精霊の食べ物
「分かった!この中!」
春夏がそう言って、家を建築した際の水魔法で生じた池を指差す。
「正解です!」
アイカとメトシェラがパチパチと拍手をしてくれた。
程なくして、水面からアースゴーレムが顔を出し、池からはいでてきた。
ゴーレムが池から出た後、水面がゆらぎ始める。
池の水面が不自然に盛り上がり、やがて少女の上半身のような形になった。
「もしかして、アクアエレメンタル…さん?」
「……。」
「春夏様、おはようございます。と申しております。」
メトシェラが通訳をしてくれる。
アクアエレメンタルが挨拶をしてくれたようだ。私が、おはようと返して、家を作るのを手伝ってくれた例も告げると、恥ずかしそうに両手を自分の頬に当て、軽く一礼した後に水面へと消えていった。
私には何と言っているかは分からないが、なんとなく、えへへ。どういたしまして。と言っているように見えた。
「なんて言ってたの?」
「それはですね……。」
◇
私はアクアエレメンタルが鹿やイノシシ、果てはティグリスなど様々な形に変形して、微精霊達と遊んでいるのを眺めながらアイカに尋ねる。
「ところでアイカ。」
「はいはい、なんでしょーマスター。」
「ゴーレムとかエレメンタルってさ、なんで消えないの?」
春夏がやっていたMMO-RPGのドラゴンズリング内でも、ゴーレム作成や精霊などの召喚魔法はあったが、どれも時間制限付きで、レベルにもよるが長くても数時間経過すると消えてしまうのだ。
「私にもわかりませんが、今の所、作成や召喚した者たちは消えたりしていませんね。」
「昨日呼び出したルミナスエレメンタルは?」
「ああ、今は上空で日光浴をしていますね。」
上空を見ると空中に光るたまのようなものが浮いていた。
光の精霊だけあって、光を栄養にしているのだろうか。
「光を吸収してるの?」
「それはですね……。」
メトシェラが説明してくれた。
精霊は基本的に自分の属性に近いものを取り込むことで、エネルギーを得ているらしい。なので、同系統のものを与えてあげればエネルギーを回復し、存在を保ち続けられるようだ。そのエネルギーがなくなると、死亡してしまうようだ。消滅ではなく死亡と言うからには、魂があるのだろう。
「ようはそれが精霊の食べ物ってこと?」
「概ねその通りです。魔力も吸収できますわ。」
どうやら、魔力を直接送ってエネルギー補充をすることも可能なようだ。空気中からも魔素を吸収できるようで、風を使って空気中の魔素を簡単に集められる風精霊なんかは、空気中の魔素で存在を保てるようだ。魔素とは、魔力を放出したりすると発生する魔力的なエネルギーを持った微粒子のようなもので、この世界の大気には魔素が満ちているらしい。
ちなみに、ゴーレムも同様で空気中の魔素を吸収して活動しているようだ。もちろん直接補充も可能。
「マスター、ゴーレムや精霊が消えないのはおそらくそれが原因でしょう。」
「私もそう思う。」
アイカはこの時点で、減り続けていく自身のMPの回復手段のヒントを得ていたのだが──
──彼女の主人である春夏が、その事に気づくのはまだしばらく先の話である。




