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異世界転生したら実妹ルートに突入しました~ただし、ハーレムは強制のようです~  作者: 朝霧雪乃


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第2話・実の妹



 すすり泣くような声だった。

 ふと目が覚める。

 白い天井。

 どうやら異世界に転生したようだ。

 声が聞こえる方を見ると、黒髪の女の子がうつむいていた。


(誰だろう?)


 紺色のセーラー服っぽい服。

 体格的に中学生、かな? 

 顔を上げた彼女と目が合った。


「お兄、ちゃん?」


 数回まばたきをした後、彼女がそうつぶやいた。

 涙と鼻水でかわいい顔が台無しになっているけど。

 何も言わず、ゆっくりと白い天井へと視線を戻した。

 すると、勢いよくティッシュを取る音と鼻をかむ音が聞こえて来たので、自分の顔がどうなっているのか気づいたのだろう。


「ここは?」


 ちょっと声がかすれた。

 見たところによると、病室のような白い部屋。

 でも、病院特有の消毒液の匂いは感じない。

 昔の病院だとそういう匂いがしていたのだが、新しい病院ではそうでもないらしい。

 父方の祖母が死ぬ直前に入院した病院がそうだった。

 病院だよねここ?

 コツ、コツと廊下から足音が聞こえる。


「な、ナースさんっ。お、お兄ちゃんがっ――」


 なんかパニックに陥ったように彼女が慌てて部屋から出て行った。

 そういう時はナースコールを押すものだと思うのだが……まあいいや。



――



(イザナミ様の言っていた通りか……)


 翌朝も同じ部屋で目が覚めた。

 どうやら夢ではないらしい。

 この世界での俺は0歳のころに出した原因不明の高熱が原因で、つい先日まで昏睡状態に陥っていたそうだ。

 15年も昏睡状態だった。

 それにもかかわらず、普通に立って歩けるし、会話もできる。

 本来ならばあり得ないことだ。

 お医者さんの話も「前例の無い奇跡に近い回復」と言っていたが。

 まあ、そこはイザナミ様がうまくやってくれたのだろう。

 俺の異世界転生は秘密ではないそうが、仮に言ったところで物的な証拠がないので信用されることはないらしい。

 なら、黙っていた方がいいだろう。

 ちなみに、トイレで自分の姿を確認したが、前世の若い頃の俺と同じだった。

 イケメンではないがブサメンでもない地味な顔に、黒い髪も茶色い瞳も変わっていない。

 高校時代の友人には「死んだ魚のような目をしているギャルゲーの主人公っぽい」と言われたことがあるが、特徴らしい特徴はそれぐらいだろう。

 名前も誕生日も前世と同じだし。


(これからどうすればいいのか……)


 病室から見た限りではあるが、文明レベルは中世ヨーロッパではなく前世の日本と変わらない気がする。

 これに関しては一言も説明がなかった。

 「妹を付ける」というのは聞いたけど。

 コンコンっとドアをノックする音が聞こえた。


「どうぞ」


 声をかけると、大きなビニール袋をガサガサと音を立てて持った女の子が病室へと入ってきた。

 腰まで伸びたストレートの黒髪をなびかせた少女。

 ランドセルを背負っていたら小学生と言われても納得できるけど。

 紺色に白いラインとスカーフのセーラー服なので中学生だ。


「お兄ちゃん。元気にしてた?」


 少し目じりの下がった、くりくりとした大きなおめめが特徴。

 美人というよりはかわいい感じの子。

 本人とお医者さんの話では、彼女は俺の妹らしい。

 まだ実感がないけど。

 名前はカタカナでミウと言うそうだ。

 約束は守ってくれたようだ。

 ありがとうイザナミ様。


「ああ。まあな」

「そ、それで頼まれてたお洋服なんだけど……」

「ああ悪い。そこにある長椅子の上に置いておいてくれ。あとで着替える」


 ちょっと警戒した雰囲気があるが、まあ仕方ないだろう。

 兄妹きょうだいとはいえ、俺はずっと意識がなくて寝たきりだったし。

 ベッドの隣にあった椅子に彼女が腰を下ろした。


「それでだ。両親のことは残念だったな……」

「う、うん」


 それは俺が目覚める前日のこと。

 インフルエンザによる合併症で両親が相次いで亡くなってしまったそうで、その報告中に俺が目覚めたというわけだ。

 まるで狙ったようなタイミングだが。

 たぶんイザナミ様の介入だろう。

 「デリケートな子」と言ってたし。

 まあ、唯一残された肉親が回復の見込みのない昏睡状態の兄だったら誰だって精神的に参ってしまうだろうな。

 しかも彼女の年齢は13歳。

 まだ中学1年生だ。

 多感な時期というか、思春期に入ったばかりだろう。


「それで退院なんだが。手続きが終わったら今日中には帰れるそうだ」

「そ、そうなんだ。意外と早いんだね」

「ああ。ちょっと無理してね。細かいことは医療ソーシャルワーカーに相談したから必要ならソーシャルワーカーさんに聞いてくれ。それと未成年後見人に関しては、両親が手配していた女性弁護士の田中さんにお願いすることになった。どちらも俺の一存で決めてしまったが問題はなかったか?」

「う、うん。大丈夫だよ」


 それとなくミウの顔色をうかがってみる。

 ちょっとこわばっているようにも見えるが、特に表情に変化はない。

 大丈夫かな?

 弁護士さんに関しては、今世の両親がそろって入院するとなった際に、「万が一のために」と母親が手配していた人らしいのだ。

 それからは児童相談所の職員からの話もあった。

 一時保護を含めて、施設での生活を強く提案されたものの、さすがにそれは嫌だったので丁重にお断りさせていただいた。

 たぶん、俺が異世界転生者でなければ、そのまま言い包められて施設に送られるところだっただろう。

 あと1日でも目が覚めるのが遅れていても駄目だった。

 ミウにも確認したがやっぱり施設には入りたくなかったみたいだし。

 あとは両親の遺体。

 今は弁護士さんが手配した葬儀屋が保管しているそうだが、ケチって通夜や告別式をしない直葬(ちょくそう)で処理することになった。

 この世界の両親には悪いけど、死んだ人よりも今生きている人のことを優先するべきだろう。


(まったく目が覚めたと思ったら、やることが山積みで死にそうだ……)



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