ティグリス編 ─ゴブリン討伐─
「まだいるぞ!!!」
ディックが叫んだ。
ミーシャが即座に次の矢を取り出し、弓を引き絞る。
僕も一瞬遅れて短剣を構え、周囲を確認する。
「正面に2匹。右に1匹いる。」
「正面は俺とミーシャ。右のはティグリスがやれ。」
ディックが素早く指示を出す。普段は偉そうにしているが、こういう時はやはり頼りになる。
「行くぞ!」
「「うん」」
ディックの合図に合わせて、ミーシャが引き絞っていた弓を解き放った。
刹那、放たれた矢は風切り音だけをその場に残し、吸い込まれるように正面のゴブリンに見事に命中した。鋭い矢に頭部を貫かれたゴブリンはすぐさま崩れ落ちた。
「これであと2匹」
ミーシャがつぶやく。
やはり遠距離攻撃手段があると戦闘が安定する。ゴブリンやビッグラビット相手なら急所に当たれば即死なので、安全に数を減らすことができる。
「来るわ。ディック!」
「ああ、俺に任せろ。」
頭部から血を流し倒れたゴブリンの横を抜けて、もう一匹が木の上のミーシャに敵意を向け奇声を上げながら迫ってくる。
しかし、ディックが素早く行く手に立ちはだかると、ゴブリンの敵意はディックに向けられた。
ボロボロの剣で思い切り振りかぶり、無造作にディックに切りかかる。
「隙だらけの動きだ。」
ディックがロングソードを大上段から振り下ろし、肩から腹までを一直線に叩き斬った。
直後、ゴブリンは真っ赤な血を撒き散らしながらその場にうつ伏せに倒れた。
「あと1匹」
後1匹となったところで、ゴブリンが雄叫びを上げその場で大きく武器を振りかぶった。距離はかなり離れているが武器を僕に向けて投げつけてきた。
狙いは正確だったが、予備動作を見ていた僕にとっては避けることは容易い。
僕は飛んできたサビだらけの剣を、難なく躱した。
しかし一瞬ゴブリンから目を離した隙に、ゴブリンが逃げ出した。
「待て!」
僕が叫ぶがゴブリンは必死で逃げていく。
ミーシャがすかさず矢を放つ。
放たれた矢は、ゴブリンに向けて真っ直ぐに飛んでゆく。
「当たったぞ!」
ディックが声を上げる。
「いや……浅いわ。」
ミーシャが答える。
矢は確実にゴブリンに命中していたが、左肩に当たっただけだ。
逃げ出したゴブリンは止まらない。
「追う?」
僕は、いつでもかけ出せるような体制で短剣を鞘に収めながら尋ねた。




