自由研究1
ずいぶん間があいてしまったので、キャラの特徴を織り交ぜています。
「おー!こうやって増えるんだね!」
嬉しさで満面の笑みを浮かべ音符マークのアホ毛を揺らした少女、春夏が歓喜の声をあげる。
「君ってほんとに不思議だね。」
春夏はそう言って2つに増えた謎物体をツンツンと菜箸でつつく。
ポヨン
つつかれた謎物体のプリンのような身体がプルンと揺れる。
その謎物体の正体は──
──スライムだった。
◇
時は少し遡る。ここは浴場。
チャポン
湯けむりに、しなやかな女性らしい体躯が見え隠れする。その身体の持ち主は朝比奈春夏である。彼女は訳あって魔法が存在する異世界で生活している。
そんな彼女がボヤく。
「やっぱり3次職は反動がキツいね。」
「まさかあんなことになるとは思わず…申し訳ありませんでしたマスター。」
そう言って春夏の言に対して謝罪の意を示すのは、──尖った耳に蝶のような美しい羽をもち、手のひらに乗るほど小さな少女──“今は”妖精姿をしたアイカである。彼女は創造主たる春夏に尽くす事を喜びとしている。
「全然良いって!それより背中洗ってー」
「了解です!」
「終わったら次が私がやるね」
「いえ!マスターにしてもらうなんて!」
遠慮してるなと思った春夏は、背中を流してもらっている途中だったが、くるりとアイカに向き直りつつ言う。
「良いから良いから。ほーれ、こちょこちょこちょ」
「きゃ!あはははは!マスターやめっ。あひゃははは!」
そんなやり取りをしつつ2人はゆっくりと1日の疲れを癒すのであった。
◇
ポヨン
「きゃっ」
「マスター!」
「なにこれ?」
そう言って2人が見つめるのは、湯船に浮かぶ不思議物体である。
「分かりません。それにいつからここに…?」
「んー、なんだろ。」
そう言いながら春夏に見つめられた謎物体は、風呂場を照らす月光草の光を受けてテカテカしている。春夏はしばらく観察したあと手桶の先で、恐る恐るといった様子でそーっとつつく。
パッ!
「あ!」
「消えました!」
つつかれた謎物体は、そのほんの僅かな刺激でシャボン玉のように弾けて消えてしまった。春夏はその場にしゃがみ、アイカは春夏のアホ毛の後ろに隠れて、湯船をじっと見つめる。
きっかり1分後。
くしゅん。
春夏の小さなくしゃみが風呂場にこだまする。
「何も起きませんね。」
「うん」
「何だったんでしょうね。」
「んー、分かんない。とりあえず、寒いから温まりたいかな。」
春夏はそう言って軽く二の腕を擦りながらぶるりと震える。
「そうですね。マスターが風邪を引いてしまったら大変です。
お湯は交換しますか?」
「いや、良いよ。露天のほうにいこ。」
そう言って春夏は、森の真ん中に作った洋風の豪邸に不釣り合いな和風の露天風呂に向かった。向かったと言っても、この風呂場と繋がっているので冷えた身体も直ぐに温めることが出来るだろう。
◇
プルン
「げ!また浮いてる!」
十分温まったのでもう上がろうと、脱衣所に向かう途中に例の謎物体を発見した。
先ほどと同じ浴槽の真ん中にプカプカと浮かんでいる。
「形も大きさも同じくらいですね。」
一通り観察した後に春夏は湯冷めしないうちに観察を切り上げ、その謎物体を先と同じく手桶で軽くつついて破壊する。今度は即座にお湯を抜いてしまう。
「これでよし!」
「ですね!」
「ぎゅーにゅーぎゅーにゅー」
春夏は、牛乳の歌を口ずさみながら脱衣所に向かう。
「牛乳でしたら冷やしてありますよ。正確にはミューケルの樹液ですが。」
「お、さすが。ありがと。」
◇
翌日。
「また浮いてる。」
「ですね。」
◇
さらに次の日。
「うわ。また…。あんなにしっかり掃除したのに。」
「今日は2つ浮いてますね。本当になんなのでしょうね。」
「メトシェラ達に聞いてみたんだけど、知らないって言ってたよ。」
それから春夏たちは、その謎物体を研究することにしたのだった。
◇◇◇
冒頭に戻る。
春夏は分裂した謎物体を菜箸で再度つつくが今度はシャボン玉のように割れたりはしない。
「だいぶ安定してきましたね。」
「うん。」
風呂場はゴーレムとメトシェラの協力のもと、家を改築してもうひとつ建設された。元風呂場は今となっては完全にスライム専用の研究室と化している。
「もう少ししたら自分で動くと思うよ。」
「本当にスライムみたいですね。」
「本物のスライムは見たことないけどね。」
春夏がアイカの言葉に冷静にツッコミを入れる。
春夏たちはひとまず謎物体をスライムと呼ぶことにしたが、実際のところはスライムではないのかもしれない。
春夏が入浴中に見たものは、スライム(仮)の幼体だった事が分かっており、単細胞生物なのか多細胞生物なのかすらも分かっていないが、放っておくと自ら動き増えるので生物と仮定して研究を進めている。
「ぽゆんぽゆんしてて触ると気持ちいいよ。」
「ホントですね。なんだかクセになりそうです。」
スライムを触ってみると、少しひんやりしており程よい弾力があった。テカテカしていて表面は濡れているように見えるが、不思議なことにそれは見た目だけで触ってもベタつかない。
春夏は、それからしばらくスライムをムニョムニョと揉みしだき堪能した。
一方アイカは、トランポリンのようにスライムの上でジャンプしたり
バランスボールの用に体重を預けたりと、色々と楽しんでいた。
アイカのスライム遊びの中で、特に春夏のツボに入ったのは、首までスライムに埋まって飛び跳ねるバルーンマンごっこである。
「マスター見てください!」
ぴょーん
ぴょーん
ぴょーん
「あはは!アイカやめて。お腹痛い。
あはははは!」
そんな春夏の様子を見て調子に乗ったアイカが、シュールな姿で春夏の周りを何度も飛び跳ねるので
ますますツボに入ってしまって笑い転げる春夏であった。




