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将来の夢は魔王になることです!  作者: 月之木ゆう
第一章 はじまりの森
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拠点づくり その3 ~メトシェラ無双~

─ アイカ視点 ─



木の精霊(ドライアド)のメトシェラは春夏の姿を思い出し、頬を朱に染め心が離れてしまっていた。

私はそれを放置して、次の作業に移る。


「さて、次は……」


その際にチラリとマスターの幸せそうな寝顔に目をやった。


その時、ふと違和感を感じた。

光の粒子となった何か(・・)がマスターの周囲に集まっていたのだ。その何か(・・)は春夏の周囲を滑るように、ときに踊るようにしながら、キラキラと瞬いていた。色も光の強さも様々で一つ一つが違う動きをしていた。

まるで生きているように。

私にはすぐに、その何か(・・)の正体が直感的に理解できた。


「精霊だ。」


私がゆっくりと近づいていくと、精霊たちは私に気づいたようで、マスターの後ろに隠れてしまった。


「怯えなくても大丈夫ですよ。私は敵ではありません。あなた達と同じ精霊です。」


そう言って私は、妖精の姿から大精霊の光の姿になる。


「「「……!」」」


精霊達は一瞬驚いた様子で飛び跳ねた。その後、光が私の周りに勢いよく集まってきてキラキラと瞬きくるくると私を中心にして回りながら楽しそうに踊っている。

どうやら、私が大精霊だと分かってくれたようだ。


私は再び妖精の姿をとる。今はもう怯えていないようで、隠れられてしまうことはなかった。

おそらく精霊は精霊同士の意思疎通ができるのだろうが私にはその能力はなかった。作ったのが女神とは言え人工的に作られた存在だからだろうか。

そんなことを考えていると精霊たちは再びマスターの顔の周辺に集まり、せわしなく動いている。

当てずっぽうで聞いてみる。


「もしかして、手伝ってくれるのですか?」


肯定の意味なのだろう。妖精たちの光はピョンピョンと飛び跳ね始めた。手伝ってくれるのはありがたい。

これくらいの意思疎通なら図れるようだが、否定か肯定かくらいしか読み取れないので、指示が難しい。一方的にやることを伝えようにも、何ができるのかも分からないので、何をお願いしたらよいか判断しかねる。

なんとかして意思疎通を図れないだろうか。


少しの間、思案していると……


「アイカ様、私にお任せくださいませ。」


いつの間に心が戻ってきたのか、メトシェラがウッドゴーレムのエルダーの枝を器用に操り私の前まで来て、そう告げてきた。


「メトシェラは言葉が分かるのですか?」

「もちろんですわ。」


メトシェラのおかげで問題解決だ。

精霊達への指示はメトシェラに頼むとしよう。

指揮系統もメトシェラから、エルダーと精霊達に指示して作業を進めるようにした。これで作業効率がまた更に上るはずだ。


「それではメトシェラ、そこの精霊たちと協力してマスターの家を作るのを手伝ってください。」

「かしこまりました!素敵なお家にして見せますわ!」


そう言ったメトシェラの周りには先程の小さな精霊達の光がクルクルと集まっていた。早速、仕事内容を指示しているようで頼もしい限りだ。どうやらこの森で起こることは基本的にすべて把握しているようで、どんな家を作りたいかも理解していた。

近くまできていたエルダーがその枝のような腕を伸ばし、メトシェラはその腕の先に飛び乗った。そのまま周囲のツタのような植物を操りスルスルと滑らかな動きでエルダーの肩まで移動した。精霊達の光もメトシェラの後について行った。


私もその後について行くと、彼女は椅子を作る所だった。

エルダーの肩から伸びている小枝を軸に、籐の椅子を編むようにくねくねと器用に動かし、あっという間に椅子の形を作っていく。背もたれや肘置きは色とりどりの花で装飾されており、綿毛のクッションの上に柔らかい若葉がしかれている。香りを嗅ぐという行動になれていないアイカにとっても心地よく花の甘くフレッシュな良い香りが椅子を包んでいた。

