ましらのごとく
それ以来チェリーを中心として領民の子どもたちが怪しげな遊びをする姿が目撃されるようになった。
走り飛び回ることや木登り崖上りなどを遊びに取り入れ、相撲や取っ組み合い、果ては殴り合いなども遊びとしてするようになったのである。
領地は農業が中心だが、悩まされるのが獣害である。
特に手を焼くのが近くの山にいる猿の集団で、どういう訳かこの子供たちと猿軍団が縄張り争いの仁義なき戦いに突入したのである。
初めのうちは顔を引っ掻かれ服はボロロになって子供たちは連敗していたが、やがて得物を持つようになった子供たちは返り血を浴びながら凱旋して来るようになった。
これも農作物を守る為の戦いなので親たちは子どもたちを叱りはしない。
そしてとうとう猿の群れを山から追い出したのはチェリーが僅か五歳のときだったという。
そのころチェリーの子分たちは獣のように素早く野山を駈け廻る奇怪な集団と化していたのだった。
そして投石器や手作りの弓で兎や鳥を狩るようになり、鹿や猪なども棒切れや鎌で追い回し集団で仕留めるようになった。
この頃チェリーは長い髪をバンダナで隠し、服も男の子のようにしてすっかりガキ大将になっていた。
そして思春期未満の子どもたちは年上だろうと構わず子分にして顎で使った。
なにしろプラス三十五年の人生経験があるのと庶子ながらも領主様の子どもという権力を盾にしていたので、みんなは従ったのである。
また実際体の大きな子でも体術の訓練の時は簡単に投げ飛ばしていたのは、前世の武芸百般の知識によるものなのだ。
たとえば合気道では手首の弱い所を掴んで軽くひねれば大きな子でも簡単に転がしてしまう。
前世ではただの知識に過ぎなかったが、現世ではすべて実戦化を通して身につけてしまったのである。
チェリーは子どもたちの才能を見て、どんな武術に向いているか見抜くのが得意だった。
ある者は拳闘家の才能があるとか、ある者は柔道にむいているとか、同じように剣術、弓、槍、投石など向いている者にはその技術を教えた。
前世に寝食を忘れて身につけた膨大な知識があるので、その伝授は貴重だった。




