ティグリス編 ─捕獲完了─
「ブヒィーーーッ!」
──イノシシが突如現れたツタに絡め取られてしまった。
「一体何が……?」
猛烈な速さで僕から逃げていたイノシシは、突如現れたツタによって動きを封じられていた。
僕は咄嗟に木の影に隠れ、恐る恐る様子を伺う。
イノシシはツタのネットに捉えられた際のショックで目を回していた。そのまま、観察していると程なくして森の奥の方からドスドスと地響きのようなものが聞こえ土の巨人が姿を表した。
地響きを立ててやってきたアースゴーレムがイノシシを軽々と持ち上げると、木の棒に足を括りつけて吊るし始めた。
僕は初めて見た土の巨人の姿に驚愕し、数歩後ずさった。
(逃げなきゃっ!)
僕は踵を返して、その場を離れようとしたが──
ポキッ!
──足元の小枝を踏んでしまった。
僕は咄嗟にゴーレムの方に振り返ると、集まってきていたゴーレムがこちらを見ていた。目は無いのだが見られている感覚がある。
(まずい。)
ティグリスの額には冷や汗が滲んでいた。
僕の心は恐怖で支配されていたが、本能が逃げろと叫んでいる。
僕は即座に駆け出そうとするが、その寸前に──
──僕の真上から、枝が折れる音がして動きを止めた。
見上げると、木の腕が眼前まで迫ってきていた。ウッドゴーレムのエルダーの腕である。
「ぎゃぁあああ!!!」
僕は悲鳴を上げてそのまま気を失ってしまった。
◇
「くそっ!なんだこれ、離してよ!」
目が覚めると、僕は棒に括り付けられてゴーレムに運ばれていた。
僕はすぐに状況を理解し、必死に暴れてなんとか拘束を解こうとする。
(くっ!はずれない)
このままではどこかに運ばれて、売られるかまた奴隷にされてしまうかも知れない。もしかしたら悪い魔女に食べられちゃうのかも……。
などと悪い想像が頭を支配していく。手と足を棒に縛り付けている植物はとにかく頑丈で、全く外れる気配がない。
「(助けてお姉ちゃん……。お母さん。お父さん。)」
僕はポロポロと涙を流し、絞り出すような声で助けを呼んだ。
「心配することはありませんわ。」
そんな声がどこからか聞こえた。直後、吊るされた棒から小さな芽が生えてきて、みるみるうちに成長し蕾が膨らみ──
──一輪の美しい花が咲いた。
「え、花……?」
とてもいい香りがする。嗅いでいると心がとても安らぐ。
「それは眠り草の花ですわ。」
そう言われたときには僕は既に深い眠りについていた。
「捕獲完了ですわね。」




