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18/30

狼の月一日

朝目覚めた時外は晴れやかで鳥が鳴いていた。


いよいよ今日からだ。


私はスキルオーブを出すと


「わが身と一つになれ!」


と唱え、胸に押し付けた。


するとオーブは光り私の体の中に入って行った。


胸の中が光る。


そして光は全身に。


ああ、もう引き返せない。


すると空気が重くなった。


空気がドロッとした液体のようになって全身に絡んで来る。


まるでゼリーの中を動くようにスローモーションになる。


私は作戦通りにまず教会の周りを走ることにした。


まず足周りの負荷を取らなければならないからだ。


そうすることによって教会の掃除とかがやりやすくなる。


体が熱くなると自然と体表の気温が下がって自動的に涼しくしてくれるから汗はあまりかかないが、水分補給が頻繁になる。


排尿など最初はどきっとしたが、今は気にせず垂れ流しになる。


いくら出しても下着が濡れないので安心だ。


生理も同じ扱いになるらしい。


脚注に書いてあった。


そして今使ってる筋肉が分裂し始めているらしい。


筋肉の中をミミズが這いまわるような感覚が。


特に足の筋肉が激しい。


背中や胸や腹筋や腕も多少疼く。


そしていくらか足回りが動くようになったので教会の掃除をすることになった。


シスターのシャルロッテさんには今日から一か月間掃除奉仕をすると告げている。


窓は開け放ち埃ははたき出す。


床は箒で履いてからモップで水拭きをする。


そして窓ガラスを拭き、天使像などを水拭きする。


教会の外回りの掃除をすると、そこで朝食の準備になる。


とにかく私は体を動かした。


ミッチェル氏が言うように祈る気持ちで、できることは何でも買って出た。


そうしなければならない理由があるから懸命に動いた。


食事の給仕も買って出た。


とにかく動き回っているうちに体が軽くなって行く。


だが首回りとか腰指先の筋肉に負荷が残っている。


一番多いのは顔の筋肉だ。


だから子どもたち相手に百面相をして笑わせたりする。


だいぶ体が軽くなったので試しに二十キロの体重の子を持ち上げてみた。


できた。


一日の終わりには三十キロ持てそうだ。


食後教会の周りの草を刈った。


「チェリーさん、そんなに働いては体を壊します。まだ完全に治っていないのに」


シャルロッテさんが心配して声をかけて来る。


「いえいえ大丈夫なんですよ。

体を動かした方が治りも良いような感じなので」


そうは言ったものの確かに負荷がかかって骨を折ったという話も聞く。


骨折のところが完全にもし完治してなかったらとも思う。


しかしそれで動くのを躊躇ったらもっとひどいことになるのだ。


教会の裏には川が流れている。


山から流れて来た支流の一つで、やがて他の川と合流し王都に流れて行き、更に合流して海に流れるという。


亜空間鎧装は水の中でも呼吸できるというので、水の中なら自由に運動できるのではないか?


課題の負荷の他に水中であることの負荷が加わるから早くにクリアできそうな気もする。


「少し街を歩いてブラブラして来ます」


シャルロッテさんにはそう言ってこっそり私は川に入った。


裾の広がったスカートを履いていたが、鎧装は着衣の部分も守っているらしく、着ているものが濡れる様子はない。


水中では泳がなくても普通に歩ける。


もちろん泳ぐこともできる。


水の抵抗はあることはあるが、人目に触れず楽に移動できるから便利だ。


侯爵領の街には城壁に囲まれているが、中を流れる川にも城壁の部分に鉄柵が下りている。


川底には一メートル近く柵が食い込んでいて、自由に出入りはできない。


そこで引き返して教会に戻った。


体は全然濡れていないから、川に入ったことは誰にもばれていない。


すると全身の筋肉のチェックを行ったところ、殆どと言って良いくらい微細な筋肉も負荷が取れているのに気づいた。


普段の動きではなかなか負荷がとれない筋肉とかあるのだが、それがかなり解決しているのだ。


つまり水中での動きが良かったらしい。


水の抵抗に逆らって動くことは、陸上での動きにはない効果があるのかもしれない。


だから明日からランニング→掃除→手伝い→水中移動という風にするとクリアしやすくなるのではないか?


とすればどうせならあの鉄柵を越えて下流を行ける所まで行ってみたい気がするが、教会に戻らなければいけないから、王都までになると無理だ。


あの鉄柵は少し砂利を掘ってみたらかなり下の方が錆びてボロボロだった。


明日はなんとかしよう。


寝る前に体重三十キロの子どもを持ち上げて遊んだやった。


相手は驚いていた。


「チェリーさん、体が小さいのにちからがあるね。

シスターでも私は持ちあがらないよ」


それを聞きながら満足した。


なんとか一日目は終わった。

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