第10話・情報収集と日常へ
(さてと……)
自分の部屋に戻った後は、通販で購入したノートパソコンを起動して情報収集を再開する。
前世で使ってたものと同じものを購入したが、パソコンのOSやキーボードの配列などは前世と同じ。
俺が転生した世界は、魔法と魔力がある世界なのだが、前世と同じぐらい科学技術が発展しているため、どこがどう違うのかがわからない。
ほぼ間違い探しレベルだ。
自分の容姿も若くなったことをのぞけば前世とほぼ同じだし。
不細工さを売りにする芸人ほど顔は悪くないが、だからと言って映画やドラマに出てくるイケメン俳優ほど顔が良いというわけではないらしい。
前世のクラスメイトの女子やアルバイト先の女性たちからは陰でそんなことを言われていた。
まあいい。
とある高校の公式サイトへとアクセスする。
「日本探索者育成高等学校ねぇ……」
机の引き出しに入っていた入学案内パンフレットと入学願書。
俺の場合は異世界転生者という事情に加え、生活費の問題から高校に進学する気はなかった。
けど、これらが引き出しに入っていたということはここに進学しろということだろう。
しかも、それだけではない。
前世で使っていた俺の預金通帳や印鑑に、調理師免許や運転免許証までもが入っていたのだ。
預金を確認してみたら前世で俺がためてた金額と同じ100万円。
「チート能力の類はない」とイザナミ様は言ってたが、どうやらこれらに関しては引継ぎにしてくれたようだ。
ありがたい。
家捜しした際に見つけた家計簿も見てみたが、俺の口座にお金を入れた形跡がなかった。
だからイザナミ様が手配してくれたのだろう。
ノートパソコンや衣服、日用品などに使ってしまったので、今は80万ぐらいしか残っていないけど。
両親が死亡したことで口座が凍結されており、今は手続き中。
遺産が入ってくるのにも数か月はかかるそうなので、俺名義の口座に自由に使えるお金がまとまって入っているというのは本当に助かった。
また、調理師免許や運転免許証に関しては、特例での交付らしい。
念のため、弁護士を通じて確認したし、担当部署に直接電話して聞いた。
理由は教えてくれなかったけど、交付されているのは事実なので問題ないそうだ。
(問題があるとすれば今は使えないということだけか……)
椅子の背もたれに寄りかかって天井を仰ぎ見る。
資格はあるんだけど、現時点では有効になっていない。
前世で俺がこれらの資格を取得した年齢からだ。
どちらとも、18歳の時に取得したもの。
特に調理師免許は大きかったというか、この資格のおかげで児童相談所から「生活能力がある」と判断されたのだ。
おかげでミウとの2人だけの生活が送れているし、未成年後見人の弁護士もいるので特に支障が出ていない。
携帯電話とかの契約では必要になるけど。
たぶん、イザナミ様が配慮してくれたのだろう。
(何から何までご配慮感謝します)
とりあえずその場で手を組んで祈りを捧げておく。
キリスト系に近いお祈りの仕方だけど問題はないだろう。
――
翌朝、玄関で登校前の最終チェックをする。
改めてミウの制服姿を見るが、ミウの動きに合わせてひらひらとスカートが揺れるのはかわいい。
「どうしたのお兄ちゃん? もしかしてミウの服に何かついている?」
「いや。その制服も似合っているなと思って。かわいいよミウ」
紺色の標準的なセーラー服だけど、美少女が着るとやっぱり絵になるなぁ。
「あ、ありがと……」
素直な感想を口にすると、ミウが視線をそらして少し頬を赤くした。
「じゃあ、そろそろ行くか」
「わかった」
それから自宅を出て中学校に向かう。
ミウが病み上がりということもあるが、さすがに女の子を1人で歩かせるのはちょっと不安だった。
彼女に聞いたところ、仲の良い友達はいるものの、帰る方角が違うため、学校で別れるそうだ。
そのため、一緒に帰るような人はいないらしい。
彼女の歩幅に自分の足を合わせながら、車道側を歩いていると大通りに出た。
名残惜しいが俺が送るのはここまでだ。
個人的には中学校まで送ってもいいと思っているが、それだとミウと学校に迷惑がかかりそうだったので、事前に決めたこの場所までにしておく。
「帰りは大丈夫か?」
「あー、うん。たぶん大丈夫だと思う」
「わかった。念のために聞いておくけど、帰りの時間って何時ごろになりそう?」
「帰りの会とか掃除で遅くならなければ、16時前には帰れると思う」
「わかった。帰りもこのルート?」
「うん。コンビニとかに寄らなければこっちかな」
「わかった。じゃあ、学校頑張ってな?」
「う、うん……」
ミウを見送ってから帰路に就く。
本当ならスーパーに寄りたかったが、この時間帯は開いていないので寄り道はしない。
前世では、車での移動が基本だったため、こういう時に不便さを感じる。
年齢制限でそれが使えないことを考慮すると、買い物に関しては素直に宅配を利用した方がいいのかもしれない。
それに定期的に運転しないと腕がなまるから、どこかで車を運転できる場所があればいいんだけど。
――
今朝ミウと別れた場所でミウを待っていると、彼女が歩いてきたのが見えた。
ミウも途中で俺の存在に気づいたようで、ちょっと小走りで駆け寄ってきたけど。
思わず俺も駆け寄ってしまった。
「走って大丈夫かミウ?」
「う、うん。お兄ちゃん、もしかしてここで待ってたの?」
ミウが息を整えながら言葉を返してきた。
「ああ。ちょっと気になったからな。今日の学校は大丈夫だったか? 具合とか悪くなってない?」
「う、うん。すごく久しぶりに感じたけど、大丈夫だったよ?」
「そっか」
ミウを送る前に学校に連絡して事情を軽く説明しておいたので、そこまで無理はさせていないと思うけど。
彼女の様子を見る分には大丈夫かな?
「ごめんね、気を使わせちゃって……」
「いや、これくらい大丈夫だ。それよりも帰るか? それともどこかに寄る?」
「あー、そうだね。特に買い物する予定もないし、今日はこのまま帰りたいかな? お兄ちゃんは?」
「俺の方も買い物とかは午前中に済ませたから大丈夫かな。じゃ、このまま帰るぞ?」
「う、うん」
それからミウと並んで自宅へと戻った。




