剣気開放
「ゲギャァアアアア!!!」
リーダー格のゴブリンが雄叫びをあげながら、剣と盾をガンガンと打ち鳴らし、強烈な殺意をこちらに向けてきた。仲間を殺されたのだ、当然の反応だろう。
ゴブリンは咆哮の後、盾を正面に構えながら物凄い勢いで突進してきた。
その盾で私の剣撃を防ぎ弾き飛ばすつもりなのだろうが──
「甘い。」
私は低く腰を落とし、鬼喰の柄を強く握り締める。
21匹分のゴブリンの魂を吸って、禍々しいオーラを放ちながら脈動している鬼喰に意識を向け集中する。
私は一瞬だけ目を閉じて心のなかで鬼喰を呼んだ。
そして叫ぶ──
──剣気開放
直後、鬼喰の溜め込んだ力が開放され凄まじい圧力が生じた。
開放直後は爆発したのかと思ってしまうほどの力の放出があった。その後も継続的に放出される圧力で春夏の長い赤髪と腰マントが激しくなびいている。
「すごい力……。」
鬼喰は見た目も大きく変わっていた。
刀身の根本部分の赤い宝珠は先程までと模様が異なり、球体の内側には虹彩と瞳孔があった。
まるでドラゴンの眼だ。
刀身と柄には血管のようなものが浮き出ており、刀身の表面は蠢いているように見えた。あたかも宝珠から血管を通して、刀全体に力を行き渡らせているようであった。
春夏は柄を通して直接その力を感じ確信した。
「いける。」
そう言って春夏は盾を構えて突進してくるゴブリンがこちらの間合いに入る前に鬼喰を軽く一振り。
武技でもスキルでもない、ただの素振りを放った。
瞬間、ゴブリンは鬼喰から発せられた圧力により吹き飛ばされた。
素振りで生じた圧力によって、ゴブリンが構えた盾は粉々に砕け、体中に無数の傷を受けた。弾かれたゴブリンは派手に回転しながら宙を舞う。
私はそのまま流れるような動きで、次の動作に移っていた。
武技の発動を強く意識して、鬼喰を握ると纏っていたオーラが刀身に集中し、刃が煌めいた。
──瞬迅斬
直後、先程の一撃を受けて地面に転がる寸前のゴブリンの眼前まで、予備動作無く一瞬で距離を詰めた。
そして、空中で身動きの取れないゴブリンに鬼喰を振り抜き──
──両断した。
直後、私とアイカの脳内に世界の声が響く。
《『朝比奈春夏』がレベルアップしました。》




