拠点づくり その2 ~植物活力剤~
─ アイカ視点 ─
エルダーが胸を張って、後ろに反った瞬間──
ボキッ!!!
──エルダーの腰が悲鳴を上げた。
「腰がぁああああ!!!」
本人も悲鳴を上げていた。
「エルダーさん!!!」
エルダーが悲鳴を上げながら、後ろに倒れそうになる。
瞬間、周辺に居たゴーレム達が目にも留まらぬ早さで集まり、エルダーの幹を支えた。
「痛たたた……。」
「大丈夫ですか!? 無理しないでくださいね。」
ゴーレムにして働かせようとしていた私が言うのもなんですが。と付け加えるのも忘れない。
「わしも歳かのぉ。」
「少し待ってくださいね。」
──ミドル・ヒール
すると、あっという間に折れかかっていた幹が修復された。ゴーレムにもヒールは有効らしい。
集まっていたゴーレム達もほっとした様子で各々の作業に戻っていく。
「かたじけないのぉ。」
「あとこれですね。」
そう言って取り出したのは、『植物活力剤』と日本語で書いてあるラベルがついた小瓶だ。これはドラゴンズリングのアイテムで、その名前の通り、園芸などに用いるものである。
「どうぞ、かけ……いえ、飲んでみてください。」
本来なら根から吸わせるのだが、ゴーレムとなっているから飲めるだろう。
エルダーからすると非常に小さいその小瓶を慎重に摘むようにして持ち、一思いに煽った。
巨大な体のエルダーからしたら1本では足りないだろうと考え、私は大量に取り出し活力剤を念動で浮かせて準備していたのだが……
ゲーム内では植物の大きさ種類問わず効果が一定だったのが影響したのか、一本飲んだだけで早速効果が現れた。
「こ、これは何じゃ!?」
突如、エルダーの体が緑色の光りに包まれ見えなくなってしまった。
数秒後、その姿が顕になる。
ヨボヨボのお爺さん体型だったエルダーの幹や枝に活力が戻り、今ではボディービルダーのようなムキムキのがっしりした体型になっていた。
しかも、紫色の実が大量に実っている。その中には一つだけ金色に輝くヤシの実くらいのサイズの果実がみのっていた。
(あ……あれ?)
こんな効果あったっけ……と一瞬困惑するアイカであったが。
「アイカ殿!誠に助かったぞ!若返ったような気分じゃ!」
(いえ、実際に見るからに若返っているんですが……)
それにあの金色の実はなんだろうと考えていると、その実が独りでに動き──
──落ちた。
「んお、何じゃ!?」
「え!?」
直後、落下したその実が、ピカーンと直視できないほどの輝きを放ち──
──2つに割れた。
「……桃太郎!?」
「……!?」
アイカの言う通り、まさに桃太郎のように果実がパッカーンと割れ、中から赤ちゃん──
──ではなく、大人が現れた。しかも、その体躯は女性のそれであった。
それは春夏が見ていた漫画にも出てきていた、木の精霊の姿であった。
「……木の精霊様ですと!?」
エルダーが驚いた様子でのけぞっている。今回は体も若返っているのでボキッと行くことはない。
木の精霊は、大きさこそアイカと同じ位なのだが、パリ○レのモデルもびっくりな実に女性らしいメリハリのある体躯であった。アイカが一瞬だけ自分の胸に目をやっていると
呼び出された木の精霊が頭を垂れた。
彼女に巻き付くツタもまるで、自分の手足であるかのように自在に動かし、一緒にお辞儀をさせている。木の精霊流のお辞儀なのかも知れない。とても優雅なお辞儀だった。
「はじめまして、アイカ様。
私はこの森の守護者のメトシェラと申しますわ。」
「えええ!?」
状況の変化が、アイカの状況把握能力を上回った。
訳がわからない。
活力剤をあげただけのハズなのだが、なぜ木の精霊が? しかも守護者???
◇
メトシェラ曰く
彼女は元々はエルダーの木に宿った精霊達だったようだ、それが集まって、木の精霊の姿になったらしい。エルダーのところには森に住む動物や植物達の願いが集まり、それによって力が高まっていき、その見返りに森が豊かになるように邁進していたようだ。
そこにアイカの力が何らかの形で作用して、木の精霊として顕現したようだ。
「ええと、よろしくおねがいします。私はアイカと申します。」
簡単な自己紹介の後に
この森の守護者ということだったので……ズバリ聞いてみた。
「この森で盛大に伐採をしてしまっているけど良いのでしょうか?」
「ご安心ください。この森の恵みは誰のものでもありませんわ。
それに今の私の力があれば森の木々もすぐに再生できますので、もはや何も問題は無いでしょう。」
との事だった。
まぁでも、マスターは『貰えるものはなんでも貰う』と言っていたし、ありがたく活用させてもらおう。しかし何もなしという訳にもいかないので、エルダーに使おうと取り出していた活力剤をメトシェラに渡した。これを森の再生に活用するように一言添えて。元々エルダーに使うつもりだった訳だし何も問題はない。
っと、いまはマスターの環境を整えるのが先だ。
「メトシェラさん、じつはいま……」
「アイカ様、説明はなくても大丈夫です。すべて見ておりましたので。」
ということで、メトシェラは守護者なだけあって、私達が転生した直後から様子を見ていたらしく一部始終を把握していた。
もちろん、春夏の一糸もまとわぬ姿も。
メトシェラは春夏の姿を思い出したのか、ポッと頬を朱に染め
心が離れてしまった。
「メトシェラさん……?」
「ああ、春夏様……」
「もしもーし。」
「これはダメじゃのぉ」




