↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/30

王宮の地方領政監査室

ここはマンドリン王国の王宮内にある、地方領政監査室だ。


そこには定期的に各地方領からの報告が集まる。


それは下は騎士爵領から上は公爵領まで変わらず提出義務がある。


内容は領内産業の収入支出または農産物や水産物の取れ高などの他に、特筆すべき現象や事件の報告がある。


その中にダンジョン都市アンダンテ公爵領フルール村の『リバーメイデン事件』と言うのが王宮内に波紋を呼んだ。


この事件が注目されたのは二点に関してである。


一点目はこの地域にダイアウルフが九頭も出現し村の子どもを襲ったという事実である。


フルール村は公爵領の中ではかなりの田舎だが、これほどの魔獣が出るほど辺境に近くはない。


とすれば分からぬところにダンジョンが出現して、そこから溢れて来たのではないかという疑念も出て来る。


これは調査対象になりうる事件と言える。


二点目はこの事件の題名にも由来する『リバーメイデン』の存在だ。


魔獣を討伐して村の子どもの命を結果的に救ったとはいえ、その魔獣の死骸の状態を読み解くに明らかに人外の域だということ。


つまりあまりにも強力で且つ残虐な殺害方法だという点。


この攻撃が人間に向けられた場合の危険性を危惧するということだ。


魔獣を殺したのは人間を助ける為ではなく、たまたま魔獣同士の勢力争いかもしれないという推論が成り立つということだ。


また人間と同じ姿形をしていた点も警戒を要する。


見かけが非力な美少女の形をしていたという点で、人間に紛れて人間世界に潜入する可能性もあることから、最重要人型モンスターに指定する必要もあるということだ。


それが人間ではないという確証はないが、少なくてもかなり長時間水の中にいて呼吸できたらしいという点、水から陸に上がった時に体が濡れていなかった点、人間にしては動きが速く獣よりも素早いし且つ強力な膂力を持っていること。


いかなる武器も用いず素手がそのまま凶器になっている点などなどである。


そこで監査室からの依頼で調査隊の先頭に立ったのが王の第一側室の子のアレックス第三王子である。


このアレックス王子は頭脳派というよりも武闘派で調査隊長としてはいささか不適切な点もある。


だがこういう人選は得てして政治的な力学で決められることが多いものなので特に珍しいことではない。


「そのリバーメイデンという者が雌ドラゴンが人化したものなら、俺にもドラゴンスレイヤーの称号が与えられるチャンスになるかもしれない」


などと言っているそうで、調査の意味を理解しているのかどうか極めて怪しい。


「最低それは残虐な殺戮を好む魔妖精の類かもしれないが、いずれにしても調教してペットにするか、駆除してしまうかの二択だろう」


とはアレックス王子の言である。


調査隊の構成員は隊長のアレックス第三王子に選別を任されているが、蓋をあけてみればそれは調査隊というよりも軍隊そのものだった。


王宮を出発する調査隊は百人程度の規模であるが、実はそこにある仕組みがあるのだ。


王都から公爵領のフルール村に到るまでの間、様々な貴族の領地があり、そこから割り当ての人員と食料を調達して行くという手があるのだ。


王子は一応王命を持っているのでそれに協力しないことには反逆罪になる。


様々な派閥があっても王命の前では協力せざるを得ない。


そして出した人員分の食糧は自分たち持ちになるのだ。


王子が率いる調査隊の初期メンバーはいずれも将軍や隊長級の猛者ばかりで、後から編入される者たちはその指令下に就くことになる。


そしてもちろん公爵領からも多くの人員が出されるだけでなく、自領内のことなので、歓迎接待や案内などの役を負わされてしまうのだ。


これが学術調査団であればこんなに大袈裟にはならないのだが、あくまでも武闘派による討伐を目的とした調査隊?なのでこうなるのである。


侯爵が事前に懸念していたことはこういう事態を想定してのことなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。