夜空に広がる巨大な亀裂。
夜空に広がる巨大な亀裂。
そこから降り続ける黒い影。
街の人々は逃げ惑い、警鐘が鳴り響く。
さっきまでの楽しい歓迎会は、一瞬で戦場へ変わっていた。
春は世界樹剣を抜く。
「みんな、避難を!」
ガルドが怒鳴る。
「住民を地下区画へ急がせろ!!」
レオナは槍を回した。
「また祭りの後に戦闘かよ!」
「嫌なイベント多すぎるでしょ!!」
結衣は震えていた。
魔導書を抱えながら、涙目になる。
「私のせいだ……」
春はハッとする。
結衣は、自分を責めていた。
自分が来たせいで。
また敵が現れたんだって。
春は結衣の前へ立つ。
「違う」
結衣が顔を上げる。
春は真っ直ぐ言った。
「結衣のせいじゃない」
「でも……!」
「俺も最初、そう思ってた」
春は少し笑う。
「異世界に来たせいで、みんなを危険に巻き込んだって」
結衣は黙る。
春は空を見る。
黒い空。
怖い敵。
何度も逃げたくなった。
でも。
「助けてくれた仲間がいた」
春は結衣を見る。
優しく。
「だから今度は、俺が支える」
結衣の胸がドキッとした。
街の灯り。
剣を握る春。
真っ直ぐな目。
学校では見たことない顔だった。
結衣は小さく呟く。
「……ずるい」
「え?」
「春くん、そんなかっこよかったっけ」
春が真っ赤になる。
「なっ!?」
レオナがニヤァっと笑う。
「おぉ?」
ミアもニヤける。
「青春だ」
「今それ!?」
結衣は恥ずかしくなって顔を隠した。
でも。
少しだけ、怖さが消えていた。
その瞬間。
空から巨大な魔物が降ってくる。
──ドォォォン!!
四本腕。
黒い翼。
深淵の紋章。
リリィが涙目になる。
「強そうですぅぅ!!」
敵は春たちを見下ろした。
『星花の巫女、回収』
結衣が震える。
春は剣を構えた。
「やらせない」
敵が笑う。
『人間風情が』
次の瞬間。
黒い衝撃波。
春は結衣を抱き寄せた。
「伏せろ!!」
──ドォォォン!!
爆風。
結衣は春の胸へ抱き込まれていた。
近い。
心臓の音が聞こえる。
結衣の顔が真っ赤になる。
「は、春くん……」
春も気づいて固まる。
「あっ」
レオナが爆笑した。
「戦場でイチャつくなぁぁ!!」
「違うって!!」
ミアも吹き出す。
「余裕あるねぇ」
ゼルヴァだけは真顔だった。
「敵が来るぞ」
「温度差!?」
魔物が再び突撃してくる。
だが。
その時。
結衣の魔導書が光った。
《共鳴率上昇》
春の世界樹紋章も反応する。
虹色と金色の光。
二つの紋章が共鳴し始めた。
ミアが目を見開く。
「まさか……!」
結衣の杖へ、花びらみたいな光が集まる。
春の剣にも、星みたいな光が混ざった。
そして。
二人の周囲へ、巨大な魔法陣が展開される。
結衣が驚く。
「なにこれ!?」
オメガの残されたシステム音声が響いた。
『世界樹と星花の同調確認』
『双花接続、開始』
その瞬間。
春と結衣の意識が、一瞬だけ繋がった。
結衣の不安。
怖さ。
寂しさ。
全部伝わってくる。
同時に。
春の想いも流れ込む。
守りたい。
大切にしたい。
失いたくない。
結衣の胸が熱くなる。
春も息を呑んだ。
「結衣……」
結衣は春を見た。
そして。
小さく笑う。
まだ怖い。
でも。
一人じゃない。
「……一緒に戦う」
春も笑った。
「ああ!」
その瞬間。
二人の光が重なる。
巨大な花の紋章が、夜空へ咲き誇った。




