レベル3
ウッドゴーレムたちの活躍によってゴブリンは無事に撃退できたが、戦っていた獣人達は未だに放心状態のままだった。
ブレス・オブ・ヘラクレスの効果で傷は癒えているはずだが、やはりウッドゴーレム軍団の常軌を逸した蹂躙っぷりに脳の処理が追いつかなかったようだ。
「アイカ、今のうちにステータス見ちゃお」
「了解ですマスター。いきます!」
少々冷たいかも知れないが、すぐに済むことなので良いよねと自分に言い聞かせながら、アイカに鑑定をお願いする春夏であった。
名称:朝比奈春夏
種族:魔王種
ステータス
レベル:2→3
HP:100→235
MP:27→70
腕力:49→93
体力:30→63
敏捷:23→47
知力:10→18
魔力:5→13
器用:15→33
「マスターすごいです!」
ステータスの上昇値は確かにすごかった。
ほとんどの能力値が倍以上になっていた。しかし残念なことに高威力の魔法を使いたい春夏にとっては、魔力が低いのが悩みどころではある。
「ステータス的には前衛向きだね。」
「はい。でもMPは随分増えたので魔法職もいけます!」
アイカの言う通り、MPの量は増えてきたのでファイアーボールを数発打っただけでぶっ倒れるということはもう無いだろう。足りない魔力の分を練習量でカバーするのもありかも知れない。
「それにしても・・・」
「はい、成長率が著しく高いですね」
アイカが私の言いたいことを先取りしてくる。話が早くて助かるので良いことではあるのだが。
単なるAIだった頃より、格段に反応速度が上がっていることに私が驚いているとアイカが畳み掛けてきた。
「マスター、前回のLvアップ時の値を確認しますか?」
「あ、うんお願いします。」
思わず敬語でそう返した私に、アイカから魂のつながりを通して情報が送られてくる。
名称:朝比奈春夏
年齢:20歳
種族:魔王種
ステータス レベル:1→2
HP:13→100
MP:6→27
腕力:21→49
体力:6→30
敏捷:5→23
知力:4→10
魔力:1→5
器用:3→15
アイカの分析によると、伸び率がLvアップごとに上昇しているらしい。
Lvアップ速度自体は、ドラゴンズリングと比べるとかなり遅いが、確かにこのままの勢いでステータスが伸びていったらLvが上昇限界に達する頃にはとんでもないことになっていそうだ。
「やはり種族特性でしょうか?」
「そうかも。」
ドラゴンズリングでも種族によって素早さの伸びが良かったり、HPが多かったりと種族ごとに特性があったがここまでの成長率は無かった。でも、魔王で魔力が弱いって期待はずれも良いとこな気がする。そもそも、魔王種ってなんだろう。
「んー、まいっか。強くなれるに越したことは無いよね!」
このまま考えても結論は出なそうなので、春夏はいつものように早々に考えを放棄することにした。
「楽しければ全て良し!」
◇◇◇
しばらく放心状態だった村の面々がようやく立ち直った後に、ゴブリンの残党について話し合った。その結果、私たちは明日の朝にゴブリンの巣穴に向かうことに決めた。
メンバーは春夏、アイカ、それに獣人のティグリス、ディック、ミーシャの5人である。メトシェラと黒騎士は村で何かあったときのために待機だ。もちろんウッドゴーレムたちも村の周囲に潜伏し、警戒にあたっている。
ちなみにゴードス村長はメトシェラが修復もとい魔改造した棍を素振りしてやる気満々だったようだが、年寄りに連日連戦は辛いだろうという事で却下された。その際に、「ワシを年寄り扱いするでないわい!」と顔を真っ赤にして怒っていた。
「私から見ると十分おじいちゃんなんだけど・・・」
ゴブリンが巣食う洞窟に向けて森を歩きながら、ティグリスにチラッとそのことを話したら
村人から見ても年寄りだったようなので、やはり連れて行かないことにして正解だったようだ。
「それにしても昨日のゴブリンってなんか変だったな」
ディックが昨夜の戦闘の際のゴブリンの様子に違和感があったと語る。
「確かにいつもの馬鹿なゴブリンだったら、闇夜に紛れて奇襲とかありえないよ。それに村を前にして襲わないで我慢するなんて絶対できないと思う。」
そう言ってミーシャが肯定する。
「ゴブリンって、そんなに頭悪いの?」
「うん、あんなふうに行動するのなんて始めて見たよ。身体の匂いを消したり、あんな変な服をきるなんて普通のゴブリンはしないし。」
私の質問にティグリスが答えた。
ティグリスの話をなるほどと頷きながら聞いていると、ディックがバカにしたような薄笑いを浮かべる。
「魔王のくせにそんなこともしらねーの?」
「むー!」
それを見たアイカが主人を嘲笑されて膨れっ面になった。
当の春夏は、周囲からの目を全く気にしないタイプでどこ吹く風といった様子なので、余計にアイカがムッとするのだが春夏がそれに気づくことはない。
「ちょっとディック!」
アイカの様子に気づいたミーシャが、慌ててディックを制する。
◇
「あ、気をつけて。そろそろ見えるかな?あれが巣穴だよ。」
「おー、思ったより入り口が大きーい」
ティグリスが告げると、春夏が緊張感のない声で答えを返す。ゴブリン自体が小さいので、自分たちが入れるサイズか心配だったが杞憂だったようだ。
「陣形はどうするんだ?」
ディックが苛立ちまじりに問いかける。
自分の村を襲われ、しかも、父は昨日の戦闘でかなりの傷を負っていたのだ。父の傷は治ったとは言え、気が立っていて当然だろう。
「んー、私が先頭で・・・」
陣形は、先頭から順に春夏、アイカ、ディック、ティグリス、ミーシャである。春夏が感覚で決めたので深い意味はない。
だが結果的にそれは、この場では最良の選択だった。
ディックもそのことを理解しているので異議を唱えることこそなかったが、そもそも村人でもなんでもない部外者の春夏が仕切っていることが気に入らなかった。
──しかしその憤懣は、この後に春夏が行う奇行の数々によって、困惑そして呆れへと変わっていくのであった。




