指輪の能力
「それじゃー、つまりサポートの仕事してるの?」
『さぽおと?とは何ぞ?』
「電化製品などのですか?」
「そうそう。それ。」
春夏達は指輪の声の人が何なのか話をしていた。
声の主の役目はこの指輪の能力を主に伝えることと、能力発動を補助することだそうだ。要するに電化製品とかのサポート窓口のお姉さんのような立ち位置らしい。
残念ながら、その声は地の底から響くような男性の声なのだが。
「指輪の効果って何?」
『うむ。転職だ。』
「リクルート……」
「マスターそれは新卒採用では?」
指輪曰く、その場で瞬時に転職が行えるようだ。
ドラゴンズリング内では、数え切れないほど無数のジョブがあり、職業を変更するにはダー〇神殿のような専用の施設に行きお金を払って儀式を行わなければならなかった。必ずしも職業につく必要はないが、職業によるステータスボーナスが付与される上に装備可能なアイテムが圧倒的に増えるので、ほぼ全員が何らかの職業に着いている。
無職で〇〇を倒しました的なことをやりたい人以外は、職につくだろう。
そして、この指輪を使えばどこでも一瞬で職業の変更が可能なのだ。
「ところで、指輪さんの名前はなんていうの?」
『全能の指輪だ。』
「全能ってチートっぽいけど、能力的にはサラリーマンの味方な感じだよね。」
「こういうのをシュールと言うのでしょうか?」
「そうそう、シュールだよね。
……じゃなくて!
あなた自身の名前はないの?」
『初めて聞かれる質問であるな。我に名前はない。特に必要ない故な。』
「んー、それじゃ呼ぶ時めんどくさいから何か考えたげるよ。」
そう言って考えること10秒。
「……人食い指輪。」
「マスターそれはさすがに……。」
「んーダメだ!!! いいの思いつかないからアイカ何かヒントちょーだい!」
自分から言い出したにも関わらず、早々に匙を投げようとする春夏であった。
「そうですね、職業を司るものなのですから、それにちなんだものではいかがでしょうか。例えば英語でしたらoccupationやprofessionで……。」
「それだ!プロフェス!
指輪さんはこれからプロフェスね。」
アイカの言葉を途中で遮って、春夏が宣言した。
『ほう……中々に良い響きであるな。気に入ったぞ。』
どうやら一発で気に入ってくれたようだ。
かなり安直な気がするが本人が気に入っているので良しとしよう。
私達二人も自己紹介をして、転生してからこれまでの経緯などを説明する。
◇
「他には何か機能はあるの?」
『んむ。転職時に装備を自動で変更可能であるぞ。』
職業ごとに装備を登録可能で、指輪の能力で転職すると登録した装備に瞬時に着替えられるようだ。特に指定しなければ転職直前の装備が指輪に自動的に記録されるらしい。
「登録されていた装備が手元にないときはどうなるの?」
『そのときは何も装備されぬな。』
つまり、登録されている刀を誰かに貸すなどして、手元のアイテムボックスにないときは、装備呼び出し時には素手状態になるようだ。まぁ売り払ったはずのアイテムを装備できてしまったら、色々まずいだろう。もしそうなったら、プレイヤーは装備登録だけして装備そのものは売ってしまったりと、うまくやればお金を一切かけずに装備を揃えられてしまう。
ということでこの指輪を使えば、例えばフルプレートメイルを装備した剣士から、ローブを装備した魔法使いに変更し、再び剣士になった場合は自動的にフルプレートメイルが装備されると言ったような使い方ができる。某狩猟ゲームで言うところの装備マイセット機能で、双剣から弓に変更する時に防具も一緒に着替えられるような感じたろうか。
「これは便利かも。」
「ですね。」
敵の大軍と相対した時に、魔法使いで遠距離から広範囲殲滅魔法を放って雑魚を一掃し、残った強敵を剣士の高火力単体攻撃で仕留めたりできれば圧倒的に有利に立ち回れる。まぁできれば敵の軍勢なんて相手にしたくないけど。
そもそも私は魔法はとにかくへなちょこなので、遠距離から広範囲殲滅魔法なんてできないだろうし。でももしかしたら、魔法使いに転職したら魔法の能力が上がるかもしれない。
うーん、指輪の検証に他の魔法や武技、その他調合や錬金など、試したいことが益々増えてきた。どれから手を付けようかと考えていると。
『ふふ。それだけではないぞ。この指輪の真の力は覚醒状態にこそあるのだ。もっとも覚醒効果発動の後に我は役目を終えて転移してしまうのだがな。』
「おお、覚醒って何かかっこいい。」
「覚醒するとどんな力を得られるのですか?」
覚醒と聞くとまだ完治まで程遠い厨二病が発症してしまいそうになる。覚醒という単語はそれだけでも、春夏にとっては魅力的なものなのだ。
私とアイカは目を輝かせてプロフェスの言葉を待つ。
わくわく。
プロフェスはドヤ顔ならぬドヤ声で答えた。
『うむ、覚醒するとな──
──神の力を得られるのだ。』
「「胡散くさっ!!!」」




