第13話・相思相愛
ミウにクッキーを口移しした翌日。
お風呂に入るまえにちょっとトイレで手早く処理したので事故は起きなかった。
そう、事故は起きなかったけど。
精神はごっそりと削られた。
「えへへ、お兄ちゃん。ミウのこと好き?」
抱っこしたミウからそんなことを聞かれた。
あれ以降、なんかミウがますます甘えてくるというか、いつの間にか重度のブラコンを発症していた。
「うん。好き」
短くとだが、はっきりと返しておく。
俺もシスコンが重症化しているけど、これは元からなので問題ない。
「それでぇ。お兄ちゃんはミウのことが好きなんだよねぇ?」
「うん、愛しているよ?」
「あ、愛――ミ、ミウもお兄ちゃんのこと好きだからね?」
しどろもどろになったミウから言葉を返された。
「うん。ありがと」
それからは特に何もすることなくミウとの2人だけの時間を過ごす。
偶にスマホを見たり、おやつとして用意したサブレを食べたりするぐらいだ。
クッキーに近い見た目だが、こちらは砂のようなザクザクっとした食感が特徴のお菓子。
「どうしたミウ。食べないのか?」
視線を感じたので彼女を見ると、目が合った。
俺と同じ茶色い瞳。
くりっとしたたれ目がかわいい。
「ミウも食べる」
そう言うものの、サブレに手を伸ばす気配が一向になかった。
たぶん食べさせてほしいのだろう。
空気を読んで彼女が食べやすいようにサブレをパキッと半分に割る。
「はい、あーん」
半分に割った方をミウの口に運ぶ。
「ん」
するともぐもぐと小動物のように食べ始めた。
かわいい。
まるで幼い子供のようだが、これはこれで俺も楽しい。
「あーん」
残ってた方のサブレをミウの口に追加する。
「ふぉーひー」
「わかった」
ピンク色のマグカップを口に持って行くものの、なぜか首を左右に振った。
「お兄ちゃんのがいい」
「もう口を付けたんだけど……」
「でも、そっちのほうが飲みたいんだもん。ミウ、知ってるよ。お兄ちゃんがこっそりミウが飲み残したやつとか食べ残しに口を付けてるの」
「うっ、それはその……」
どうやらばれていたようだった。
さすがに吐き出したようなものは食べていないけど、綺麗そうなものならやっている。
だって捨てるのももったいないし。
他人だったら嫌だけど、ミウなら特に問題ないし。
ピンクのマグカップを青いマグカップに交換してミウの口に持って行く。
「少しは冷めたと思うけど、気を付けてな?」
「じゃあ、ふーふーして」
仕方ないのでふーふーと息を吹きかけてから、マグカップを口元に持って行くとずずずっと一口飲んだ。
「うへぇ、これ苦いぃ。いつもの甘いやつは?」
「今日はサブレ食べてるからいいかなって……」
だからミウのとは違って砂糖もミルクも入れていない。
「いつもの甘いやつが良かったのに。ミウのやつにして」
「わかった」
子供のように口をとがらせるミウ。
仕方ないので彼女のマグカップに交換してまた一口飲ませた。
「ふふ。これでお兄ちゃんはミウが口をつけたのを飲むしかないね?」
からかうようにミウが言う。
こいつめ。
わざとミウが口を付けたところに口を付けて飲んでみる。
いわゆる間接キス。
味は変わらないのだが、どこか幸せな気分になれる。
それが一方的なものだとわかっていても。
いや、一方的だからか。
妹がかわいすぎてちょっと病みそう。
「今はこれで我慢しておく」
「そっか。ふふ。お兄ちゃんがミウのお兄ちゃんで良かった」
「そう? 実の妹に興奮する変態なお兄ちゃんでも?」
ミウを抱っこしてからずっとあれが反応している。
彼女もわかっているような雰囲気だったので、そこはあえて指摘しないけど。
「うん。ミウは優しいお兄ちゃんが欲しかったから」
「そっか。今まで苦労をかけたな」
軽くミウの頭を撫でる。
罪滅ぼしというわけではないが、ちょっとぐらいは甘やかしてもいいだろう。
「お兄ちゃん。今、サブレを触った手でミウの頭を撫でたね?」
「え? あっ。ごめん――」
かわいかったからついやってしまった。
そこまで汚いというわけではないがミウの髪にサブレの油がついてしまったかもしれない。
「じゃあ、罰として今日もミウの髪を洗ってね? さ、食べ終わったら一緒にお風呂に入るよ。お兄ちゃんっ――」
「わ、わかった」
ミウの髪を油で汚してしまったので仕方ないだろう。
それからおやつを食べ終え、お風呂へと向かうのだった。




