第18話・無事に妹をデートに誘えました
「ミウ。ちょっといいか?」
部屋をノックして開けた後、彼女に声をかける。
机に向かっていたので勉強中だったかな?
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「ああ。急で悪いんだけど、今週の土曜日って予定って空いてる? できれば丸一日なんだけど……」
「丸一日? 土曜日なら空いているけど、何かあったの?」
「うん。空いているなら一緒に水族館に行かない? 場所はここなんだけど……」
ショッピングセンターでもらってきた水族館のパンフレットをミウに渡す。
両親が死んでからまだ1か月もたっていないが、息抜きとしてはちょうどいいだろう。
「水族館?」
「うん。そうだけど。もしかして駄目だった?」
ミウに問いかけながら、その顔色をうかがうものの、目をぱちくりさせてどこか困惑しているように見えた。
かわいい。
だからミウとデートがしたい。
「ミウ、もしかしてお兄ちゃんからデートに誘われていますか?」
「うん。水族館デートってやつ。お昼は近くの喫茶店かどこかで食べようと思ったんだけどそれでいい?」
「う、うん。それでいいよ? でも、急にデートなんてどうしたの?」
「ああ。今日なんだけど、ショッピングセンターに買い物に行ったら水族館のパンフレットが置いてあってさ。ミウと一緒に行ったら楽しいかな?って思って誘ってみたんだけど、どうかな?」
「うん。行くっ。絶対に行くよ、お兄ちゃん」
弾んだ声と一緒に、彼女の顔がパッと花が開くように輝いた。
実の妹をデートに誘うなんていう兄は世界を探しても俺ぐらいだと思うけど、何よりも妹がかわいいのでヨシ。
――
「デート、デート。お兄ちゃんとデートっ――」
なんかミウのテンションが高かった。
学校が終わって家に着いてから、落ち着かずにそわそわしている。
おかげで「明日のデートは絶対に成功させなければ」という密かなプレッシャーを感じるけど。
「大丈夫かミウ? 夜寝れる?」
「うん。大丈夫っ――」
にこやかな笑みを浮かべるミウ。
まるで遊園地にでも遊びに行く小さな子供みたいなはしゃぎっぷりだ。
普段の落ち着いた姿がどこに行ったのやら。
両親が死んだ後にミウが倒れたこともあり、なるべく精神的なケアを心掛けているつもりだが、これなら積極的にデートに誘った方がいいのかもしれない。
「はしゃぐのはいいが、ちゃんと朝起きれるようにしろよ?」
「何を言っているんですか? ミウがそんな子供のような失敗をするわけがないじゃないですか?」
「そうか?」
「それよりもお兄ちゃんの方が心配です。寝過ごしたり、すっぽかしたりしないですよね? 男性にはそういうのが多いって聞きました」
「ははは、まさか……」
ちゃんと目覚ましもかける予定だし、いつもと同じ時間帯に起きれば問題ない。
前日に出来る準備はしたし、あとは寝るだけだ。
「じゃあ、ちょっと早いけどお風呂に入って寝るか……」
「そうだね。じゃあ、先にミウが入るね?」
「わかった。お風呂から上がったら声をかけてくれ」
「うん。あ、お兄ちゃん。のぞいちゃ駄目だからね?」
「はいはい」
冗談交じりにミウがそんなことを言ってきたので適当にあしらいつつ、リビングから自分の部屋へと戻った。
さすがにお風呂をのぞくのは無理があるだろう。
曇りガラスなので、のぞこうと思ったらその姿がばっちりと見えてしまうのだ。
風呂場にある窓からなら出来そうだが、近所の目もある。
何よりも家に取り付けたセンサー付きの防犯カメラに不審者として映ってしまうし。
それなら一緒に入った方がいい気がする。
(さてと……)
馬鹿なことを考えてないで勉強でもするか。
特別支援学校の先生から、基礎的なものは習ったものの、あくまでも知識だけだ。
魔法は予期せぬ事故を起こしやすいことから、実技に関しては専門の施設で行わないといけないらしい。
家から少し距離はあるが、魔法の練習を行う民間施設もあるそうなので、今度行ってみようと思う。
事情を説明すれば、サポートスタッフもつけてくれるらしいし。
それと、例の探索者高校。
念のため、連絡して事情をかいつまんで相談してみたら、物は試しにと入学試験を受けることになったのだ。
正直、そこまで高校に進学したいというわけではないので、この試験の合否で決まる。
もしも不合格だったらそのまま働こう。
正社員は難しいと思うが、アルバイトぐらいなら余裕でできるはずだ。




