第14話・添い寝
「え、一緒に寝るの?」
それは理性をフル動員したお風呂を終えた後のことだった。
なんか「今日は一緒に寝たい」と言い出したのだ。
「うん。駄目?」
まるで俺の弱点を知っているように上目遣いでミウがそう言う。
そんな目で言われたら一緒に寝るしか選択肢ないじゃん?
「わかった。それで今日はどっちの部屋で寝るんだ?」
「今日はお兄ちゃんのお部屋がいいな?」
「わかった。準備するから少し待っててな?」
準備と言ってもベッドメイキングなどは済ませているのでトイレを済ませたりするだけ。
そして、ミウを先にベッドに入れてから俺も入る。
ベッドで寝るのはいいが、1人用だ。
ベッド柵もない。
寝相次第では落ちる可能性がある。
だから、ミウを壁側にして寝ることにした。
ベッドに入ったらミウが普通に抱きついてきたので思わずドキッとしたけど。
お風呂上がりのいい匂いがミウからしてくる。
下半身がつい反応してしまうが、先ほどトイレで手早く処理してきたのに、何で当たり前のように元気になっているんですかね?
「じゃあ、電気消すぞ」
「うん」
リモコンを操作して電気を消す。
さすがに1人用のベッドなので狭い。
ミウと一緒になることを考えると、ダブルベッドでも注文した方がいいのかもしれない。
「真っ暗になっちゃったね?」
ミウがつぶやく。
枕を持ってこなかったのは最初からこれが目的だったのかもしれない。
「そうだな」
「お兄ちゃんの心臓の音が凄いよ? 実のいもーと相手なのにドキドキするの?」
「当たり前だろ。妹である前に女の子だからな。てか、普通はこんなことしたら駄目なんだぞ? それとも普段からこんなことをしてたのか?」
「し、してないよ。お兄ちゃんだからしてるんだよ?」
「そうか?」
「ふふ、そうだよ。お兄ちゃんだけだよ? 安心した?」
「う、うん」
その言葉に安堵するが、なんか立場が入れ替わってしまった。
「そう言うお兄ちゃんこそ、普段からこういうことをしてたんじゃないの? 本当に初めてなの? 髪をとかしたりするのも妙に慣れてなかった?」
「そうか? でも、ミウ以外にやる相手がいないのはミウが一番よく知っているだろ?」
「それはそうだけど。なんか納得いかないー」
ミウが不満そうな声を出す。
「それよりも明日に響くから早く寝るぞ?」
顔を寄せておでこに軽くおやすみのキスをしておく。
「お、お兄ちゃんっ‼」
ミウがびっくりしたような声を出した。
暗くてわかりにくいが、きっと顔を赤くしているのだろう。
「うるさいぞ」
「むー。お兄ちゃんが悪いんだもん。いつもミウをドキドキさせて、それでいて自分はしれっとしてるんだからずるい。このシスコンー」
なんかミウから怒られた。
左胸のあたりを頭でぐりぐりされるがこれはこれで嫌いではない。
「はいはい。寝るぞー」
適当にあしらってから眠りについた。
――
「……っ!」
不意に呼吸が止まったと思ったら目が覚めた。
ミウと目が合う。
妙に顔が近い。
「ミウ?」
「お、おはよ。お兄ちゃん」
そう言えば昨日は一緒に寝たんだっけ?
「お、おはよう」
キスが出来そうなほどの距離で目が覚めたこともあり、ちょっと恥ずかしかったのかちょっと頬を赤く染めていた。
ミウが覆いかぶさるように乗っていることもあり、ものすごく元気。
何がとは言えない。
ミウも気づいているとは思うが、指摘されないのでこちらも指摘しない。
若くなったのはいいが、普通に性欲を持て余しているのでちょっと困るんだよね。
彼女のおかげで処理する回数が1日1回増えたし。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや、今日もかわいいなと思って」
「お兄ちゃん……」
ミウがじとーっと目を細めて見てくる。
俺の妹かわいすぎ。
「ミウ。お兄ちゃんの将来がすごく心配。いつか後ろから刺されそう」
そこまで心配されるようなことはしていないと思うんだけど。
「ほら、そんな馬鹿なことを言っていないでそろそろ起きるぞ?」
「えー……」
「二度寝したら遅刻するだろう。俺は学校に行ってないからいいけど、ミウは優等生なんだろ?」
ミウの頭をぽんぽんっと撫でながらミウに言い聞かせる。
正直、ミウと同じ中学校だったら仲良く通ったけど。
俺の場合は事情が事情だけに、隣町にある特別支援学校に籍があるのだ。
無理を言えば、ミウと同じ中学校に通うこともできたらしい。
ただ、当時の俺は退院を優先していたため、そのことが頭になく、普通に特別支援学校に籍が移った。
今さら転校するも面倒臭いし、家事や買い物もあるのでこのままでいいと思う。
一応、「自宅からの通学が大変でー」と学校の先生と相談したら、卒業まで自宅療養という形になった。
おかげで比較的自由な生活を送ることが出来ている。
それでも週に2回は、担当の先生がうちに来て2時間ぐらいは一緒に勉強したり、一般常識を教えてくれるけど。
「お兄ちゃんの意地悪ー」
「ふふ。じゃあ学校に行く前にハグでもする? それとも仲良く手をつないで登校する? それともおはようのキス?」
「だからそういうのだよ……」
冗談交じりに声をかけると、ミウは呆れたような表情を浮かべていたのだった。




