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将来の夢は魔王になることです!  作者: 月之木ゆう
第三章 ゴブリンとの戦い
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ゴブリンロードの覚醒

ゴブリンロードは他のゴブリンと全く別の種族なのではないかと思えるほどの強者だった。

アイカの魔法で今は動きを止められているものの、正直アイカの魔法だけが頼りな状況だった。


「やばいかも・・・」


私がこの後の展開を想像して息を飲んだ。


「マスターの敵は私が倒します!」


そういったアイカが決意に満ちた目でチラリと春夏を見た後、再びヒビ割れた氷の柱に目をやった。私もそちらを注視すると、ゴブリンロードを捉えた氷の牢獄に入った亀裂は徐々に広がっていた。


私とアイカが視線をかわす。


「マスター、少しだけ時間を稼げますか?」


アイカが放った言葉はそれだけだったが、アイカが何をしようとしているのか私には分かった。

アイカはこれから大規模魔法の詠唱に入るのだ。



「任せて!」


──ジョブチェンジ──パラディン


瞬間、私の身体は光りに包まれると同時に装備が切り替わった。


右手には片手剣、左手には身長くらいの大盾、身にまとうのは銀色の鎧だ。右手の片手剣の刀身には風属性のルーン文字が刻まれておりうっすら光っている。その効果は風属性追加ダメージの発生で、攻撃力の低い盾職であるパラディンの弱点を手数で補う優秀な効果だ。


左手に構える聖女の大盾、その中心には3つの宝石がはめ込まれており、宝石1つ毎に1回どんな攻撃も防ぐ能力がある。かなり大きいので、前方に構えてしゃがめば盾の後ろに完全に隠れることも可能だ。そして盾と統一されたデザインの鎧は銀色の全身鎧で胸元に青い宝石がはめ込まれている。頭装備はデザイン性重視のシンプルなサークレットだ。

この装備一式のシリーズ効果は一定レベル以下の遠距離攻撃の無効化である。


ジョブチェンジを終えた春夏がアイカの一歩前に立ち、盾を構える。


「なにか来る!」


獣人たちもそれを感じ、彼女の後ろまで後退する。


直後、ゴブリンロードを捉えた氷の牢獄の亀裂から黒く禍々しい"何か"がにじみ出てくる。

ドロリと這い出るようにして飛び出したそれは、仲間であるはずのゴブリンに掴みかかった。


「ギャガアアアァァ・・・!」


ゴブリンの不快な断末魔に、私は思わず目を瞑った。

しかし戦闘中であることを思い出しすぐさま目を開ける。

すると黒い"何か"に掴まれていたゴブリンは体中の水分を抜かれたように干からびていた。


その瞬間──

──ゴブリンロードがまとう闇の力が増大し、氷の牢獄に大きな亀裂が入る。


干からびた死体を放したそれは、次々に残された仲間のゴブリンを吸収していく。5匹目の干からびたゴブリンをホオリ投げる頃には、胸部から始まった鎧の成長は胴体の7割程を覆う勢いだった。よく見ると、その鎧に触れたところから徐々に氷の牢獄が解け始めていることに気づいた。


ピキ・・・パキパキパキ・・・バキンッ!!!


氷による拘束が解かれていくのを見つめながら、私は盾を握る手に力を込めた。


「ガァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


ゴブリンロードが氷の牢獄を破り、叫び声を挙げた。

洞窟の天井がポロポロと崩れ、地面の石ころが振動するほどの咆哮だった。


その咆哮の後、見ただけで背筋が凍りそうになる程の殺意に満ちた目をアイカに向け、一直線に突進してきた。


「はやいっ!」


十分に距離をとっていたつもりだったが、一瞬でその距離は詰められ、ゴブリンロードが大上段に構えた大剣を雄叫びを挙げながら振り下ろした。

大剣の容赦ない一撃がアイカに迫る。


「させない!」


そういって春夏は大盾でゴブリンロードの大剣を弾きかえす。盾を持った手がしびれるほどの重たい一撃だった。


(うそ・・・)


心のなかでそう呟いたのは単純に攻撃が重かったから、だけではない。盾の宝石が一つ減っていたからだ。


本来、この盾の攻撃を3回防ぐ能力は、通常の防御で防ぎきれない攻撃にしか発動しない。そのため、その辺の野良モンスター相手には発動することはまず無い。ボスモンスターやそれに匹敵する一部のイベントモンスターの、それも必殺技クラスの攻撃にしか発動しないのだ。つまりこのゴブリンロードの一撃は、この盾が発動するほどの威力──ボスモンスターの必殺技に匹敵する攻撃ということだった。


「アイカ、急いで!」

「もう少しです。マスター!」


アイカのことは信頼しているが、急かさずにはいられなかった。本能が警告を鳴らしている。自分一人だったら、この場から一目散に逃げたいほどだ。現に、己の主に恐れを抱いたゴブリン達は1匹残らず逃げてしまっていた。


ゴブリンロードの渾身の連撃。


「グォオオアアアアアアアアアアア!!!」


ガン!


「ガァァァアアアアアアアアアアア!!!」


ガキン!


「痛っ!!!」


ゴブリンロードの攻撃の威力は凄まじく、余波だけで春夏の頬や腕に傷が出来るほどだった。盾を構える腕が痺れて、感覚がおかしくなりそうだ。手の震えを必死に抑えて大盾を握り治すが、その盾にはもう守護の宝玉は残されていない。


次に攻撃を受けたら盾ごと潰されそうだ・・・。

短い人生だった。


春夏が色々と諦めそうになる直前で、アイカの声が響く。


「マスター!いきます!」


次回、決着。

明日の11時に投稿予定です。

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