ティグリスの村へ ─夜の森─
「こっちだよ。」
ティグリスが私達の先頭を歩きながら言った。
私とアイカ、ティグリスそれにメトシェラの4人は、ティグリスの村に向けて歩いていた。
もっとも、二足歩行しているのは私とティグリスの二人だけだ。アイカは妖精姿で私の横を飛んでいるし、メトシェラはドライアドの能力で身体の周囲の植物を器用に動かしながら移動しており、足は全く使っていない。
「みんな、僕から離れないように気をつけてね。」
ティグリスが危険な夜の森で索敵をしながら、私達を先導してくれていた。
ティグリスの話では、鋭敏な五感を持ち敵にすぐ気づくことのできる獣人であっても、めったに夜の森には立ち入らないようだ。夜の森には、足音もなく忍び寄り頭上から奇襲してくる蜘蛛や、黒い体毛を活かして闇夜に紛れ集団で獲物を包囲して襲いかかってくる狼など、昼間とは比べ物にならないくらい危険なモンスターが多いらしい。
「昼間は危険なのはどこに行っちゃうの?」
そう尋ねてみると、昼間もそれらのモンスターは森に潜んではいるとのことだった。だが、その多くが夜行性で昼間は活発に活動していない。仮に遭遇したとしても、獣人であれば五感を活かして敵に気づかれるよりも先にこちらが気づくことができるため、罠を張ったり勝てなそうであれば逃げたりと行動の選択肢が多いため、比較的安全ということだった。
(つまり、五感も人並みで知恵も力もない私にとっては昼の森も危険ってことね……。)
私は思わず首をすくめて、そんな事を考えるのであった。
ちなみに私の拠点の周囲にはアイカお手製の結界がはられており、敵が侵入できないようにしている。そのため、結界内であれば安全なようだ。先程、その結界の範囲外に出たため、ここから先はいつ敵に遭遇してもおかしくないようだ。
「(ところでアイカ、ゴーレム達が居なかったようだったけどどこに行ったの?)」
私は先程から気になっていたことを、こっそりアイカに聞いてみた。
「(ゴーレムたちには隠れてもらっています。)」
ゴーレムたちは、ティグリスを捕まえる時に姿を見られてしまっている可能性が高かった。それでトラブルを避けるためにティグリスに見つからないように隠れてもらっていたようだ。
エルダーだけは御神木ということで、受け入れてもらえたようだが、他の個体はどうなるかわからないので無用なトラブルを避けるためにも、あえて姿を晒す必要は無いだろう。
それにしても、家を出るときには全く気づかなかった。
上手く隠れたものだ。
「(でも、ティグリスの村って意外と近いよね?ずっと隠しておくのって難しんじゃない?)」
「(それでしたら私に考えがあります。)」
「(え、なになに?)」
「(まだ内緒です)」
そう言ってアイカは悪戯っぽく笑った。




