燕雀(エンジャク)
「次!ラスト!」
「優先目標残り1。13時方向。距離30。先程倒した敵が落とした剣の音で警戒していますが気づかれてはいません。」
「了解。」
ゴブリンは多少の夜目は効くが、元々視力が低い。洞窟内など狭い場所で生活することが多いため、遠くを見る能力が低いのだ。ましてや森の中は遮蔽物も多いので、ここまで奴らに気づかれることなく事を運べている。
私はその場で体制を低くし茂みに隠れ、太ももに装着していた投げナイフを構えた。
30m先のゴブリンに対し、半身に構えしっかりと狙いを定める。練り上げた闘気を右腕に集中し、放った。
「これで最後。」
──燕雀
シュパッ!
直後、ゴブリンがその場に崩れ去った。
風を斬って飛んでいったナイフはゴブリンの左目に深々と刺さっていた。
「優先目標の排除を確認しました。残りは村落内の22匹のみです。」
「よし。」
(……あれ?私…笑ってる……?)
ここまで、ゴブリンを倒すことに夢中で気づかなかったが、敵を倒すことで軽い快感というか悦を感じていた春夏であった。ゲームで敵を次々に倒していく爽快感とも少し違う。
初めての感覚だった。
転生した影響なのだろうか。
それとも職業の反動や特性なのだろうか。ドラゴンズリングの上位職や特殊職では、ステータスマイナス補正や精神異常などの状態異常にかかる場合があった。この世界でその影響がどの程度出るのか、アイカと一緒に試した際には、上位職になると思考や精神に影響があった。流石に周囲に魔物は居なかったので、魔物を倒すとどうなるのか試してはいない。
それに、可能性として考えられるのは、これが経験値を得るという感覚ということだ。だが、そうだとしたらこれだけのゴブリンを倒して1もレベルが上がらないのはおかしい。ゲーム内であればLv1からLv2へはゴブリン3匹も倒せば十分あがるはずだ。しかし、まだレベルは1のままだ。成長が遅すぎる……。
……今はそんな事を考えている場合ではなかった。
私は頭を振って思考を切り替える。
「村の状況は?」
「敵が篝火を炊いていますので、接近すると気づかれる可能性があります。魔法による殲滅を行いますか?」
「いや、いい。私がやる。」
「了解しました。補助魔法を更新します。」
丁度いい、敵に正面から切り込んで敵の注意を獣人達から離そう。
それなら──
──転職──剣士
私は転職の指輪に手を添え、心のなかで念じた。
すると、瞬時に身体が光りに包まれ装備がクリムゾンシリーズへと変わった。背中には鬼喰を背負っている。
「正面から突っ込む。危ないときだけサポートお願い。」
「了解。村の入口に敵4。残りは村の中央の建物の周囲に集まっています。」
私はアイカの言葉に小さく頷き走り出した。
正面突破だ。




