森の魔女
「僕が捕まって怖い人間の魔女に食べられちゃうんだ。」
ティグリスがカタカタと震えながら言った。
(その魔女って私のことじゃないよね……?)
まさかね。
いや確かに、魔法使い職だったし、ノワールシリーズを着ていたし、そう見えなくもないだろう。使い込んで独特の風格があるとんがり帽子もかぶっていたため、むしろ、拍車をかけてしまったのだろうか。
だが、あれくらいの子供に、しかもあんなにかわいいモフモフくんに怯えられるのは精神的に結構くるものがある。
それにしても、魔女に怯え過ぎじゃないだろうか。人間に対しての怯え方というか敵対種族に対するものとどこか違う感じがしたのだ。
私は探るように慎重に尋ねてみる。
「魔女って…そんなに怖い?」
「うん。凄く怖いよ。
昔ね母さんが、僕が悪いことをすると森の魔女が出てきて食べられちゃうよって言ってたんだよ。」
なるほど。どこの地方だったか日本にも伝わる『わりぃ子はいねぇがー』ってやつと一緒だ。たぶん。
しかし、そうして考えると、窓から見えるエルダーを筆頭とするウッドゴーレム達が闇夜に佇む姿は中々に不気味なものがある。昼間だったら全く気にならなかったが、一見すると木にしか見えないのが、突然動き出したら恐怖だろう。
困った。
ウッドゴーレム達のことはどうやって説明しようかと、思案顔を浮かべているとメトシェラが機転を聞かせて説明を始めた。
「悪い魔女は私達が倒しましたから、もう現れることはありませんわ。それに、外にいる森の巨人族は、この森を昔から守っている守護者なのですわよ。」
という事にしたらしい。
メトシェラの指示で、光の精霊がエルダー達を照らす。
窓から外を見ると流石に昼間ほどではないが、エルダーとウッドゴーレム達の姿が明るく照らし出されていた。
(あれ?ロックとアースゴーレムがいない。)
どこかに隠れたのだろうか。あれ程の巨体がそうそう簡単に隠れられる訳は無いと思うが。
なんてことを考えていると、ティグリスがベッドから降りて窓際に立ち、外を眺めながら言う。
「あれって…もしかして……」
やはりティグリスを捉える時にエルダーも見られてしまっていたのだろうか。
(ああ、まずい。バレちゃう!)
おまけ。
かなりゆるいです。
(読み飛ばして頂いてもOKです)
「ポッキリー食べたい。」
春夏がそんな事を急に言いだした。
「マスター、申し訳ありません。用意できておりません。」
嗜みと称して何でもかんでも準備しているアイカも、流石に異世界にお菓子を持ち込むような事はしていないようだ。
話を聞いていたメトシェラが尋ねてくる。
「どんな食べ物なのですか?」
「ポキポキした棒にチョコがコーティングされたお菓子だよ。食べるとポキッてなってチョコが甘くて……。」
私がその美味しさについて熱く語っていると、プロフェスが言った。
「我に心当たりがあるぞ。」
「「「ホント!?」」」
◇
「これは……」
私達はプロフェスの心当たりという花を探して森を彷徨い、ようやく見つけた。
メトシェラが居なかったら発見できなかっただろう。
「この形、この色!そしてチョコのコーティングの絶妙なバランス!」
これは間違いなく──
「「ポッキリーだぁああああ!!!」」
「おお、これである。」
指輪のプロフェスが満足そうに言った。
「でも、これって……」
そう、プロフェスが教えてくれたのは、この世界に咲く花の雌しべだった。ちなみに、花粉は金色で金箔付きのポッキリーに見える。
見つけた花の真中には、ポッキリーそっくりの雌しべがる。
花はたんぽぽくらいの大きさだ。
ポッキリーの大きさは、太さ300μm長さ8mmだった。
「「ちっさぁあああい!」」
私達が食べるには小さすぎた。
やはりプロフェスの話に期待してしまった私達が馬鹿だった。
皆はそう思うのであった。
こちらの世界でポッキリーが食べられるのはもう少し先の話である。




