているため、一定の基準はあるらしい。
でも、それでも一般的な職業と比べたら、十分劣る。
そして、この世界には魔法がある。
スキルもあるが、スキルに関してはその人の持つ技能や才能が目に見える形となっただけらしいので、ちょっと割愛するけど。
どちらにせよ、魔法がある以上、魔法による犯罪や事故も起きるのだ。
あくまでも体感であるが、前世にあった通常の事件事故に、魔法による事件事故が加わっているように感じる。
これで世界トップレベルの治安を持つのが日本なので、日本以外の地域ではもっと深刻だろう。
また、魔法による思いもよらない事故や事件もあるというか。
たとえば、「途中で魔力が切れて溺死したり墜落死する」とか、「魔法でスマホを充電しようとしたらバッテリーが破裂して怪我した」とか。
このほかにも、「風魔法で不特定多数の女性のスカートをめくって逮捕された」というものもあった。
それらからミウを守るためには力をつける必要があるのだ。
その点で考えれば、探索者という道は悪くないだろう。
何よりも力が必要だ。
転生する際にイザナミ様がチート能力を与えてくれなかったというのもある。
(なんか思ったよりもカオスな世界に転生してしまったのかもしれない)
最初は前世と似たような世界だなと思ったものの、意外とシビアな現実がそこにあった。
ちょっと怖い。
でも、この世界の住人たちにとってはこれが当たり前。
これは魔法の無い世界から転生してきた俺だからこそ言えることなのだ。
また、この世界には神様たちもいる。
そのうちの1人でも、神様が「なんか気に入らない」と動いたら、俺たち人間ではどうすることもできないだろう。
善い人間や悪い人間がいるのと同じように、神様にも善い神様や悪い神様がいるはずだ。
それなら、やっぱり神に対抗できる手段というか、神をも殺せるぐらいの力は持っておいた方がいいのかもしれない。
『だ、大丈夫だよ? そこまで心配しなくても……』
ふと何かにつながってイザナミ様の声が聞こえてきた。
頭を下げようとするも体が動かない。
『ですが――』
『あなたの懸念は十分理解しているわ。でも、大丈夫よ。私たちの正気は私たち神々が保証しているの。だから問題ないわ』
『……わかりました』
納得はできない。
しかし、イザナミ様にそう言われた以上は納得するしかないのだ。
そこは腐っても神ということかな?
『それと日本探索者育成高等学校に進学するでしょ?』
『はい。妹の反対がなければの話ですが……』
『あ、そうなの? この世界にあるダンジョンのことを伝え忘れてたからその話をするために連絡したんだけど、聞く? 学校に行かないなら言わなくてもいいかなって思ったんだけど……』
『いえ。話だけでも聞きます』
進学するかどうかはまず置いておいて、とりあえず話だけは聞いておいて損はないだろう。
『じゃあ、まずはダンジョンの成り立ちから説明するね? そもそもダンジョンってのは――』
――
翌日の朝。
ミューズリーにヨーグルトをかけたものというのは変わりない。
ただ、飽きるとあれなので、今日はバナナの代わりにサイコロ状に切ったゴールドキウイを加えたものとなっている。
熟して柔らかくなったゴールドキウイを使っているということもあるが、甘めで中々においしいと思う。
これがグリーンだと酸っぱいのが多くて微妙ってなるけど。
問題があるとしたら、一緒に食事しているミウの表情はちょっと暗いことだ。
やっぱり心配をかけてしまったのだろう。
「それでお兄ちゃん。昨日のことなんだけど……」
ミウがミューズリーを一口食べてから話しかけてきた。
「ああ」
「やっぱりミウとしてはお兄ちゃんに危険な目に合ってほしくないので反対です。でも、お兄ちゃんはそこに行きたいんですよね?」
「ああ」
彼女の目を見てしっかりと答える。
「……わかりました。ミウはお兄ちゃんを応援します。ですが、その代わりにお願いがあるのです」
「なんだ?」
「何かあったらミウに必ず報告することです。それなら妥協します。あとは、お兄ちゃんが進学してもミウを学校まで送迎をしてください」
「……わかった。報告に関しては探索者としての守秘義務があるからすべてを話すというわけにはいかないが、ミウの送り迎えはいつも通り約束する。これでいいか?」
なんか思ったよりも条件が優しかった。
たぶん、ミウなりに考えて出した答えがこれだったのだろう。
「はい。それならいいです」
「そうか」
「では、この話はここまでです」
それから朝食を終えて、ミウと一緒に皿を洗い、家を出る時間となった。
「そろそろ時間だけど大丈夫か?」
「うん――って、お、お兄ちゃん?」
玄関を出る前にミウを軽く抱きしめる。
温かい。
「学校のことで心配かけてごめんな。高校は学校に通いながら普通のアルバイトしていると思ってくれていいから。ミウが本当に嫌なら学校に行かないで働くけど、それでは駄目か?」
抱きしめたままミウに伝える。
「そ、それは駄目だよ。ミウのせいでお兄ちゃんが高校に通えないなんて嫌だし……」
「そうだろ? だから、この話はここでお終い。いいね?」
「う、うん」
腕を緩めてからミウと視線を合わせる。
自然と彼女の口元に吸い寄せられる。
このままキスしたい。
でも、さすがにそれは駄目だろう。
代わりに人差し指を立てる。
「ふふ。じゃあ、ミウに迷惑をかけたお詫びとして今日はケーキでも買ってきて食べさせてあげよう。どんなケーキが食べたい?」
「お兄ちゃん、無駄遣いは駄目だよ? いくらポケットマネーがあるからって、それだってもうあんまりないんじゃない?」
それとなくその顔色をうかがうも、普段と変わらないような様子に戻っていた。
良かった。
安心だ。
「ケーキぐらいなら買えるからへーきへーき。じゃあ、学校に行こうか?」
「うんっ。それでねケーキなんだけど、普通のショートケーキがいいな。それもホールのやつ」
「わかった」
そのままミウの手を取り、家を後にする。
ちなみに、4号サイズのホールケーキに苦戦して食べるのに2日もかかったというのはまた別のお話である。




