雷光(ライコウ)
春夏の手には既に雷光が握られていた。
鞘から開放された雷光の刀身には時折小さな稲妻が走っていた。ドラゴンズリングの時はもっと激しく放電していたが、こちらの世界ではかなり控えめになっていた。何らかの解放条件のようなものがあるのだろうか。
だが、敵に気づかれたくないこの状況ではむしろ好都合だ。
私は、雷光をゴブリンの喉元に突きつけチクッと軽く一刺しした。
ゴブリンの首筋を伝って赤い血液が流れる。
刺されたゴブリンは何を思ったのか、ニヤリと下卑た笑みを浮かべ、腰に下げた棍棒にそっと手をかけた。
その瞬間──
「ゲギャギャギャギャギャギャッ!!!」
──雷光の切っ先からビリビリと電流が流れ、ゴブリンが麻痺して倒れた。
(よし、情報源確保。)
ゴブリンが倒れたのを確認したアイカが言う。
「敵2匹の排除を確認。残り40。優先目標は残18です。8時方向に3匹。会話に集中しています。こちらには気づいていません。」
「チャンスだね。」
◇
私は見張りをサボって会話をしているゴブリンの頭上の木の上から、彼らを見下ろしていた。
ちょうど真下に2匹、その向かいに1匹がいる。私は、太ももに括り付けていた手裏剣を静かに取り出し、闘気を込め始める。
すると向かいの1匹が不意に立ち上がった。
「(気づかれた?)」
違った。
こちらに気づいた訳では無いようだ。どうやら何かの動物のマネのような動きをしている。右手で嘴を作り、左手をヒラヒラと尻尾のように動かし、ひょこひょこと歩き始めた。鳥だろうか。
何が面白いのか私にはさっぱり分からないが、それを見た2匹のゴブリンはゲラゲラと下品に笑い声を上げている。
まあ良い。私は深く息をして、立ち上がった1匹に狙いを定める。狙うは首。
──風斬
闘気を込めた手裏剣が高速で回転し、文字通り風切り音をあげて飛翔する。
ズシャッ!
立っていた方のゴブリンの首の半ばまで、投げた手裏剣が食い込み、そのゴブリンは力なく倒れた。
その様子に驚いたもう2匹のゴブリンの笑い声がピタリと止む。
直後、その頭上から2本の短剣を持った春夏が、木から飛び降り襲いかかる。飛び降りた際の音に気づいたゴブリン達はハッとなって頭上を見上げた。
ゴブリン達が見上げた瞬間には、春夏の持つ短剣が既に眼前まで迫っていた。
──双椛斬
春夏は落下の勢いそのままに、二匹のゴブリンの顔を左右それぞれの短剣で同時に刺し命を絶った。
1匹目で注意を奪い頭上から襲いかかるまで、鮮やかな動きだった。
「敵3匹の排除を確認。優先目標は残り15匹です。」
「次いくよ。」
そう言った春夏の顔には──
──薄っすらと笑みが浮かんでいた。




