第15話・朝食は妹と共に
「なんか外国人が食べてそうな朝食だね?」
ヨーグルトをかけたミューズリーをスプーンですくうミウ。
ミューズリーというのは、オーツ麦にドライフルーツやナッツなどを混ぜたもので、砂糖や油をほとんど加えないのが特徴らしい。
商品によっては砂糖や蜂蜜などが使われているものがあるけど。
今食べているものは、それらを使っていない素朴な味わいのもの。
さすがに甘さが足りず、輪切りにしたバナナを添えて、そのうえから純粋はちみつをかけたけど。
「そうか? でも、パンだけよりはいいんじゃないか? 栄養も取れるし」
「そうだね」
正直に言えば、グラノーラに牛乳をかけたほうが楽だし、食べやすいし、お財布にも優しい。
でも、健康的な食事としてはこちらの方が良いそうなのだ。
「ミウ、ちょっとこういう食事に憧れてたんだよね。お父さんもお母さんも朝は和食派だったからさ。朝からごはんとみそ汁に焼き魚とか、納豆はちょっときつくて……」
「あー、なるほど。俺も苦手だな。パスタとかだったら普通に食べれるんだけどな……」
「そうなの?」
「ああ。乾麺のやつ。茹でるのに10分ぐらいかかるけど、レトルトや瓶詰のソースとか使えば簡単に作れるし、何よりも非常食にもなるからね」
前世で1人暮らししていた時はよくお世話になった。
水を節約するためにも大きめのフライパンで茹でてたし。
ただ、安いソースはまずいものが多いから、ソースには一定のお金をかけた方がいい。
「へー。そうなんだ。じゃあ、今度作ってよ」
「ああ。今度じゃなくて今日の夜にするか?」
「あ、いいの? わかった。じゃあ、楽しみにしてるね?」
なら、ちょっと気合を入れて作らないとな。
そんな会話をしながら朝食を終えた後は、身支度を整える。
そして、家から出る時。
玄関にある全身鏡で自分の姿を見ている制服姿のミウを見ていたら、なんか抱きしめたくなった。
「ミウ」
「あ、お兄ちゃん……」
一歩前に出て振り返った彼女を軽く抱きしめる。
軽めのハグ。
本当だったら、ぬいぐるみを抱くようにぎゅっと抱きしめたかったけど。
ハグもセクハラに該当するのだ。
本当は事前に許可を取らないといけない。
自分でもなんでハグをしたくなったのかがわからないけど。
「ど、どうしたの急に?」
顔を赤くしながらもミウが不思議そうにこちらを覗き込んでくる。
「ごめん。かわいかったから我慢できなくてつい」
「そ、そう?」
しきりに耳に髪をかけるミウ。
そんな仕草もかわいい。
「それで準備できた?」
「う、うん」
「じゃあ、行こうか?」
「わかった」
それとなくミウの手を取って家を出た。
――
「お、お兄ちゃん。そのね。手なんだけど……」
「あ、もしかして嫌だった?」
家を出てすぐにミウに指摘された。
「う、ううん。そういうわけじゃないけど。お兄ちゃん、その、恥ずかしくないの?」
「え? うーん。言われてみれば恥ずかしい?」
鏡があるわけではないのでちょっと自分の顔がどうなっているのかよくわからない。
恥ずかしいのかなぁ?
それよりも一緒にお出かけしているような感じで楽しい気がする。
「疑問形……」
「あっ。もしかして恥ずかしかった?」
ミウに聞き返す。
嫌がっているという素振りはないけど。
顔はちょっと赤いね。
「え? いや、そういうわけじゃないけど。その、あまりにも自然にお兄ちゃんがミウの手を取るから……」
「そう? でも、手をつないで登校ってのもやってみたかったからね」
ぱっと思いついたことを口にする。
言ってから気づいたが、前世ではできなかったことでもある。
妹相手だからノーカンって言われるかもしれないけど。
「そ、そうなんだ。お兄ちゃんがなんか楽しそうにしているからさ」
「そう?」
「実の妹の手を引いて楽しい?」
「うん。楽しいよ?」
だって前世ではできなかったことだからね。
こんなかわいい妹いなかったし。
「ミウは?」
「え? ミウは、その、楽しいのかな?」
ワンテンポ遅れて首をかしげるミウ。
かわいい。
「それにね。本当だったら子供のころにこういうことをやると思うんだけど、俺の場合は昏睡状態だったじゃん? だからその代わりというわけじゃないけどね?」
「そ、そっか……」
それからミウの手を引いて、いつもの場所まで彼女を送った。
今日はリハビリがあるため、家には戻らず俺が入院していた病院へと向う。
問題がなければ今日でリハビリが終わるらしいが。




