幕間 ─アイカの嗜み─
初幕間です。
読み飛ばして頂いてもOKです。
おまけ。
時系列的にはアイカがグレートソードを折った後の話です。
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「まぁまぁ。大丈夫だから気にしないで。」
「ですがマスターの大切な剣を折ってしまいました!」
「良いって、まだまだ数え切れない程あるんだからさ」
「ですが……」
そう、伝説級の剣とかであれば話は変わってくるが、グレートソードくらいの武器なら数える気にもならない程持っている。それほどまでに鍛冶職の経験値稼ぎは大変なのだ。ちなみに、他の剣や槍も大量に量産している。
他のプレイヤーだったら、アイテムボックスの上限を気にして破格で投げ売りしているので大した数は持っていないはずだが、私は課金してアイテムボックスの上限を引き上げていたから、全く気にしないで放り込んでいた。ちなみに、アイカに頼んで一生かかっても上限まで行かないであろうと思える程度まで、収納容量を増やしていたのだ。お金はあったし。
ドラゴンズリング運営側も使われない容量に金を落としてくれるのは助かるようで、収納の上限は何度でも増やすことができていた。
「ところで、アイカのアイテムボックスってどうなってるの?」
「え?あ、使えますよ? 試しにこのグレートソードを収納するのでマスターが取り出してみてください。」
「……え? あ、ホントだ。使える。」
衝撃。
盲点だった。アイテムボックスまで共有できるようだ。
考えてみれば、それもそうか、なにせアイカは私のアイテムを取り出せるのだ。逆のことができるのは当然かも知れない。
「アイカってどんなもの入れてるの?」
アイカのアカウントでもボックス拡張は行っているので、大量のアイテムが入っているようだ。アイカの場合は私と違って、武器の類はそれほど多くは無いが、魔導書やポーション、家具、何に使うかも分からないような雑貨まで、多種多様なものが入っているようだ。
「例えばこれとかですね。」
「ん」
そう言って、アイカが取り出してくれたのは、マトリョーシカ人形のようなアイテムだ。どこかゆるキャラっぽい。
「これは何?」
「それはですね。上下に引っ張ると中が開きますので……。」
「なんだまんまマトリョーシカ人形じゃ……。」
と言って開けようとすると。
「待ってください!!!」
「きゃっ!!!」
アイカの突然の大声に驚き落としてしまった。
直後、開きかけの人形の隙間から、黒く禍々しい何かが漏れ出している。
その何かは漏れ出した側から霧散しているが、あれは危険だと本能が叫んでおり、頬を冷や汗が伝う。
「マスター下がってください!」
アイカがとっさに私の前まで飛んできて、念動で拾い上げ開きかけていたのをキュッと閉めた。
すると漏れ出していた禍々しい何かの流出は止まった。
「ふう。一安心です。」
「えっと、何だったの??」
私は冷や汗を拭いつつ尋ねた。
「あれには悪魔が封じられているんです。」
「えええ! 悪魔!?」
「ああ、仮にあれの蓋が開いてもすぐに襲われることは有りませんので大丈夫です。こちらから何もしなければ、代価を渡して願いを叶えてもらって終わりですよ。」
「いやいや、そういうことじゃなくて、なんでそんなもの持ってるの!?」
「じつは……」
アイカ曰く、私のストーカー対策とのことだった。
こちらの世界に来る少し前にゲーム内でストーカーに付きまとわれる事があったのだ。
春夏は動画配信なども行っていた事もあって一定数のファンが居たのだが、彼はそのうちの一人だった。大多数のファンは、ボス攻略配信時に野次馬として見に来る程度で、特に何もして来ることは無いのだが、彼は違った。
街に帰還した時の出現ポイントや、ダンジョンの入り口などで待っていて偶然を装って話しかけてきたりと、通報できないギリギリの所でストーキング行為をしてきた。その時は、サクッとチャットをブロックして、キャラも非表示設定にしたので、私のゲーム画面では存在しない状態になっていたから特に何も問題は無かったが、悪質な場合はサブキャラを作ってまで付きまとってくる場合がある。
その対策をアイカにお願いしていたのだった。
「でもなんでストーカー対策が悪魔なの?」
「それはMPKですね。」
「ああ、なるほど。」
MPK──モンスターを使ったプレイヤー殺害行為──でストーカーを殺害することが目的なようだ。ゲーム内では本来、町中ではPK──プレイヤー殺害──ができないが、モンスターであれば殺すことができる。そこを突いて町中でモンスターを呼出し対象の相手を殺害する訳だ。
特に、作りたてのサブキャラ程度では悪魔相手では瞬殺されてしまうだろう。
納得。
◇
「んーと、これはホムンクルスの素。あとこれは魔物用のエサ……うげぇ虫だ。あ!ロッキングチェアだ!座ってみたかったんだよね! ……。」
と言った具合に、アイカのアイテムボックスからは、次から次へと様々なものが出てくる。
「マトリョーシカは良いにしても他のは? なんでこんなに色んなものが入っているの?」
「メイドの嗜みです。」
「……?」
アイカの説明によると、様々な可能性を考慮して、いざという時にスッと必要なものを出せるようにしていたようだ。
ちなみにこれは、実際は春夏の外出時など色々と持て余して居たときに、春夏の行動パターンをシミュレートして、そのときに必要になるであろうアイテムを片っ端から集めたものが大半を占めるのであった。
要するにこれは、アレだ。
「……四次元ポケット。」




