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誤動作の特殊ケース

十階層のボス部屋の中はシーンとしていた。


きっと階層主の足音なのだろう。


ノシノシと近づく音を聞きながら俺は意識を失った。




俺は三歳のチェリーに戻っていた。


TS転生だぁぁぁ。


今度こそ半生かけて溜め込んだ武芸百般の技を実践し身をもって体験するんだぁぁぁと心の中で叫んでいた自分。


俺の知識はもの凄いスピードで体に染みついて行った。


このまま成長すれば無敵だぁぁぁぁ。


けれど俺の体の倍以上もある奴が立ち塞がる。


パンチ、蹴り、関節技、何をやっても通じない。


確実にヒットして、間違いなく技が決まってるのに、全く通じない。


なぜだぁぁぁぁぁ。


俺が何をしたぁぁぁ?


ただ只管道を求め精進しただけなのに、こんな仕打ちはないだろうっ!


馬鹿野郎!


馬鹿野郎!


何もかも馬鹿野郎!


もう死んじまえ!というか自分はもう死んでしまったのか?





その途端夢は消えてまた意識を失う。


意識を失っているのにさらに意識を失うって意味が分からないが……。







ダンジョン『地獄門』の背後の部分には時々ゴミが噴き出る。


そこは大きなゴミ箱になっていて、ダンジョンに吸収されたものの中から宝箱に入れて探索者用の景品にすることもできないものを排出するのだ。


『地獄門』は最難関ダンジョンと謳われるだけあって、宝物の質も良い。


だからその選に漏れたものが必ずしも全くの無価値だという訳はない。


たとえば探索者の金属カード。


これをギルドに持って行けば謝礼が貰える。


ボロボロの鎧の一部とか籠手などや折れた短剣なども持って行く場所が間違ってなければ多少の金になる。


そこを孤児院の子どもたちがゴミ漁りに来るのだ。


ところがそこに素っ裸の女の人が落ちていたのだ。


全身傷だらけで血も滲んでいるが死んではいない。


この場所に死体が出ることはない。


魂の抜けた死体はダンジョンに吸収されるからだ。


だが生きた人間がダンジョンに吸収されることはありえない。


ある特殊な例外を除いては。


それはボス部屋に新たな挑戦者が現れるという時にその前の戦いの残存物が残っていた時は吸収するのだが。


ボスが残っている場合はボスが挑戦者を全員殺したと判断する。


だがボスが挑戦者を殺していない場合は?


普通そんなことはありえない。







ノシノシと足音を立ててミノタウロスは倒れている探索者に近づいた。


ひょいと足を摘まみ逆さ吊りにして顔の前まで持って来たがぐったりして動かない。


しかも闘争する為の武器も携行していない。


首を傾げたミノタウロスはポイと床に捨てた。


戦う必要もないし、死んでいると判断したのだろう。


残存物整理の為やがてそれはダンジョンの床に吸収される。


だが吸収したものの、魂を持っている肉体をダンジョンは嫌う。


それは再利用に適さないと裏のゴミ捨て場に排出される…………






チェリーは全身の体の痛みで目が覚める。


ここはどこだ?


小さな部屋にあるベッドの上で全身包帯だらけの状態でチェリーは目を覚ました。


「あっ、気づいた。」


「シスターを呼べよ」


「女の人がおきたよぉぉ」


子供の騒ぐ声、そして誰かが呼ばれて近づいて来る。


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