ステータス増加
「いったぁあああああい!!!」
私は勝利に浸る間もなく、両腕と右足の激痛に悲鳴を上げた。
「マスタァアアアア!!!」
──エクストラ・ヒール
アイカは私の突然の悲鳴に驚いた様子だったが、すぐに回復魔法で私の激痛を和らげてくれた。
「マスター大丈夫ですか?」
「う、うん。」
「でも一体何が?」
「たぶん、武技を使いすぎたんだと思う。」
私が先頭直後に痛みを感じた原因はおそらく、武技の反動だろう。
数多くのゴブリンを倒すために、間を置かずに何度も連続で武技を使い続けた。ドラゴンズリングでは、武技を使うと反動で一定のディレイタイムがあり、次に武技を使用できるようになるまで少しの間待たなければならなかった。だが、もちろんこの世界ではそんなシステムは存在しなかった、そのディレイタイムの代わりがこの肉体へのダメージなのかも知れない。長時間間をあければ問題ないはずだ。
それに元々私のステータスはまだLv1だった。対して先程放った武技『駆斬』は剣士Lv26で取得できる技だ。それをLv1で使用してしまったのだ。なにも代償が無い方がおかしい。
「マスター、家まで戻って休みましょう。」
「うん、そうだね。ちょっと疲れたし。」
もう少しゆっくりしていれば、助けた村人から感謝の品など貰えるかもしれないし、獣人達のことも気になる。普段の春夏であれば迷わず村にとどまっただろうが、今の春夏はそれ以上に疲れていた。
「いこう。」
「はい。マスター。」
そう言ってアイカが作ってくれた家へ向けて、二人は歩きだした。
「まって!」
村を出る直前に後ろから呼び止められた。
そこには、見覚えのある獣人の少年ティグリスの姿があった。どうやら、立てこもっていた建物から出てきたようだった。他の獣人達は恐る恐る様子を伺っている中、ティグリスだけが慌てて駆け寄ってきたようだ。
「ゴブリン達をやっつけてくれたのって魔王様…なの……?」
「え、あ、うん。」
ティグリスの魔王という言葉に春夏が一瞬戸惑いを見せた後、答えた。
それを聞いてティグリスは「やっぱり…」と小さくつぶやき──
「村を守ってくれてありがとう!魔王様!」
ティグリスは尊敬の眼差しで春夏を見つめ、深々と頭を下げた。
春夏はそれを聞いて照れくさくなり頬がほんのり朱に染まる。照れ隠しに片手を軽く上げて答えると、足早に家路につくのであった。
(魔王になったつもりはないんだけどなぁ)
春夏はそう思いながら、森の中へと消えていった。
一方で、ティグリスの口から出た「魔王」という言葉を聞いた獣人たちがざわめく。そして口々に救世主だ、英雄が現れたなどと噂するのであったが、春夏がそのことを知るのはまだ先の話である。
◇
森の家まで急いで戻ってくるなりすぐに、先程できなかったステータスの確認をした。
「アイカ、ステータス見せて!!」
「あいあいさー!」
私はレベルアップしたのが、ぶっちゃけものすごく嬉しかった。
それこそ、元気があれば飛び上がって踊ってしまいそうなくらい。その嬉しさが魂のつながりを通して、アイカにも流れ込んでいるのか、彼女もハイテンションだった。
「それじゃ行きますよー!!!
パパラパッパラーーー!!!」
アイカがファンファーレを口ずさみながらステータスを告げる。
名称:朝比奈春夏
年齢:20歳
種族:魔王種
ステータス レベル:1→2
HP:13→100
MP:6→27
腕力:21→49
体力:6→30
敏捷:5→23
知力:4→10
魔力:1→5
器用:3→15
「アイカ、伸びすぎじゃない?」
「は、はい。」
ドラゴンズリングではLvアップで成長するステータス値は多くても3だった。それが、その比ではない成長率だったのである。もっとも変化の少ない魔力でも4増えており、HPに至っては87も増えていた。
正直言って異常だ。
一体どうしてこれほどの成長率なのだろうか。
だが、もとの値がかなり低いだけに、これだけ伸びてもドラゴンズリングでのアバターの値と比べるとまだまだ低かった。
それでも、今日戦ったゴブリン程度ならもはや敵ではないだろう。
「(んーなんでだろ。でもまいっか。高い分には良いよね。)」
難しい事を考えるのが苦手な春夏は早々に考えるのをやめた。
なにより、今はMPが増えたことが嬉しい。
(魔法や武技など使用感や反動を確認して置かなければならないことが山積みだなぁ。)
そんなことを考えつつも自身の成長への期待感でニヤニヤが止まらない春夏であった。




