家庭教師ヒモノラ女史
「私は貴族礼法の家庭教師をすることになった、ヒモノラ・バラカット男爵夫人です。
短時間でお教えすることになるので、少々厳しくしますよ」
さっそくやって来たのは眉間に皺を刻んでいる痩せた中年の女性だった。
「まず座り方ですが椅子に深く座り過ぎです。」
そう言うとチェリーの背中を短い竹の棒でピシッと叩いた。
結構痛い。
「あのう、叩かないで口で言って下さい」
チェリーが抗議するとまた背中にピシャリ。
「背中をもっと真っ直ぐに」
真っ直ぐにすると今度は足に竹の棒が飛んで来たのでそれを手で掴むとヒモノラ女史の手首を捻って床に倒した。
「な……何をするのですか!教師に暴力など」
「その前に生徒に暴力を振らないで下さい。
今までのことは口で説明すれば分かることです。
なんでもかんでも叩いていては相手が委縮して、覚えられるものも覚えられなくなります。
座ってください」
チェリーはヒモノラ女史を椅子に座らせると自分は立って目の高さを合わせた。
「まずできなかったことを叱るのではなくて、できているところを褒めるようにしてください。
教え導くとはそういうことではないのでしょうか?
そして言葉も大事ですが、まず先生が見本を見せて真似させるようにしてください。
学ぶとは真似ぶ、つまり真似することから始まるのです。
私も先生から学びたいので学びやすい方法で教えて貰いたいから言うのです。
分かって頂けましたでしょうか?」
「は……はい」
それから貴族礼法の勉強はスムーズに行った。
チェリーが提案した方法で、あっという間に貴族礼法はクリアされたのだ。
「こ……困りました。
予定では一週間で仕上げようと思ったのですが、今日だけですべて終わってしまいました。
一週間分の給料を貰う予定だったので……」




