魔王様は英雄
「あれってもしかして……」
ティグリスがベッドから降りて窓際に立ち、外を眺めながら言った。
(ああ、まずい。バレちゃう!)
捉える時にエルダーが見られてしまっていたかも知れない。そうなったら、ティグリスを捕まえたのは私達だと気づかれてしまう。
「御神木…さま……?」
どうやらバレずに済んだようだ。
◇
ゴーレム達はこの森の守護者で、昔からこっそりと影から森を守ってきた。メトシェラは彼らと森を管理する者だ。
といった旨をメトシェラが説明すると、ティグリスはどこか納得したようで、そうだったのかと頷きどこか嬉しそうに見える。
説明が一通り終わったところで、私達が何者なのか尋ねられた。
「えっ、私は…」
突然の質問に困惑してしまい言葉に詰まる。
(どうしよう。)
それを見たアイカが任せてください。といった様子で私に目配せした。
やはり、アイカは頼りになる。助かった。そう思っていたのだが…。
「私とマスターは別の世界から来ました。マスターは魔王で私は大精霊です。」
そう、ハッキリと言い切った。言い切ってしまった。
私がポカーンと口を開けていると。
「魔王様!すごい!!!本物!?」
(あれ?)
反応がおかしい、魔王だよ?普通ここは怖がる所じゃないの?と疑問に思う私。
「僕、ずっと会ってみたかったんだ!」
「魔王って何だか分かってる?」
「もちろん!魔王様は英雄だよ!」
ティグリスが目をキラキラさせながら語り始めた。
なんでも、この世界に伝わる昔話らしく英雄譚の英雄役が魔王のようだ。あとから聞いた話だが、人間の国には勇者の物語が伝えられ、獣人や亜人達には魔王のヒーロー物語が伝えられているらしい。
「それでね。神様が魔王様を降臨させるんだ!その時に火柱がゴォオオってなってね!その炎の中から、真っ赤な鎧と真っ赤な剣を持った魔王様が出てきて……。魔王様が悪い奴らをやっつけるんだ!それで……。」
ティグリスのスイッチが入ってしまったようで、しばらく魔王の英雄譚を聞かされた。
なんとなく私がこの世界に来た時の状況に似ている気がするが、偶然だろう。火柱どころか、しょぼい火の玉一発だけだし。
ディグリスの話によると、獣人にとっての魔王は私達のよく知るRPGに出てくるような勇者と似た存在のようだ。この世界の勇者はどんな人なのだろう。良い奴なのか悪い奴なのかよく分からないが、異世界で英雄といったら勇者だと思うのだが……。
「勇者に会ってみたいな。」
「え!?
それって勇者をやっつけるってこと?」
「え……?」
勇者に対するイメージのズレについていけず
困惑する春夏であった。




