丸焼き肉の叫び
ドスンドスンドスン!!!
──突如、地響きが聞こえ、振動でアイカが作った食器がカタカタと音を立て始める。
「……地震!?」
「ゴーレムたちですね。」
「ってことは……」
「「お肉だぁーーーっ!」」
二人が練習したかのようなタイミングでハモる。
魂のつながりのせいか息ピッタリ。
肉だ!BBQだ!丸焼きだ!
「私お肉食べるの初めてなので楽しみです!」
「あ、そうか!めっちゃ美味しいよ肉!!ああ、よだれが……。」
「マスター、以前見ていたアニメのような丸焼き肉を食べてみたいです。」
「おおお!良いね!やってみよう!」
なんて会話をしながら大きな両開きの扉を開けて外に出る。春夏は建物が大きすぎて、玄関の方向がわからず少し迷ってしまっていた。どうやらまだ自分が昔ゲーム内で作った建物の再現ということには気づいていないようだ。アイカも今は肉に夢中なので、特にそれを気にする様子はないようだ。
「「おおお!!!」」
暗くて見づらいが、アースゴーレム2体が獲物をそれぞれ2匹ずつ、計4匹とってきていた。このゴーレム達の後ろの彼に春夏はまだ気づかない。
「アイカ、明かりない?」
そう春夏が言った瞬間、視界の上から枝が伸びてきて、その枝から彼女がポンッと出てきた。
闇夜に淡く輝く木の精霊のメトシェラだ。
「春夏様、明かりは私が。」
「ぎゃあああ!!!」
◇
「はぁびっくりした。アイカ、まさか木の精霊をこの目で見られる日が来るなんて思わなかったよ。」
「申し訳ありませんマスター。事前に説明すべきでした。」
「まぁいいよ。サプライズってことにしておくよ。」
驚きのあまり、肉のことなんてすっかり頭から抜け落ちている春夏であった。
「木の精霊さん、メトシェラって言うんだっけ?
はじめまして!私は春夏といいます。よろしくね。」
「これはご丁寧に春夏様。ご挨拶が遅れました、メトシェラと申します。」
と言って優雅にお辞儀をしてみせるメトシェラ。
(かわいい。っていうかスタイル良すぎだよね、アイカ)
(はい。マスター、私も大きくなったらあれくらいになるでしょうか?)
(きっとなるよ。たくさん食べれば!牛乳飲んだり、タンパク質たくさんとったり、あとなんだっけ……
……兄さんはたしか、揉むと良いって言ってたよ!)
こんな怪しい情報ではあったが、アイカはふむふむと心の中のメモ帳に熱心に書き記すのであった。
◇
「それでは明かりをつけますね」
「うん。お願い。」
「お願いします。メトシェラさん。」
──サモン・ルミナス・エレメンタル
メトシェラが、光の精霊を召喚した。
「え……!?
精霊って精霊召喚できるの!?」
「やはり、そう思いますよね。マスター。」
と言っているアイカもまた、大精霊なのに精霊を召喚しているのであった。
「ああでも、すごい!明るい!!」
切り替えの早い春夏は、そんな疑問は数秒で思考の端に追いやっていた。
光の精霊によって、辺りが昼間のように明るくなっていたのだが──
「ぎっ……。」
──春夏の目が最初に捉えたのはとても巨大な彼の姿であった。
その彼とは、巨大ウッドゴーレムのエルダーのことである。エルダーはアースゴーレム、メトシェラと共に狩りに行っていた。先程から、アースゴーレムの後ろにずっと立っていたのだがあまりの大きさに春夏は気づいていなかった。
そんな彼の姿に気づいた春夏は小さく声を上げ固まっていた。
彼は深々とお辞儀をするような形で春夏の目の前まで、その巨大な顔を近づけ挨拶をする。
「ワシはエルダーと申し……」
「ぎゃぁあああ!!!」
恐怖と驚愕のあまり
春夏は悲鳴を上げた後、泡を吹いて意識を手放すのであった。
◇◇◇
「メトシェラ、もうちょっと薪ちょうだい。」
「はい。アイカ様。これくらいでしょうか?」
「言い難いんじゃがワシの枝をとって燃やすのは、程々にして貰えんかの……」
エルダーの口から文句が発せられるが、アイカ達には届かなかったようだ。
次から次へとエルダーの不要そうな枝をポキポキと折って、コップ作りで活躍したファイヤエレメンタルに焚べていた。
ファイアエレメンタルは水を得た魚のように、もとい、薪を焚べられた焚き火のように、激しく燃え盛っていた。
「そろそろ、いい感じですね。」
ジュルリ。
目が肉マークになってしまっているアイカが、丸焼きの準備をしていた。火の勢いが良い具合になってきた。
「焼き始めましょうか。
マスター!起きてください!!!」
準備が終わったので気絶している春夏を起こす。
「マスター!」
「ん……」
「マスター、お肉ですよ!」
「はっ!肉!!」
肉の力は偉大である。
先程まで気を失っていた春夏が即座に目覚めた。
「マスター、お肉焼き始めますよ!」
春夏がそう言うと、ゴーレムが棒に括りつけて獲物を火にかける。
まさに豚の丸焼きのそれだ。吊るされた獲物を丁度よい火加減になるように、絶妙な位置で火が当たる。
瞬間、焼かれた肉が叫んだ。
「ぎゃぁあああああ!!!熱い熱い熱い!!!!!」




