指輪
私は気を取り直して宝箱に手をかけ、一思いに開け放った。
パッカーン!
「「おおおおお!!!」」
中を開くと、美しくきめ細やかな装飾が施された豪華な台座に、まばゆいほどの光を放つ指輪が鎮座していた。
──ドラゴンの指輪だ。
ドラゴンズリングというゲームにおいてドラゴンをモチーフにした指輪は世界に10個だけしか存在しないと言われており、それらすべてが神話級アイテムとされている。
この指輪が、ドラゴンズリングというゲーム名の由来であり、プレイヤーの共通の目標だったりもする。現在確認されているものはその中でも2つだけで、1つがレベル上限を突破して成長できる指輪、もう1つはすべてのダメージを大幅に軽減する指輪だ。なんでも、10の指輪は非常に強力かつ特殊で、役目を終えると次の主を求めて世界のどこかに転移してしまうらしい。その転移条件や入手方法などはアイカの情報収集能力でも、ほとんど分からなかった。というか、転移するという情報はアイカの努力の賜物なのだが。
「ア、アイカ!解析お願い!」
アイカに解析をお願いしようと、宝箱に鎮座する存在感たっぷりの指輪を私は手にとった。
直後、眩しいほど放っていた光が収束し、指輪に光が吸い込まれていく。すると、指輪の美しい造形が顕になっていく。
一頭の竜が指に巻き付いた形で、その目には赤く美しい宝石があしらわれ、その口にはオパールのような虹色の宝石が咥えられている。竜の爪から鱗の一枚一枚に至るまでかなり細部まで作り込まれている。まるですぐにでも動き出しそうだ。
名称:全能の指輪 神話級
効果:〇※△◽︎
神話級──やはりドラゴンズリングに存在すると言われている指輪の1つで間違い無さそうだ。
しかし鑑定妨害がかかっているのか、名前とレア度しか分からなかった。鑑定妨害は私の魔剣にも備わっているが、高位のアイテムになると度々鑑定妨害が着いていることがあった。
それにしても、まさかあのレアボスから竜の指輪がドロップするとは思わなかった。
そんな情報は聞いたことがないが、レアボスとは言っても攻略サイトにドロップアイテムの情報は載っていたし誰も倒したことがない訳ではないはず。もしかしたらドロップ条件があるのかもしれない。そんな考察をしていたのだが。
『お主らか。我を覗きみようとする者は。』
「「ぎゃぁああああ!!!」」
脳内音声再来。
今回の被害者は2名。
アイカは重症:失神と落下による物理ダメージ。
私は軽傷:転倒による後頭部打撲。
私は頭部の痛みにぐぬぬーと悶えていた。
しばらくして、口をパクパクさせて失神しているアイカに気づき、身体を揺する。
「ア、アイカ! しっかりして!!」
揺すると言っても、実際は両手で小さな妖精の身体を握って、力いっぱいシェイクするような形になってしまっているのだが。
「あ、う……マスター……綺麗なお花畑が……」
「アイカ!!!帰ってきなさい!!!!!」
「ん……っは!
私は一体……」
アイカが目覚めた。
「びっくりして気絶してたんだよ。」
「あ!そうでした!宝箱が開いてそれで……
……指輪は……!?」
『我は此処ぞ。』
脳内音声の追い打ち。
「「ぎゃぁあああああああ!!!」」
◇
『お主ら少々驚き過ぎであるな。
ふん、まあ良い。そこの小娘、我に指を通すが良い。』
唐突だ。
指輪に唐突に命令された。
(なんか生意気な気がするけど、もしかしてこの指輪って……)
神話級アイテムは、先に述べた指輪2個を含めても、23個しか存在が確認されておらず、そのどれもがゲームバランスを壊すほどの能力を持っているとされる貴重なアイテムだ。
そのうちのいくつかは意思を持っているらしい。
情報で聞いていたときは、もっと機械的なものだと思っていたけど、どこかの偉い王様?みたいな雰囲気を感じた。
ちょっと怖い。
『おい、この我をいつまで待たせる気なのだ。早く指を通せ。』
「ひっ……」
指輪にあしらわれた宝石の目から早くしろという鋭い視線を感じた私は、恐る恐るといった様子で指輪に指先をかけた。
「マスター気をつけてくださいね」
「指とられたりしないよね……」
ゾッとするようなことを呟きながらも指輪に左手の人差し指を通した。特に何の問題もなくあっさりと装備することができた。良かった、まだ指は無事だ。不思議なことにサイズもピッタリだ。
『ほう。我を装備しても何ともないとは、やはり貴様が我の主であるか。』
「え……もし人違いだったらどうなってたの!?」
『うむ、その場合はお主が食われておったな。まあ、無事だったのだ良いではないか。』
「全然よくありません!マスターになにかあったらどうするのですか!?」
アイカは少々怒っているようだ。
「……人食い指輪?」
少しずれたことを考えている春夏は今日も平常運転だった。




