拠点づくり その1 ~ゴーレム~
「次は拠点づくりです。」
拠点と言ってもまずはマスターを休ませるための家が早急にほしい。
私は近くにあった大岩に両手を触れて、身の内で練り上げた魔力をゆっくりと岩に流していく。すると、私の身体の何十倍もある岩が脈動し始めた。
岩が私の魔力で満たされていくのを感じる。
そして私は唱えた。
──クリエイト・ロックゴーレム
突如、ゴゴゴゴと音を立てて、地面に埋まっていた岩が自ら動き地面から這い出てくる。出てきた岩の周りに付いていた土がボロボロと崩れ、岩の形状が顕になった。これは腕だ。
続いて身体も地面から顔を出した。最後に足が見える頃には高さ8mはゆうに超えていた。腕が異様に大きく、それとは対象的に足は短いが、かなり太く安定感がある。
これなら、周囲の木も難なく引っこ抜くことができそうだ。もちろんその大木を運ぶのも問題ないだろう。
「想定より大きくなってしまいましたが、成功ですね。」
満足そうにうんうんと頷く自らの創造主の前で、物言わぬ岩人形は少しだけ体制を低くし命令を待つ。
ロックゴーレムとしては、恐らく跪いているつもりなのだろうが、関節の可動域が狭いのでこれが精一杯のようだ。ちょっと微笑ましい。
ゴーレムをかわいいと思う女性にとっては、こういう点がツボなのだろう。
ゴーレムに限ったことではないが魔力で生み出したもの、例えば召喚もそうだが、魔力的な繋がりがあるおかげで種族などが全く違っても意思疎通を図ることが可能だ。とは言っても、相手の知能によっては命令をすべて理解できるわけではないが。
「それじゃ、まずは近くの大木を7本抜いてきてください。一本は特に大きいのを選んでくださいね。」
ロックゴーレムはルーンが刻まれた頭部を軽く動かし頷いた後にドスドスと地響きをたてながら森の奥の方へと重い巨体を大きく動かし歩き始めた。
◇
その様子を見送った後に、ロックゴーレムを更に6体、アースゴーレムを7体ほど作り、全員に周辺の木を集めてくるように指示した。
表情の無いゴーレム達ではあったが、その機敏な無駄の無い動きから全力で行動しているであろう事が容易に判断できた。将軍の指揮向上スキルの影響だろうか。
「皆はりきってますね。」
追加のゴーレムを作っている間に、最初の一体が大木を集め終えていた。特に大きいのは楠だろうか。
私はそれを7本共すべてをウッドゴーレムにした。そのうちの1体は楠から作ったので特に大きかった。
実験も兼ねているので大きさや種類など様々なゴーレムを作っていた。
ロックゴーレムは頑丈で力があるが動きの繊細さにかける。なので、細かい作業は難しいだろう。
その点、アースゴーレムは身体全体がレンガを組み合わせたようになっていた事もあって、ロックゴーレムよりも可動域が大きく繊細な動きができるので、緻密な作業に向いているだろう。
ウッドゴーレムは力が無い代わりに動きが柔軟でかつ素早い。
「ここまでは順調ですね。」
これで実験も行いつつ作業も進められそうだ。
ゴーレムの数が多い。無駄使いはしていないつもりだが少々張り切り過ぎな気もする。
魔力が回復しないどころか時間経過で減ってしまうので本来ならギリギリまで節約しなければならないのかも知れないが、今はマスターがゆっくり休める場所を手早く作ってしまいたいのだ。しかし時間がないからと言って手抜きをするつもりもない。なぜなら唯一無二の主の為なのだから。
それに少しだけ期待しているのだ。
「褒めてくれるかな。」
そう言ってアイカはいたずらっぽく笑った。
◇
ロック、アースゴーレムには引き続き木材の調達を
ウッドゴーレムには家を建築してもらう。
ウッドゴーレムの体躯はもとが植物で岩に比べると、素材そのものに柔軟性があるので、細かい作業ができる。ひときわ大きな1体は、樹高60m幹周20mもある大木から作ったのでかなりの大きさだ。こんなにも大きな大木をよく運んで来られたものだと思うが、どうやら後から作ったゴーレムも協力して、14体が総出で運んだようだ。ゴーレムの身長的にどうしても一部引きずってしまうのだろう、所々に折れた枝が落ちていた。
そして、その巨大な楠から作ったウッドゴーレムもかなりの大きさだった。
「大きいですね。」
大木から作った一際大きなウッドゴーレムは仮にエルダーと呼ぼう。マスターが名前を考えてくれるかも知れないので今は仮だ。彼は樹齢の影響なのか他のゴーレムに比べて知能が高いようだ。大きさと樹齢も相まってか、少しだけ動きが緩慢なのだが老木の風格のようなものを感じる。
彼をロック・アース・ウッドゴーレムすべてのリーダー役にした。
エルダーを司令塔に、ロックゴーレム7体、アースゴーレム7体、ウッドゴーレム6体がその指揮下に入って、それぞれ役割分担し作業に当たる。
他のウッドゴーレムには、さきのゴーレムを作った際にできたくぼみを利用し、池にできるように整地をお願いしてある。ちなみに、ウッドゴーレム達は下級の風魔法と土魔法が使えるようで、作業にうまく活用している。エルダーに限っては中級の水、風、土魔法が使えるようだ。
「エルダーさん、こんな感じで家を作りたいんです。」
地面に設計図を小枝でサラサラと描きながら、作りたい家の設計を伝え、エルダーが中心になって他のゴーレムを指示するようにお願いした。
妖精サイズのアイカが描いたものなのでA3用紙程度の大きさなのだが、エルダーの顔に当たる部位は地上50m程の高さにある。そんな高い位置からで見えるのか心配になるかも知れないが問題なく理解したようで
エルダーは、ほっほっほと笑うような動きで答える。
「(見たことのない建築様式じゃが、立派な家ですな。)
「ええ、ログハウスと言うものなんですよ。マスターが使うのでしっかり作ってくださいね。」
「(わしに任せてくだされ!この森一番の仕上りにしてみせましょうぞ!!)」
エルダーが胸を張って、後ろに反った体制でそう言った瞬間──
ボキッ!!!
──エルダーの腰が悲鳴を上げた。
「腰がぁああああ!!!」
本人も悲鳴を上げていた。




