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将来の夢は魔王になることです!  作者: 月之木ゆう
第三章 ゴブリンとの戦い
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等速直線運動

「春夏様、アイカ様!大変です!

 獣人村がゴブリンに襲われそうです!」


メトシェラの急報が念話で届いた。


「マスター、どうしましょう。」

「襲われそうってどういうこと?

 メトシェラ詳しく聞かせて!」


まずは情報だ。

このあたりはドラゴンズリングのGvGでの経験が活かされる。春夏はギルド対抗戦のことを思い出していた。

あれはゲームだが今は現実だ。対応速度も大切だが、対応を間違えると手遅れになるかもしれない。


◇


狼が疾風の如く森を駆ける。


メトシェラの説明を受けて、ティグリスの村へと向かうべく私達は森を駆けていた。

──いや、体感速度200km/hで森を駆け抜ける狼に必至に掴まっていた。


「「ぎゃああああああああああ!!!!」」


二人は狼の背で何度も振り落とされそうになるが手綱だけは離さない。まるでトラックの荷物の先端につけられた赤い旗のように、頼りなさげにヒラヒラと風になびいていた。


春夏たちは、木々が鼻先をかすめていく度に命の危険を感じながら、この手だけは決して放すまいと手綱に掛かった手に全力で力を込めるのであった。



二人にとって永遠にも思える1分後。


「ワフ!」


狼が軽く一吠えし、速度の暴力に振り回されるがままになっている二人に、目的地への到着を伝える。

もちろん絶叫する二人にはそんな声は届かない。

風の音と彼女たち自身の絶叫にかき消されたのだ。


直後、狼が目的地の前で急停止する。


「「あ。」」


狼が止まって目的地に着いたことを悟ったとき、必死に掴んでいた手綱から手が離れてしまった。二人は狼が走っていたときの勢いそのままに、真っ直ぐに飛んでいく



「(これが慣性。等速直線運動か。)」


春夏は中学校で習った理科の授業のことを走馬灯のようにぼんやりと思い出していた。


「(もし、ドラゴンの背から落ちてたら・・・

自由落下って等加速度直線運動だっけ。でもこの場合は・・・。)」


春夏は、走馬灯のように高校の頃の授業のことも思い出していた。


ピューーーーーン


春夏とアイカがまっすぐに飛んでいく。


ドッカァァアアアン!!


轟音とともに砂埃が上がる。

その中には、白目を向いて魂が半分抜けかかっている春夏とアイカ、それに泡を吹いて目を回しているティグリス、ディック、ミーシャの姿があった。


◇


なぜこのようなことになったかというと、時は3分前に遡る。


「時間との勝負ですから、鞍アイテムを使いましょう。」

「そうだね。それじゃモフモフを所望する!」

「わかりましたモフモフですね!」


そう言ってアイカは虚空に手を突っ込み、革製の鞍を取り出した。


『バトルウルフの鞍~♪』


アイカが某猫型ロボットのようなノリで、騎乗動物を呼び出すアイテムをアイテムボックスから取り出した。


「鞍アイテムはこの世界に来たから初めて使うので、気をつけてくださいね。」


そう言って、アイカは少し心配そうな顔をしながら春夏に鞍を手渡した。


「早速使ってみるね。」


そう言って鞍を前に突き出し念じる──


ポンッ!


──白い煙がコミカルな効果音とともに発生した。

その煙はすぐに消えていき、馬くらいのサイズの鞍を装着した狼が姿を現す。


「大きい…!」


現れた狼は、千切れんばかりの勢いで尻尾をブンブンと振り回していた。

春夏はその大きさに最初こそ驚いたものの、狼の尻尾の様子を見て安堵した。その後すぐに狼に抱きつき頬ずりをし、毛並みに顔を埋める。


「ぬくぬくで気持ちいい。」


春夏がこれ以上ないくらい緩んだ表情で、狼の毛皮を堪能した。その間も狼は尻尾を振りながら嬉しそうに主人が背中に乗るのを待っていた。


「アイカはやっぱりセンスがいいね。狼最高。」


ひとしきりモフモフを堪能した春夏が狼をなでながらアイカを褒めちぎった。


「そんなに褒めないでくださいよぉ。照れちゃいます~。」


褒められたアイカの表情もこれ以上無いくらい緩んでいた。


「狼にしたのは森での移動速度アップの効果があるからでもあるんですよ。」

「さっすがアイカ!

 それじゃ早速どれくらいの速さなのか試してみようよ!」

「はい!」

「狼さん、ちょっと失礼するね。」


春夏が乗ろうとしているのを察した狼が、体勢を低くして主人が乗るのを待つ。


「よし、狼さん!目的地は分かる?」

「ワフ!」


主人の質問に狼は力強く一吠えして答えた。


「マスター、猫耳と尻尾も忘れずにつけてください。」

「あ」


獣人に見えるよに偽装することもアイカのおかげで忘れずに済んだ。


「それじゃ全力でレッツゴー!」

「ワオォォォーーーン!」


狼が力強い遠吠えを終えると──

──狼は疾風の如く走り出した。

主の期待に答えるべく、全身全霊で。


「「ぎゃああああああああああ!!!!」」


こうして旗のように狼に引き回されるという、命の縮む3分間の始まったのだ。

地球ではこのような状況の場合、等速直線運動にはなりませんが

この世界はファンタジーなので、残念ながらあらゆる抵抗を無視して勢いよくカタパルト発射されます。

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