使い魔
使い魔契約の光が収まると、人間離れした美しい容姿の男性が跪いていた。
「誰ぇええええええええ!?」
その背後には絵に書いたような緑髪の美青年と美少女、さらに将来絶対美形になるであろう容姿の幼児、総勢40名程が頭を垂れていた。一見するとエルフっぽい見た目で、耳が尖っている髪が緑の美形集団である。
「貴方様の使い魔となったものでございます。」
なんと跪いていたのは先程戦ったゴブリンだった。
確かに先頭で跪くゴブリンロードを見ると、顔に斜めに刻まれた古傷の跡はそのままであるが、むしろ美貌と雄々しさが共存しているせいでミステリアスな魅力を放っていて、乙女にとっては危険すぎる。
どうやら私は、先程の謎の魔法陣によってゴブリンと使い魔契約をしてしまったらしい。アイカの推測だと、あの魔法陣には魔物を使役する為の何らかの術式が刻まれていたのだろうという事だった。
そこまでは理解出来たが姿が変わっているのが謎すぎる。
そう思って聞いてみる。
「えっーと…君はなんで姿が変わったの?進化したから?っていうかなんで進化したの?」
「使い魔契約とはそういうものでございます故。」
彼は少し困った顔でそう答えた。つまり理由はよくわからないけどそういうものらしい。
それにしても、ここまで見た目が変化するなんて、さすがファンタジー。
(魔法ひとつでカリスマ美容整形外科医も真っ青の変身ぶりだね。)
種族もゴブリンからハイゴブリンに変わったようだ。
「聞きにくいんだけど君はさっき私と戦ったゴブリンロードで間違いないかな?」
「左様です。
…我が主よ、よろしければそろそろ名を与えていただけないでしょうか。」
ハイゴブリンロードは私の質問を肯定した後、名が欲しいと懇願する様なウルウルとした瞳で訴えてきた。
(そんな顔で見つめられるとヤバい。輝いてみえる。)
「マスター、ゴブリン達が消えそうです。」
アイカの言葉に私はハッとした。
輝いて見えていたのは気のせいではなかったようで、ゴブリンの身体から光の粒子が湯気のように立ち上り、徐々に透けはじめた。
(ほんとに輝いてた!消えちゃう!!)
切羽詰まった様子で説明をするハイゴブリンロード曰く、使い魔契約には名付けが必要で名付けをしないと、契約が失敗となりゴブリンは消滅してしまうらしい。
(っていうか進化までしたのに今更失敗とかひどい。)
そんな理不尽なことにならないように、私は慌てて名前を考えた。アイカにおんぶに抱っこで、衰えきった脳みそをフル回転させる。
「えっーと名前ね!
名前名前んー!!」
そんな急に聞かれても思いつかない。あぁどうしようと悩む間にもゴブリン達は薄くなっていく。
ゴブリンゴブリンゴブリンロードとブツブツ唱えながら考える。
「思いついた!ゴブローで!
あなたはゴブロー!」
なんて酷いネーミングセンスなんだと、春夏の指に嵌められた指輪プロフェスが思っていると。
「──なんと素晴らしい!!!!!
このゴブロー、貴方様に生涯お使えさせて頂く所存です!」
ゴブローは喜びにうち震えるといった様子で一瞬目を瞑った後に、そう言って感謝の言葉を述べた。
「次の人の名前はどうしようかな。」
「あの・・・マスターよろしければ私が・・・。」
「その手があった!」
春夏の衰えた脳を活性化させる千載一遇の好機は、あっさりと失われていくのであった。
もちろんアイカとしては、これ以上春夏のネーミングセンスの被害者を増やさないための図らいでもあるのだが。
──こうしてハイゴブリンロードことゴブローと、ハイゴブリン族総勢40名が春夏の仲間になったのであった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
第三章 『ゴブリンとの戦い』 完結です。
第四章は『獣人国家ユグドラシル』です。
次回、世界樹。