アイカの知識にもないとても立派な植物100%の椅子だ。


「これは……」

「アイカ様、こちらにおかけになってください。」

「アイカで良いですよ。あとその言葉遣いもちょっと。」

「ふふ、分かりましたわアイカ様。でも言葉遣いはどうかこのままで居させてくださいませ。さぁ、どうぞこちらに。」


そんなやり取りの後、玉座と言ってもいいほどの立派な椅子を前にし、少しだけ思案する。

本来なら、マスターの家を一刻も早く作らないと行けないのだけど、せっかく作ってくれたのだし、ほんの少しだけなら……。


私は羽をたたみゆっくりと腰掛けた。

するとふわりとしたクッションが私のお尻を受け止めて包み込む。すごく心地よい。生まれてはじめて椅子というものに座ったが、人間はなんて贅沢なものに座っているのだろうと考えてしまう。香りもとても心地よく、このままうたた寝などしたらきっと気持ち良いのだろうが・・・。

私の考えを察したメトシェラが満足そうに微笑んでいる。


「春夏様のことでしたら、ご心配には及びませんわ。すでに、簡素ではありますがテントをご用意させて頂きました。」


エルダーの身長が数十メートルもあるので、下の方は少々見づらいが、マスターが居たところに植物でできた小さな屋根が見えた。テントなどと言うよりはかなりしっかりしていて、小屋と言った感じだ。いつの間に作ったのだろうか。


「ありがとう。後はお願いしますね。」

「はい。お任せください。」


私は少しだけ休ませてもらうことにした。思えばここまで休まず動き続けていたので少し疲労感を感じる。


気づくとうつらうつらと船を漕ぎ出すアイカであった。


◇


「それでは始めますわよ」


メトシェラがそういった直後。

集めていた大木のうちの1本の周りに精霊たちが集まり、大木を浮かせた。


──エア・スラスト

──アクア・カッター

──エア・スプラッシュ


メトシェラがエルダーを媒介にして、様々な方向から資材に魔法を発動させる。木の枝を風魔法できれいに払っていき、さらに水魔法でスパッと根本を切り落とす。最後に風魔法で皮を剥がして、水滴を吹き飛ばし綺麗に乾かす。あっという間に丸太の完成だ。

他のゴーレム達がせっせと集めてくる大木を、精霊たちとメトシェラとエルダーが協力して次々と丸太にしていく。

何本か丸太ができたあたりで、ウォーターカッターで生み出した水が、池用のくぼみにみるみる溜まっていくのが確認できた。それに目をやりメトシェラが唱える。


──サモン・アクア・エレメンタル


木の精霊(ドライアド)は、自身も精霊なのに他の精霊を召喚できるのか。

メトシェラがなんでもないことのように水の精霊を呼び出した。ウォーターエレメンタルは中級の精霊だが、水属性であれば大半の魔法は使うことが可能だ。

担当は丸太の加工である。

屋根用の部分や床板など、必要な建材を手際よく切り出していく。ウロがあったり反っていたりと使える木材かの判断もウォーターエレメンタルが行っていた。使えない木材は池の脇に水で運び、積み上げていく。

完成した丸太はウッドゴーレムが2人1組になって運び、ログハウスを作る要領でテキパキと作業を進めている。


メトシェラの指示で、大木を集め終えたゴーレムも家の建築を手伝っている。特にロックゴーレムは、地面に柱や杭を打ち込むのに貢献している。アースゴーレムが太い柱を支え、それをロックゴーレムが持ち前の重厚な岩腕で打ち付けるといった感じだ。ウッドゴーレムは細部を魔法で微調整したりしながら、木材をどんどん組んでいく。


メトシェラの指揮のもと作業するゴーレムは、早送り映像を見ているのでは無いかと思ってしまうほどの作業スピードだった。これも彼女が段取り良くゴーレムを動かしているからだろう。自分でも次から次へと木を丸太にする作業をしながら、ゴーレムの動きに全く無駄が出ないようにしている。ゴーレムと精霊達が統率の取れた動きで、建物を作り上げていく姿は圧巻だ。


まさにメトシェラ無双だ。


◇


スヤスヤと眠るアイカの耳に、トントントンと建築現場ならではの小気味良い音が、心地よく響いていた。

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